経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・悲惨な景況への序幕

2020年05月03日 | 経済(主なもの)
 先週公表された3月の統計は、自粛が強まる前の時期であったから、コロナ禍の序幕を映すに過ぎない。悲惨なのは、まだ数字の出ていない4月以降だ。数字は出ていなくても、酷いことだけは確実という状況である。いまや、経済指標を眺めるより、新型コロナの感染者を数え、自粛の見通しを立てる方が、経済の行方を探る上で必要になっており、それが低下傾向にあることは、せめてもの救いとなっている。

………
 3月の商業動態・小売業は前月比-4.6と大きく低下した。それでも、1-3月期は前期比+1.6である。むろん、10-12月期が消費増税で前期比-6.9となった反動である。他方、GDPの消費に近い消費総合指数は、1,2月平均が前期比-0.3と、消費増税の下で、コロナ禍以前から不振に喘いでおり、3月の商業動態・小売業の低下を踏まえると、1-3月の前期比は-1.3%くらいまで落ちるのではないか。

 設備投資に関しては、鉱工業指数・出荷の資本財(除く輸送機械)の1-3月期の前期比は-0.5、資本財輸送用が-6.6、建設財建築用が-1.0と軒並み減少しており、GDPの設備投資は、10-12月期に-3.5%の大幅なマイナスを記録したにもかかわらず、引き続き落ちることは必至で、-1.0%を超えそうである。さらに、建設財土木用まで前期比-4.8になっている。鉱工業指数・出荷は、コロナ禍の以前から下落して来ていることが痛い。

 雇用については、3月の新規求人倍率は2.26と前月比+0.04となったが、求人が減る中で、それ以上に求職が減ったためである。新規求人数の前年同月比を見ると、3か月連続で大幅に減少しており、産業別では卸小売、飲食宿泊が大きいだけでなく、製造業や建設業でも減っている。影響は、直接、コロナ禍で影響を受けるサービス業にとどまらず、既に広く及んでいるのである。

 先行する意識指標では、4月の消費者態度指数の雇用環境は、3月の前月比-11.6に続き、-12.9と2桁の下落となった。文字どおり墜落状態であり、一気にリーマンショック時の最低記録を破った。非常事態宣言で自粛が強まった4月は、さらに酷い統計数字が出てくることは確実で、5月中の宣言の解除が望み薄となったこともあり、1-3月期の年率-4%近いマイナス成長に続いて、4-6月期のGDPは記録的低下となりそうである。

(図)


………
 今後の感染者数は、どのように推移するのか。疫学の専門家ではないが、トレンドを伸ばすことはできる。過去7日間の平均減少率が続くと仮定すると、全国では、7日間移動平均が3月中旬のレベルである50人以下になるのは、5/27という計算になる。非常事態宣言が1か月程の延長となるのもやむを得まい。もっとも、足下の感染者数は、2週間前の自粛の結果であるので、あと10日程の努力で、確定的な未来となる。

 問題は、5月中旬以降、どのくらい自粛を緩められるかである。東京では、夜の街と週末営業の自粛によって、感染者数の増加は止まったが、平日昼の商業活動を再開して、逆読みの理屈どおり、本当に増えずに済むかには、リスクがある。再開がどれくらい接触率や感染率に影響するのか、確たることが言えなければ、強い自粛の継続による経済的損失も勘案しつつ、政治がリスクを負って判断しなければならない。

 実は、東京は、5/1、5/2と2日続けて160人以上の「異常値」が出たため、予測モデルが壊れてしまった。たまたま院内感染があったという特殊要因なら良いが、今後も時折あるものというなら、低位での安定は見通せなくなる。そして、院内感染が強い自粛によって効果的に防げるものなのかという問題も提起される。こうした難しさを抱える中で、出口に向けた決断をしていかなければならない。


(今日までの日経)
 大阪府、経済再開へ基準 休業要請解除、15日可否判断。緊急事態 1カ月程度延長。中堅に資本支援1兆円。マイナス21%成長予測 4~6月民間平均、戦後最悪に。家計や企業、備え急ぐ 緊急経済対策。米GDP減少、戦後最大に 4~6月、年率40%予測。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする