【狩猟の場面(?)を描いた絵画埴輪、井戸枠に転用された扉板……】
奈良市埋蔵文化財調査センターで平成27年度春季発掘調査速報展「上ノ山古墳と西大寺跡の調査」が開かれている(31日まで)。上ノ山古墳から出土した埴輪の破片には狩猟のような場面が刻まれており、このような絵画埴輪の出土は全国でも初めてという。西大寺寺地の調査では井戸枠に転用されていた扉板が見つかった。
上ノ山古墳は奈良市と天理市にまたがる古墳で、開発によって既に消滅したものと考えられていたが、最近の調査で天理市側に部分的に残存していることが判明した(写真㊧)。発掘の結果、全長34m以上の前方後円墳だったとみられ、周溝からは墳丘に並べられていたとみられる蓋(きぬがさ)、靫(ゆぎ)、馬、鳥、巫女など多種多様な埴輪が出土した(写真㊨)。築造時期は出土した土器から古墳時代後期の6世紀前半~中頃と推定される。
出土した埴輪の中で特に注目されるのは家形埴輪とみられる破片に描かれた図柄。動物と矢を射る人物が描かれており、狩猟の場面、あるいは騎射を行う人物を表現したものとみられる。また須恵器の巨大な甕(写真㊨)や器台が5個分も出土したことから、同センターは被葬者について有力な首長など地域を代表する権力の持ち主だったのではないかと推測している。
一方、平城京の西に位置する西大寺跡の寺地部分の発掘では、奈良~室町時代の掘っ立て柱の建物や溝とともに各時代の須恵器、土師器、黒色土器などが多数出土した(下の写真㊧)。奈良時代の井戸からは井戸枠の最下段部分が良好な保存状態で見つかった。この井戸枠は扉板を転用したもので、2枚の板を2カ所の太枘(だぼ、木製の棒)でつなぎ合わせ、さらに釘で固定していた。片隅には扉を開閉するための軸(赤の矢印部分)も付けられていた。