酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『野田版 愛陀姫』

2008-08-28 19:42:07 | 演劇
八月納涼大歌舞伎『野田版 愛陀姫』 歌舞伎座。

オペラ「アイーダ」が原作。
「アイーダ」はエジプトの将軍とエチオピアの王女とエジプトの王女の三角関係のお話。といっても将軍とエチオピア王女(囚われの身)は相思相愛、エジプト王女は将軍への片思いだが。

これを日本に置き換えたのが、今回の野田秀樹作・演出の『野田版 愛陀姫』。前評判が高かったせいか、補助席も出る人気。

エジプトの将軍は斎藤道三の武将(橋之介)で木村駄目助左衛門、エジプト王女は濃姫(勘三郎)、エチオピア王女は織田信秀の娘で愛陀姫(七之助)という設定。
これにいんちき祈祷師の男女(扇雀と福助)がからむ。権力者道三に取り入ってしたたかに生きる祈祷師に存在感がある。特に福助が楽しそうに演じているのが、気持ちよく笑える。

将軍との愛を貫く愛陀姫(信秀の娘)を演じる七之助は仕草といい、声といい女性になりきっている。歌舞伎でこれほど女性になりきっていいのだろうかと心配になる程。セリフも明瞭で申し分のない演技である。

これに対して濃姫役の勘三郎がちょっと苦しい。『通し狂言 裏表先代萩』の政岡の時も感じたのだが、勘三郎の女形は熱演すればするほど、かすれ声で苦しそうに聞こえる。野田独特のたたみかけるようなセリフの流れに乗りきれていない感じ。

野田秀樹の芝居としては面白さにちょっと欠けるが、歌舞伎座の広い舞台をふんだんに使い、歯切れのよい演出を見せている。

オペラのアイーダでは本物の象が登場することもあるらしい。今回は、かわりに透明風船の象が出てきた。歌舞伎の若手が差し上げなから舞台上で動くのだが、役者がどこか照れ臭そうな表情をしているのが微笑ましかった。
歌舞伎をはみだした歌舞伎の一面を見た気がした。





『星影のJr.(ジュニア)』

2008-08-21 20:23:04 | 演劇
庭劇団ペニノの『星影のJr.(ジュニア)』を、下北沢のザ・スズナリで見た。

演出のタニノクロウは去年イプセンの「野鴨」が、非常に印象に残る芝居だったので、今回も期待したのだが・・・。

すべてに自分勝手な父親、従順に見えてはっきり意志をもつ母親、閉じ籠り気味の子供の三人家族。それに父親の部下や愛人、子供の目にだけ見えるウインナーマン(マメ山田)などがからむ。

この芝居にはラスト近くで、白い下着の女性に水鉄砲を当てるシーンが出てくる。愛人を追い出し元の家庭に戻るという暗示なのだろうか。人によって見方も変わるだろうから、意味がないとは言わない。ただ水鉄砲を打つのが、小さな子供であることに腹が立つ。
愛人の女性は「もう帰るよ」と言いながら服を着る風もなく、結構長い時間下着姿でつっ立っている。早く服を着ろよと思ったが、水鉄砲のシーンへつなぐためだったようだ。
演出にとっては重要なシーンのようだが、いくら芝居でも子供にこんなことやらせるなよというのが実感。
悪趣味で徹底するのかと思えば、映像で子供の絵を何枚も見せたりするのがいかにも偽善っぽい。

芝居は学校の授業風に第一時限から第四時限まで、社会や道徳など課目が変わって進行する。変わり目にはスクリーン映像を使うので完全に分断される。全く違う話がオムニバス風につながれるなら意味あるが、続きものが単に切られている感じで効果的とは思えない。

全く素人というハーフらしい子役が自然な演技で好演しているのが救い。

今回は腹立ちが先にたって、タニノクロウをゆっくり鑑賞するという気分にならなかった。来年2月予定のイプセンの「ちっちゃなエイヨルフ」の演出に期待しよう。



「ザ・マジックアワー」

2008-08-17 12:40:03 | 映画
賞味期限切れ寸前の「ザ・マジックアワー」見ました。

三谷幸喜らしいシナリオのよく練られた作品です。毒がなくどんな世代でも安心して見られるのが、三谷作品のいいところ。
笑いもホロリとするところもありますが、爆発的でないのが、物足りないと言えば物足りない。
三谷幸喜の映画へのこだわりの部分がわかると、もっとマニアックな楽しみ方も出来るのでしょうが・・。

役者さんは佐藤浩市、西田敏行、戸田恵子など、いつもの三谷組が楽しそうに演じ、綾瀬はるかが新鮮な雰囲気を加えています。
びっくりしたのは、懐かしい柳沢慎一が出ていたこと。もう何十年も見てない感じですが、気がつかなかっただけかもしれません。軽い笑いの演技が出来る人だったから、三谷さんの好きな役者さんだったのかもしれませんね。昔のアクションスターの設定で、結構重要な役どころでした。

ともかく2時間ちょっと、気持ちよく楽しめる映画です。