く~にゃん雑記帳

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<大和文華館> 「桃山、江戸前期の美術―都市文化の華やぎ」

2012年12月17日 | 美術

【俵屋宗達、尾形光琳・乾山、本阿弥光悦、輸出漆器…】

 奈良市の大和文華館で特別企画展「桃山、江戸前期の美術―都市文化の華やぎ」(24日まで)が開かれている。長い戦乱が終わった桃山~江戸時代前期には公家や町衆の文化に武家の嗜好が融合し、華やかな絵画や工芸装飾品が生み出された。同展では俵屋宗達や尾形光琳に代表される琳派などの作品や欧州向けの螺鈿や蒔絵が豪華な「輸出漆器」などを展示している。

   

 重要文化財の「扇面貼交手筥(せんめんはりまぜてばこ)」(写真㊤)は尾形光琳筆。扇の骨の跡や折り畳んだ跡が残っており、団扇として鑑賞された後に木製の箱に張られたとみられる。全面金箔地で、蓋に紅白の菊、側面などに雲龍、白梅、富士、西行物語図など多彩な画題が色鮮やかに描かれている。

 「新古今集和歌色紙」(写真㊧)は慶長11年(1606年)11月11日、本阿弥光悦筆。琳派の祖といわれる俵屋宗達がキキョウと下草を描いた料紙に、光悦が新古今和歌集から宜秋門院丹後が詠んだ和歌を書写した。「わすれし濃(な)難波の秋の夜半の空 ことうらにすむつきはみるとも」。光悦はもともと刀剣の鑑定や研磨を家業としており、出品作の中には刀匠の名前や出身地を記した伝光悦筆の「刀匠名書」もあった。

  

 俵屋宗達は生没年不明だが、光悦と親類関係にあったといわれる。宗達筆と伝えられる「伊勢物語図色紙」は近年発見の12面も含め、これまでに59面が確認されているが、そのうち館蔵と特別出陳の計8点(写真㊨は「六段・芥川」)が展示されている。いずれも金銀泥に鮮やかな顔料を使って描いた豪華な作品である。

 尾形乾山筆の「武蔵野隅田川図乱箱」と伝光悦作の「沃懸地(いかけじ)青貝金貝蒔絵群鹿文笛筒」は重要文化財。乾山は光琳の実弟で、晩年、京都の乾山焼の窯を養子に譲って江戸に下った。この乱箱(蓋のない浅い箱)は没年1743年の作品で、見込みに墨で龍や波、金泥の小さな鳥、側面に色とりどりのススキを描いている。枯淡の境地をそのまま表しているかのようだ。

 渡辺始興筆の「四季花鳥図押絵貼屏風」(6曲1双)はツルやカメ、ウメ、白菊、若竹、オシドリ、アヒルなどを描いたものだが、白黒の水墨の背景の中に彩色した細密な草花や鳥などが浮かび上がる。桃山時代にはポルトガルなどの神父や商人からの注文で、半円筒形の蓋が付いた洋櫃(ようびつ)などが京都近辺で多く制作され「南蛮漆器」「輸出漆器」などと呼ばれた。出展されている「青貝蒔絵草花文洋櫃」や「螺鈿蒔絵鳥獣草花文書箪笥」の豪華さは目を見張るばかりで、当時の漆工技術の水準の高さを示す。

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