酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『時計じかけのオレンジ』

2011-01-28 12:07:32 | 演劇

「時計じかけのオレンジ」赤坂ACTシアター
演出:河原雅彦  出演:小栗旬・橋本さとし・武田真治・吉田鋼太郎・キムラ緑子

印象は劇画。騒音に近い大音響の音楽、背景に映し出されるきらめく映像、
目の周りを真っ黒にしたメーク、傍若無人に暴れまわる若者たち。
前半は騒がしいだけでどうなるかと思ったが、人間の精神改造を行う
医者役の橋本さとしとキムラ緑子の二人が出てきてやっと落ち着いた。

悪の若者の中心的人物であるアレックス(小栗旬)は殺人で獄中へ。政府の犯罪者対策で
精神改造の治療を受け、無害な人間になって刑務所を出るのだが・・・。

キューブリックの映画が公開された頃には、衝撃的だったであろう内容も、現代ではそ
う驚きはない。悪に復活したアレックスが、年のせいだけで普通に戻るというのも安易。

ただ普通の人間に戻り、観客に語りかける小栗旬はチャーミング。あのシーンだ
けでも、ファンなら十分満足したはず。

前から感じるのだが、赤坂ACTシアターは音響が良くないと思う。音楽中心の舞台
だけに劇場を選べば印象はもっと良くなったかもしれない。

公演は1月30日まで


『ろくでなし啄木』

2011-01-24 11:33:06 | 演劇

「ろくでなし啄木」 作・演出 三谷幸喜  出演 藤原竜也・中村勘太郎・吹石一恵

いい芝居を見ると帰りが元気だ。三谷幸喜の芝居は面白い。どう展開するのだろうとワクワクさせてくれる。

片田舎の温泉宿。啄木(藤原竜也)と友達のテツ(中村勘太郎)、啄木を愛しているトミ(吹石一恵)の三人が二部屋に宿泊している。お金の面倒はテツに全部みてもらいながら勝手な振る舞いをする啄木。そんな啄木でも好きなトミ。てつはトミへの思いを押さえながら二人につくす。

石川啄木という有名人の虚像を一旦こなごなにし、三谷流の悪だけれど、にくめない啄木像を見せてくれる。これも虚像の一つなのだが、三谷の手にかかると実像のように生き生きしてくる。

啄木が温泉宿へ来た本当の意図は何か。
複線となる林檎と蜜柑の話や、啄木の秘めた狙いは筋としてちょっと苦しいが、徐々に明かされていく過程はフラッシュバック的な演出が使われ楽しい。

三人はそれぞれに好演。中でも場面場面での切り替えの見事な中村勘太郎の演技が際立っている。

東京芸術劇場は終演。東京では2月17日より天王洲銀河劇場

『鶴屋南北賞』

2011-01-23 00:04:34 | 演劇
2・3日前の朝日新聞に小さい記事で、鶴屋南北賞の発表が載った。
今回(第14回)の受賞者は前川知大。2010年上演の優れた新作戯曲に贈られるもので、
作品は「プランクトンの踊り場」。
嬉しいのは、作者の前川知大が東洋大学文学部の哲学科の卒業生であること。

駅伝や野球で脚光を浴びている東洋大学だが、文化・芸術面でも活躍する人がいるのは素晴らしい。


『しあわせの雨傘』

2011-01-10 20:05:26 | 映画

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
今年初めての記事は映画です。

「しあわせの雨傘」

監督:フランソワ・オゾン、出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ

「そうよ人生は美しい」という陳腐な言葉で終ることでわかるように、内容は刺激的とは言えない。

雨傘を造る工場の社長夫人(カトリーヌドヌーヴ)は、家事や趣味に明け暮れる生活をおくっている。ところが横暴な社長である夫(ファブリス・ルキーニ)が病気に倒れたことから、社長に就任し会社を立て直すなど、自立した女性として目覚めていくという話。
これに保守的な娘と革新的な息子、そして市長である元恋人(ジェラール・ドパルデュー)とのエピソードがからむ。

しかしこの映画の本当の面白さは、すぐ深い関係へと進む男女のあけっびろげな恋とフランスらしい艶やかな笑いにある。

もう老年とも言えるカトリーヌ・ドヌーヴの魅力を精一杯見せようというオゾン監督の意図が感じられる映画でもある。

「スイミングプール」や「8人の女たち」のオゾンの映画としては物足りないが、幸せな気分が残る映画である。