酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

読書三昧(27年6月)

2015-06-30 18:07:34 | BOOK



読書三昧(27年6月)

病気になってから、トイレのウォシュレットのありがたみを一層感じるようになった。
発明者に感謝感謝である。(開発自体はどうもアメリカみたいだが)

6月に読んだ本
三上 延『ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~』
黒柳徹子『トットひとり』
手塚治虫漫画『アドルフに告ぐ1-4』
梶井基次郎『檸檬』
牧藍子『元禄江戸俳壇の研究―焦風と元禄諸派の俳諧―』
『俳句界6月号』
今村恵子句集『こんこんと』

☆三上 延『ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~』
今回は太宰治の『走れメロス』・『駆け込み訴え』『晩年』をめぐる話。登場するのは今まで出てきた人物とそれと身近な人ばかりで、かなり狭い範囲の人々。その人達の隠されたつながりを 少しずつ明らかにしながら古書をめぐる事件の物語は進展する。古書にかかわる興味とミステリーの両方で満足させてくれる作者の技量は大変なもの。お薦めの一冊。

☆黒柳徹子『トットひとり』
向田邦子、森繁久彌、渥美清など舞台やテレビで交流のあった人々との出会いと別れを描いたあったかくて悲しいエッセイ。何のてらいもなく書かれた文章が、芝居のせりふのように心をうつ。
楽しいエピソードがいっぱい綴られていて笑ってしまうのだが、根底に「死」よる別れが意識されているだけに、ただの面白い話には終わっていない。「生きる」ということを見つめなおさせてもくれる。
私は森繁久彌について書かれたものが、一番好きだ。

☆手塚治虫漫画『アドルフに告ぐ1-4』
先日見た舞台「アドルフに告ぐ」の原作本。文庫本なので絵も字も小さく読みにくいが、内容は面白い。3時間弱の舞台にするために、脚本がどのようにうまくまとめられているかもよくわかり興味深い。漫画は軽いものと思っていたが、小説を読むよりボリューム感あり。

☆梶井基次郎『檸檬』
先月読んだ『珈琲店タレーランの事件簿4』に出てきたので、懐かしくなって読みなおし。文庫本で10ページ程度の短篇だが、印象は深い。丸善で画集を積み上げてその上に檸檬を置いて来るのだが、主人公の頭の中では檸檬がいつか爆発物になっているという演劇的な雰囲気に魅かれる。

☆『俳句界6月号』
特集の「芭蕉」に目がとまり買った。それぞれの文章はそれなりに面白いのだが、いかんせん全体的にも個別でも文章の量が少ないため概説だけになっている。まあ雑誌の特集だから仕方ないのだが・・・。

☆今村恵子句集『こんこんと』
風船を持たない方と手をつなぐ
桃の皮きれいに剝けてゆく不安
ぶんぶんのしまひ忘れし翅の端


『東海道四谷怪談』

2015-06-21 15:38:23 | 演劇


『東海道四谷怪談』    (於)新国立劇場 中劇場

作:鶴屋南北 演出:森新太郎 上演台本:フジノサツコ
出演:内野聖陽、秋山菜津子、平 岳大、山本 亨、大鷹明良、木下浩之、有薗芳記他

 浪人・民谷伊右衛門(内野聖陽)は、女房お岩(秋山菜津子)と別れさせられた舅を殺して復縁するのだが、産後の肥立ちの悪いお岩が疎ましくなり邪顕にする。隣家から貰った薬で容貌が崩れたお岩は嘆き苦しみ死んでしまう。伊右衛門はすぐに隣家の娘を嫁にするのだが、お岩や手に掛けた奉公人などの怨念が鼠や火の玉となって彼を苦しめる。

今回の森新太郎の演出は、非常にからっとした『東海道四谷怪談』になっている。裏切り、殺しなど悪行をつづける伊右衛門も根っから明るく描かれる。先を考えず目先だけで次々行動を起こしてしまう主人公にすることで、怪談噺とは違った現代的な怖さを出したいとの演出家の意図はあったようだが、全体的には成功したとは言いがたい。

その要因は1.大きなボードを使った舞台転換、2.雨戸をはずすようにして現れる空中のステージ、3.黒子を隠さずに鼠を走らせたこと、4.「乙女の祈り」を使ったバックグラウンドミュージック、5.お岩だけは女性の秋山菜津子が演じ、他の女役は男性が演じたことなど、これらの意欲的な試みが目立ち過ぎて、肝心の舞台の本筋を希薄にしてしまったことにあるのではないか。

