酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『カリギュラ』

2007-11-24 22:30:34 | Weblog
小栗旬の裸が話題の舞台『カリギュラ』見て来ました。

シアターコクーン
CAST カリギュラ:小栗 旬 セゾニア:若村麻由美 エリコン:横田栄司
     シピオン:勝地 涼  ケレア:長谷川博己 ほか
演出   蜷川幸雄

ローマ皇帝カリギュラの恐怖政治に、脅えながらも殺害の時を待つ貴族や側近達。動きを察した皇帝は新たな狂気へと・・・。

原作は「異邦人」で有名なカミュ。かなり哲学的な言葉が飛び交います。
前半はその言葉の緊張感と役者達の熱演がうまく調和して、久しぶりに蜷川芝居の良さを感じました。

しかし休みの後、カリギュラがヴィーナスを演じる当たりから違和感が出はじめます。小栗旬が女装でそれもお尻丸出しで、哲学的セリフを話すのです。ヴィーナスなので、女装は仕方ありません。お尻も短い時間なら効果的かもしれません。
でも小栗旬がその格好でいつまでも舞台をだらだら動き回っているのですからいやになります。
カミュの描きたかったカリギュラとは、少し違うのではないかとの疑問を持ちました。

写真の木片は、詩人達の詩が不満でカリギュラ役の小栗旬が投げつけた詩のボードの破片です。余りに激しく舞台に投げつけたので、割れて破片が私の足元に飛んできました。

セリフのつばやワインの液体が飛び、椅子がひっくり返り、ガラスが割れ、果ては人間まで舞台から落ちてきそうで、はらはらした芝居でした。小栗旬や若村麻由美をはじめ出演者も熱演でした。
ただ、過去の蜷川芝居のどこかで見たシーンの繰り返しという印象がぬぐえず、物足りなさも残りました。







『野鴨』

2007-11-19 22:52:32 | 演劇
19日『野鴨』を見た。
原作:イプセン  企画・製作:メジャーリーグ+庭劇団ペニノ
会場:シアター1010ミニシアター(北千住)

一見幸せそうに暮らしている家族の中に、異質な性格の夫の友人(グレーゲルス・ヴェルレ)が割り込んでくる。彼は彼なりの正義感で夫(ヤルマール・エクダル)に影響を与えるのだが・・。
その結末が娘の自殺という悲劇になってしまう。

いい役者が集まり、よく練られた芝居という感じ。
演出家タニノクロウの腕も確かである。

見ていて、誰の生き方に一番共感できるか、娘は何故自殺したのか、いろいろ考えさせられる芝居だった。

またこの芝居には気になるセリフがある。グレーゲルスのセリフ「13番目の客となる」とエグダル老人の「森は復讐する」である。
「13番目の客(招かざる客)」はそれまでのグレーゲルスの強気の発言からみると唐突であり、「森は復讐する」も自然の破壊を言っているのだと思うのだが、芝居を見ただけでははっきりしない。これらの謎解きもイプセンの戯曲の面白さなのだろう。

気になる役者では、石田えりの絶やさない微笑みが魅力的。映画「遠雷」のみずみずしさや、「釣りバカ日誌」のハマちゃんの奥さん役が懐かしい。
歌で「夜明けの停車場」の大ヒットがある医者レリング役の石橋正次もいい味を出している。ただラストの「なんて運命なんだ!」のセリフはもう少し重厚さが欲しい。
他に保村大和、手塚とおる、高汐巴などが出演。

切られた木が照明にかわる舞台美術や、最後に生演奏とわかる見事なピアノ演奏などすべてに丁寧な舞台づくりに好感がもてる。

イプセンの戯曲は観客にもいろいろ考えさせるが、役者さんにとってもなかなか手強い相手であり、やりがいがありそうに感じた。


ミネアポリス美術館浮世絵展№2

2007-11-18 00:06:51 | 美術館
松涛美術館に浮世絵展を見に行きました。

前期に続き、今回は後期ですがやっぱり凄い!
構図、色彩、雰囲気の豊かさなど、浮世絵の素晴らしさがすべてわかります。

後期の展示替えでも鈴木春信、北斎、広重から歌麿など、前期に全く見劣りしない有名どころが勢揃いです。
今回は役者絵が多いのが、特徴でしょうか。写楽の有名な「市川鰕蔵の竹村定之進」もあります。

私が初めて見たなかでは、広重の「京都名所之内 あらし山満花」にびっくりしました。川をゆく舟を描いているのですが、斜め上からみた構図がとても新鮮です。

これだけの絵を見て、入場料はわずか300円、60歳以上は無料なんです。会期はあとわずか。絶対おすすめです。


『三文オペラ』

2007-11-01 19:38:18 | 演劇
先週、世田谷パブリックシアターで『三文オペラ』を見た。
出演は、吉田栄作、篠原ともえ、ローリー、なんとなく懐かしさを感じるメンバー。

ブレヒトの芝居は私には暗い印象が強い。「コーカサスの白墨の輪」「肝っ玉おっ母とその子どもたち」社会派演劇の全盛の時期に見たせいかもしれない。

しかし『三文オペラ』は音楽劇。現代に合わせ楽しい芝居にも出来たはず。
悪も呑み込んだ庶民のエネルギーが爆発するような芝居であれば成功したであろう。

残念なことに舞台はどこかふっきれないまま進む。演出に切れがない。
それに音楽劇なのに、肝心の音響が悪い。劇場のせい??
前から二列目の席で舞台奥が見えず、演奏はテープとばかり思っていたら、実際は生演奏。アンコールの紹介で初めて気がついた。
歌も音響が悪い上、全員がフルパワーで歌うものだから余情も何もあったものでない。

吉田栄作はかっこいいのだが、吉田栄作そのままで主役のメッキ・メッサーになりきれていない。昔のテレビドラマ「もう誰も愛さない」が懐かしい。
篠原ともえも、しっとりした分迫力が足りない。
あれもこれも不満の残る舞台であった。