「90ミニッツ」 PARCO劇場
作・演出:三谷幸喜 出演:西村雅彦・近藤芳正 美術:堀尾幸男
芝居は実際に過去に起こった事件を題材にしている。
交通事故で重傷の子供の処置をめぐる、父親(近藤芳正)とその窓口となった病院の整形外科副部長(西村雅彦)との、輸血についての意見の対立がメイン。命を守るために残された時間は90分。緊迫した状況での心の葛藤を描く二人芝居である。
表面的には医者側の良心と父親の愛情を対比させた、ヒューマンドラマを装う。
医者の心情は納得できたが、父親の愛情は多少ピントがずれてる感じで素直には共感できなかった。
ただこの芝居で、作・演出の三谷幸喜の狙いは少し違うところにあったのではないか。それはセリフとセリフがぶつかりあっているうち、思いがけない方向に進んでいく不条理劇のようなもの。しかしそうだとすると今度はセリフが物足りない。「12人の優しい日本人」にあった鋭さがない。
あと芝居のほとんどの時間、舞台手前の中央天井から一筋の線が流れ落ちる。批評家の評では「命の水」という解釈であったが、私は時間の切迫を示す砂時計のようなものとしてずっと見ていた。
西村雅彦は普段テレビなどで見る軽い役柄とは違い、毅然とした医者という印象をうまく表現し、近藤芳正は手慣れた役柄をたんたんとこなしている風に見えた。
三谷幸喜の喜劇を期待した人には肩すかしという感じだし、シリアス系としては多少緊迫感に欠ける芝居だった。
今回の感想はパンフを買わずに書いたので、三谷幸喜の意図とは違っているかもしれない。
公演は東京12月30日まで(来年2月に追加公演あり)・大阪は1月11日~23日。