【名前の由来は不詳、花穂を狐の尻尾に見立て?】
日当たりのいい草地や道端、土手などごく身近な場所で普通に見られる野草。キツネノマゴ科キツネノマゴ属の1年草で、日本のほか朝鮮半島、中国南部、インドシナ半島、インドなどに分布する。学名は「Justicia procumbens(ジャスティシア・プロクムベンス)」。属名は18世紀のスコットランドの園芸家ジェームス・ジャスティス氏(1698~1763)の名前に因み、種小名は「倒伏した」を意味する。
草丈は10~40cmで、種小名が示すように茎の基部が地を這い節々から枝を伸ばす。花期は8~10月頃。2~5cmほどの短い穂状花序に小さな唇形花をまばらに付ける。花冠の上唇は白く2つに裂け、下唇は薄紅色で3つに裂け、中央奥に白い斑紋が入る。この模様は虫を誘うための〝蜜標〟。それを目当てにハチやシジミチョウなどが蜜を求めて集まってくる。
名前の由来には諸説。花穂を狐の尻尾に見立て、小花をまとわりつく孫にたとえた▽花が子狐の顔に似ているから▽キツネノママコからの転訛――など。転訛説はママコナ(ゴマノハグサ科)に似て小さいからキツネノママコになり、これがキツネノマゴに転じたというもの。別名「カグラソウ(神楽草)」。これは花穂の姿形を神楽鈴に見立てて。漢方では全草を乾燥したものを「爵牀(しゃくじょう)」と呼び解熱や風邪薬として用いる。若葉は茹でて食用にも。変種に沖縄地方に自生する「キツネノヒマゴ(狐の曾孫)」や「キツネノメマゴ(狐の女孫)」がある。