酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『90ミニッツ』

2011-12-27 16:51:39 | 演劇


「90ミニッツ」    PARCO劇場
作・演出:三谷幸喜    出演:西村雅彦・近藤芳正    美術:堀尾幸男

芝居は実際に過去に起こった事件を題材にしている。
交通事故で重傷の子供の処置をめぐる、父親(近藤芳正)とその窓口となった病院の整形外科副部長(西村雅彦)との、輸血についての意見の対立がメイン。命を守るために残された時間は90分。緊迫した状況での心の葛藤を描く二人芝居である。

表面的には医者側の良心と父親の愛情を対比させた、ヒューマンドラマを装う。
医者の心情は納得できたが、父親の愛情は多少ピントがずれてる感じで素直には共感できなかった。
ただこの芝居で、作・演出の三谷幸喜の狙いは少し違うところにあったのではないか。それはセリフとセリフがぶつかりあっているうち、思いがけない方向に進んでいく不条理劇のようなもの。しかしそうだとすると今度はセリフが物足りない。「12人の優しい日本人」にあった鋭さがない。

あと芝居のほとんどの時間、舞台手前の中央天井から一筋の線が流れ落ちる。批評家の評では「命の水」という解釈であったが、私は時間の切迫を示す砂時計のようなものとしてずっと見ていた。

西村雅彦は普段テレビなどで見る軽い役柄とは違い、毅然とした医者という印象をうまく表現し、近藤芳正は手慣れた役柄をたんたんとこなしている風に見えた。

三谷幸喜の喜劇を期待した人には肩すかしという感じだし、シリアス系としては多少緊迫感に欠ける芝居だった。

今回の感想はパンフを買わずに書いたので、三谷幸喜の意図とは違っているかもしれない。

公演は東京12月30日まで(来年2月に追加公演あり)・大阪は1月11日~23日。


『ロッキー・ホラー・ショー』

2011-12-16 19:45:58 | 演劇


「ロッキー・ホラー・ショー」     KAAT神奈川芸術劇場(12月14日)


脚本:リチャード・オブライエン    演出:いのうえひでのり
出演:古田新太・岡本健一・笹本玲奈・中村倫也・右近健一・辛源・ROLLY・藤木孝 他

「伝説のB級SFロックミュージカル」と言われるロンドンで初演の舞台のパルコ版。

ハイテンションな歌・踊り・音楽、マッチョな若い男の裸、飛び交う下ネタなど、猥雑さに満ち溢れた舞台。この舞台を楽しむには、席から立ち上がって踊りまくるか、マニアックにロッキーホラーショーの世界にのめり込むしか選択肢はない。

がなりたてる歌の中で、トーンを変えた古田新太や笹本玲奈の歌も悪くはないのだが、心に響くまでにはいかない。最近『夜会VOL.17  2/2』で中島みゆきの、心地よい歌を聞いたばかりなので余計に感じたのかもしれないが。

ラストは新感線のファンクラブの人達を中心に会場を巻き込んだ歌・踊りで大盛り上がり、終演後の古田新太、右近健一、辛源の軽妙なアフタートークも大ウケだったが、やっぱり本体で勝負したいところ。


神奈川芸術劇場の公演は、12月25日(日) まで

『ヴィラ・グランデ 青山~返り討ちの日曜日』

2011-12-02 20:59:25 | 演劇


「ヴィラ・グランデ 青山~返り討ちの日曜日」シアタークリエ
作・演出:倉持裕    出演:竹中直人/生瀬勝久/山田優/谷村美月/松下洸平/田口浩正

11月の終りに「ヴィラ・グランデ 青山~返り討ちの日曜日」を見た。

作・演出の倉持裕は過去の芝居でも、ガラスの内外を巧みに利用している。それは窓であったりガラス戸であったりする。閉まっていれば姿は見えるが、声は聞こえない面白い状況が生まれる。

今回の舞台はマンション。共用部分のガラス戸を効果的に使用。外はマンションの中庭。ガラス戸の内はエントランスのロビーで管理人室がある。
中庭には二人の男。昔は同じ会社の同僚だった民谷(竹中直人)と陣野(生瀬勝久)だが、けんか別れして何年も会っていなかった。ところが民谷から突然相談があると呼び出しがあって・・・。
築後20年を過ぎた青山の瀟洒なマンションで起る出来事を、男二人の噛み合わない会話を軸に倉持が軽いタッチで描く。

竹中直人と生瀬幸久の組合せで大爆笑を期待したが、まあまあ程度。ちょっと期待し過ぎたか。
一方で竹中の娘の〔今彼〕を演じる松下洸平が芸達者の二人に混じり遜色なく演じ、初舞台という山田優も身のこなしが自然で健闘。

芝居は現在大阪公演中。以後名古屋・静岡・金沢など。