酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『身毒丸 復活』

2008-03-30 23:47:52 | 演劇
作・寺山修司/岸田理生 演出・蜷川幸雄 出演・藤原竜也/白石加代子
彩の国さいたま芸術劇場

1997年ロンドンでの公演で、オーディションで選ばれた藤原竜也が好演した伝説の舞台。一度はファイナルとして封印されたものが、ワシントンからの招待で復活したもの。

死んだ生母への思いから、継母(撫子)に心を開かない身毒丸。思いあまった撫子は身毒丸の目を潰してしまう。継母としての恨みは、女性としての撫子を慕う気持ちとは別。恋焦がれる身毒丸の思いがせつない。

あっというまの一時間半。迫力・幻想・悲しみ・見事な舞台転換など、芝居のあらゆる素晴らしさがびっちり詰まった濃厚な舞台である。藤原竜也の全裸の行水まである。

終わってなりやまなかった拍手が、客席の満足度の高さを示していた。
絶対お勧めだけど、もうチケットがないかも。


『ベガーズ・オペラ』

2008-03-28 14:18:49 | 演劇
脚色・演出:ジョン・ケアード

さすがに日生劇場の芝居である。再演ということもあるのだろうが、主役級だけでなく、全員が演技・歌・踊りまで完璧に演じている。だからそれなりに楽しい。

1728年にイギリスで作られたこの芝居は、200年後にブレヒトが「三文オペラ」として改作したりして演劇史上有名な作品である。

この芝居の魅力は、同じ悪いことをしても下層階級だけが処罰を受ける不合理など現代にも通じる社会批判、したたかに生きる底辺の人達のエネルギー、最後の絞首刑後のどんでん返しなどにある。しかし社会批判は常套的であり、絞首刑でなく皆が踊り出すというどんでん返しも筋からみると無理がある。
複雑になった現代には、内容が淡白でそれほど魅力的であるとは言いがたくなっているようだ。多分「悪」がもっと徹底的な悪でないと、この芝居の筋は現代には受け入れられないだろう。

ジョンケアードの演出もその辺はお見通し。乞食の仲間達が演じる劇中劇という形をとっているため、演出家にとっても選択肢は広い。いろんな形で客席を巻き込み、楽しくなる工夫はこらしているのだが・・・。

芝居の完成度の高さの割には、主役のマクヒース役の内野聖陽は悪のヒーローとしてのパンチ力不足だし、ポーリー・ピーチャム役の笹本玲奈は、はきだめの鶴の可憐さに欠ける。

芝居全体としてのレベルはかなり低かったが、昨年10月の世田谷パブリックシアターでの「三文オペラ」での、吉田栄作の胡散臭ささと篠原ともえの可憐さ方が役柄にはぴったり合っていたような気がする。

一時の楽しみとして見るならお勧め!ただし3月30日まで。