酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『東海道四谷怪談』

2015-06-21 15:38:23 | 演劇


『東海道四谷怪談』    (於)新国立劇場 中劇場

作:鶴屋南北 演出:森新太郎 上演台本:フジノサツコ
出演:内野聖陽、秋山菜津子、平 岳大、山本 亨、大鷹明良、木下浩之、有薗芳記他

 浪人・民谷伊右衛門(内野聖陽)は、女房お岩(秋山菜津子)と別れさせられた舅を殺して復縁するのだが、産後の肥立ちの悪いお岩が疎ましくなり邪顕にする。隣家から貰った薬で容貌が崩れたお岩は嘆き苦しみ死んでしまう。伊右衛門はすぐに隣家の娘を嫁にするのだが、お岩や手に掛けた奉公人などの怨念が鼠や火の玉となって彼を苦しめる。

今回の森新太郎の演出は、非常にからっとした『東海道四谷怪談』になっている。裏切り、殺しなど悪行をつづける伊右衛門も根っから明るく描かれる。先を考えず目先だけで次々行動を起こしてしまう主人公にすることで、怪談噺とは違った現代的な怖さを出したいとの演出家の意図はあったようだが、全体的には成功したとは言いがたい。

その要因は1.大きなボードを使った舞台転換、2.雨戸をはずすようにして現れる空中のステージ、3.黒子を隠さずに鼠を走らせたこと、4.「乙女の祈り」を使ったバックグラウンドミュージック、5.お岩だけは女性の秋山菜津子が演じ、他の女役は男性が演じたことなど、これらの意欲的な試みが目立ち過ぎて、肝心の舞台の本筋を希薄にしてしまったことにあるのではないか。

場面場面を見ている限りでは面白いのだけれど、心に残る部分が少ない印象。劇場が大き過ぎて(名前は中劇場だが1000人入れる)、人物の表情が十分見えないことも一つの原因になったかもしれない。
また見せ場であるラストの雪の中の大立ち回りは、内野聖陽の熱演はあったものの、シアターコクーンで演じられた『三人吉三』の同じようなシーンでの歌舞伎の型の美しさに及ばない。思い切って歌舞伎から離れた方が良かったのではないか。

公演は6月28日(日)まで


最新の画像もっと見る

コメントを投稿