【ウツギより一回り小形なことから〝姫〟に】
アジサイ科(旧分類ユキノシタ科)ウツギ属の落葉低木。本州の関東以西から四国、九州にかけて分布する日本固有種で、山地や谷沿いの岩場など日当たりのいい所に自生する。「ウノハナ(卯の花)」と呼ばれることが多いウツギの仲間で、姫空木の名前はウツギより背丈や葉、花などが一回り小さいことによる。学名は「ドイツィア・グラキリス」。属名のドイツィアは18世紀のオランダの植物学者の名前に因み、種小名グラキリスは「細長い」「繊細な」を意味する。
樹高はウツギが2~3mになるのに対しヒメウツギは1~1.5m程度でよく分枝する。花期は5~6月。円錐花序を伸ばし、純白の5弁の小花(径1~1.5cm)をやや下向きにいっぱい付ける。ウツギは若い枝や葉、花弁などに星形の毛(星状毛)が密に生え触るとざらつくが、ヒメウツギはウツギに比べ毛が少ないのも特徴の一つ。ウツギより小形で扱いやすいため庭植えや生垣、鉢植えなどにされる。このヒメウツギがウノハナとして流通することも多いようだ。同属の仲間には他にコウツギ、マルバウツギ、アオコウツギ(下の写真)などがある。
ウツギには幹や枝の髄が空洞になっていることから「空木」の漢字が当てられるが、材が堅く古くから木釘として用いられてきたことから「打つ木」とする説もある。「卯の花」は旧暦の卯月に咲くことから。卯の花は垣根などとして古くから親しまれ、万葉集でもこの花を詠んだ歌が20首以上に上る。その多くがホトトギスと組み合わせて詠まれた。唱歌『夏は来ぬ』にも最初に卯の花とホトトギスが登場する。正岡子規は結核で喀血する自身と、鳴いて血を吐くというホトトギスを重ね合わせホトトギスを表す「子規」を雅号に選んだ。「卯の花の散るまで鳴くか子規(ホトトギス)」(正岡子規)