く~にゃん雑記帳

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<奈良県立美術館> 企画展「姿の美、衣装の美…肉筆浮世絵」

2019年02月01日 | 美術

【貴重な一点ものの美人画を中心に87点】

 奈良県立美術館で企画展「姿の美、衣装の美…肉筆浮世絵」が始まった。浮世絵といえば版画で量産されたものというイメージが強い。同館でも2015年に浮世絵版画展を開いたが、今回は絵師が筆で描いた一点ものばかりを集めた。展示作品は浮世絵の代表的な主題でもある美人画を中心に87点。会期は3月17日までで、前後期で一部展示替えを行う。(左から菱川師房『見返り美人図』、歌川国長『椿と花魁図』、山口素絢『太夫雪見図』)

   

 展示会場の入り口正面に、導入部として江戸時代初期・中期・後期に描かれた美人画3点が並ぶ。菱川師房(もろふさ)の『見返り美人図』と川又常正の『遊君禿図(かぶろず)』と歌川国長の『椿と花魁図』。菱川師房は浮世絵草創期を代表する絵師だった菱川師宣(もろのぶ)の長男に当たる。川又常正は肉筆の美人画を多く描いた川又常行の門人。歌川国長は初代歌川豊国の高弟で、遊女の立ち姿を描いたこの作品では豪華な衣装の文様などが精緻に描かれている。細面で顎が反り目尻の上がった顔立ちは江戸時代後期の美人画に共通する特徴の一つ。(下の写真は㊧宮川長春『花下美人少女図』、㊨山崎竜女『蚊帳美人図』)

 

 導入部に続いて、浮世絵の先駆的作品として室町時代後期から始まる名所風俗図や遊楽図などの屏風絵、江戸前期の〝寛文美人〟と呼ばれる美人画などが並ぶ。寛文美人は背景に何も描かず女性の立ち姿や舞踊の姿のみを描いたもので、寛文年間(1661~73)に流行した。この後、浮世絵の黎明期から成熟期、爛熟期と時代を追って美人画の変遷を辿る。主な展示作品に宮川長春の『花下美人少女図』、鳥居清忠の『蛍美人図』、歌川広重の『八朔花魁図』、山口素絢の『太夫雪見図』『妓婦図』など。

 浮世絵師たちは美人画のほか歌舞伎役者や故事・伝説など様々な題材を取り上げた。展示作品の中でひときわ目を引くのが2代鳥居清信の『矢の根五郎絵馬』(西大寺蔵)。「矢の根」は歌舞伎の荒事の代表的な演目で、父の仇討ちのため矢の根(矢じり)を研ぐ曽我五郎の姿が画面いっぱいに描かれている。西大寺は1754年に江戸で愛染明王像の出開帳を行った。中村座と役者の市川海老蔵はこれをヒントに曽我五郎を愛染明王の分身とする演出を行ったところ大当たり。そのお礼にこの大きな絵馬(高さ191cm、幅124cm)を西大寺に奉納したという。他に西川祐信の『柿本人麻呂像』、鳥山石燕の『松尾芭蕉像』、菱川友宣の『楠公父子訣別図』なども展示中。

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