【古い葉の先に若芽!「かんざしばな」「ちゃせんばな」の地方名も】
ユリ科の常緑多年草。全国各地の山地の少し湿った樹陰や渓流沿いに生える。早春、地面に放射状に広がった葉の中央から花茎を伸ばし、紅紫色の10~15輪の花を付ける。変種に九州地方に多いツクシショウジョウバカマや白花のシロバナショウジョウバカマがある。
紅紫の花を中国の伝説上の霊獣で大酒飲みの「猩々」に、ロゼット状に広がる幅広の葉を「袴」に見立ててショウジョウバカマの名が付いたといわれる。猩々は人の言葉を理解し全身を朱紅色の長い毛で覆われる。夢のお告げで酒売りになった親孝行の男が、その猩々からいくら酌んでも尽きることのない酒壷を贈られて富み栄える――。この伝説を基に祝言能「猩々」や長唄「二人猩々」が生まれた。
花後、花茎は伸び続けて40~50cmにも。そして6月頃に果実が裂開し糸くず状の種子が風で飛ばされる。ショウジョウバカマには古い葉の先に若芽を付けるという特性もある。葉が枯れて落ちると若芽は地面から根を出す。この〝不定芽(ふていが)〟と呼ばれる繁殖で有名なのがセイロンベンケイソウ。一般に「マザーリーフ」として知られ、すばり「ハカラメ(葉から芽)」とも呼ばれる。
ショウジョウバカマはその花姿から各地で古くから様々な名前で呼ばれた。「かんざしばな」「ちゃせんばな」「きせるばな」「かごめばな」」「ゆきわりばな」……。信州の一部地域では「はぬけばばあ」と呼ばれ、子どもたちはこの花のそばに差し掛かると手で口を覆って走り抜けたそうだ。「雪間より猩々袴に招かれる」(赤座典子)。