く~にゃん雑記帳

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<メハジキ(目弾き)> 子どもが茎をまぶたに挟んで弾き飛ばす遊びから

2016年07月16日 | 花の四季

【生薬名「益母草」、古くから産前産後などの婦人薬に】

 本州以南の野原や道端などに生えるシソ科の越年草。朝鮮半島や中国、東南アジアなどにも広く分布する。茎はシソ科特有の四角形で直立し、高さは1~2mになる。メハジキは根生葉と茎葉の形が全く異なるのが大きな特徴。根生葉は切れ込みが深く手を広げたような掌状葉で、花期には枯れる。茎葉は中ほどでは細く3深裂するが、上部では切れ込みが少なく細長い披針形や直線状になる。花期は7~9月。茎の上部に淡紅色の唇形花を段状に数個ずつ輪生する。

 「メハジキ」とは随分変わった名前だが、これは子どもたちの「目弾き遊び」に由来するといわれる。茎を短く切ってまぶたに挟み、まばたきした勢いで遠くまで飛ばす。「まばたき」「めっぱり」「めつっぱい」などと呼ぶ地方もある。メハジキは生薬名から「益母草(やくもそう)」とも呼ばれる。文字通り「母の益になる薬草」を意味し、全草を乾燥したものを煎じて服用すると、産後の止血や月経不順、めまいなどの改善に効果があるという。中国の『本草綱目』(1590年)の記述「久しく服すれば子をもうけしめる」から〝子宝の薬〟としても珍重されたそうだ。また種子は「茺尉子(じゅういし)」と呼ばれ、利尿や解熱作用があるという。

 万葉歌に登場する「土針(つちはり)」はメハジキが有力視されている。その歌は「わが屋前(やど)に生(お)ふる土針心ゆも 思わぬ人の衣(きぬ)に摺(す)らゆな」(巻7-1338、作者未詳)。ただ牧野富太郎博士は『植物記』の中で「万葉歌のツチハリ」について論じているが、メハジキに関する記述はない。牧野博士は当時通説だったツクバネソウ説やレンゲソウ説に疑問を呈しながらも「万葉のツチハリとは何んであるのか、実は私もその実物の模索には迷っている」と記している。

 メハジキには変種に花が大きく、中国~シベリアの寒冷地に分布する「ホソバ(細葉)メハジキ」がある。また近縁種に帰化植物でヨーロッパ原産の「モミジバキセワタ(紅葉葉着せ綿)」があり、メハジキによく似ていることから「ヨウシュ(洋種)メハジキ」や「セイヨウ(西洋)メハジキ」と呼ばれている。この植物はヨーロッパで「マザーワート(母の草)」とも呼ばれ、やはり古くから婦人病の薬草として用いられてきたそうだ。「目はじきの瞼ふさげば母がある」(長谷川かな女)

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