場面場面を見ている限りでは面白いのだけれど、心に残る部分が少ない印象。劇場が大き過ぎて(名前は中劇場だが1000人入れる)、人物の表情が十分見えないことも一つの原因になったかもしれない。
また見せ場であるラストの雪の中の大立ち回りは、内野聖陽の熱演はあったものの、シアターコクーンで演じられた『三人吉三』の同じようなシーンでの歌舞伎の型の美しさに及ばない。思い切って歌舞伎から離れた方が良かったのではないか。

公演は6月28日(日)まで

『マグリット展』

2015-06-18 19:23:46 | 美術


「マグリット展」   於:国立新美術館

ベルギーの画家ルネ・マグリット(1898-1967)の展覧会。
ずっと見たいと思っていたのですが、終了間近でやっと行くことが出来ました。代表作約130点、マグリットに少しでも関心あれば見逃せない充実した展示です。生涯すべての時期のものが揃っているので、絵の傾向の変遷も一目瞭然です。

有名な『ゴルコンダ』『白紙委任状』『恋人たち』など目を引く作品がありますが、私には青空が描かれた絵はすべて魅力的でした。

ただ全体的に気になったのは、絵と題とのギャップ。明るい青空の絵の題が『呪い』とあったので調べたら他の人がつけた名前でした。理由はそれなりにあるのでしょうが、あまり題に引きずられない方がいいのかもしれません。いつも題を確認してから絵をみる癖がついているので少し反省。
また作者のコメントも理屈っぽくて好きになれませんでした。これも翻訳のせいかもしれませんが。

それはそれとして、絵の方は素晴らしく十分堪能しました。私の一番好きなのは青空に街灯がともる不思議な絵『光の帝国Ⅱ』かな。

会期は6月29日(月)まで

『アドルフに告ぐ』

2015-06-14 12:53:31 | 演劇


「アドルフに告ぐ」   (於)KAAT 神奈川芸術劇場 ホール

原作:手塚治虫 演出:栗山民也 脚本:木内宏昌 音楽:久米大作
キャスト:成河・松下洸平・高橋洋・朝海ひかる・鶴見辰吾 ほか

先週「アドルフに告ぐ」を見た。原作は漫画であるが、手塚治虫の先見性や大きな世界観が見えるスケールの大きな舞台に圧倒された。

アドルフという名を持つ三人の男の物語。ナチス党員であるドイツ人の父と日本人の母を持ち神戸に住むアドルフ・カウフマン(成河)、そのカウフマンの子供時代の友人でユダヤ人のアドルフ・カミル(松下)、そしてナチスのアドルフ・ヒトラー(高橋)。三人の正義が第二次大戦前後の時代の中で、交錯しながら歴史に押し流されてゆく。背景にある「ヒトラーがユダヤ人の血を引く」という機密文書が物語のポイントになっている。

ヒットラーとカウフマンが同じ場所に登場したり、少年時代友人だった二人のアドルフがイスラエル軍とパレスチナ軍に分かれて戦ったりする漫画チックなところはありながらも、現代の私達が考えなければならない問題も提示している。
この舞台で私は個の問題と組織(例えば国)の問題をどう折り合いをつければいいのだろうかということを一番考えさせられた。

俳優では蜷川演出芝居以来久しぶりに見るヒトラー役の高橋洋、歌と切れのいい演技の少女役小此木まりに注目した。また松井るみの舞台美術も素晴らしい。

横浜は今日6月14日(日)が千秋楽。あと宮崎・京都・刈谷で公演あり。

帰り私の好きな劇団「イキウメ」のOさんが、エスカレーターにのってました。先日『聖地 X』で見たばかり。思い切って声をかけたら快く応対してくれました。なかなか気持ちの良い好青年。「イキウメ」をますます応援したくなりました。

『那波多目 功一展 ―清雅なる画境―』

2015-06-12 14:11:52 | 美術



「那波多目 功一展 ―清雅なる画境―」 (於)横浜駅東口・そごう美術館

日本芸術院会員、那波多目功一(なばため こういち・1933年生まれ)の院展出品作など約70点を展示。

日本画壇の重鎮だそうだが、私が作品を見るのは初めて。人物が出て来る絵は少なく四季の花々や風景が中心。大作ぞろいで見ごたえがある。
また作品に添えられた本人のコメントが面白い。制作過程や師である松尾敏男のことなどが親しみやすい文章でつづられている。

作品では、構図が印象的な桜の絵『爛漫』や幻想的に描かれた牡丹の絵などが素晴らしい。
現在81歳。初期の作品では黒が基調のものもたくさん見られるが、最近描かれた絵の色彩が底抜けに明るいのが微笑ましい。

■会期:2015年6月21日(日)まで

『伊藤若冲と琳派の世界』

2015-06-07 11:16:37 | 美術


いよいよ病気も先祖頼み。頑張ってお墓参りに行って来ました。

ついでに京都『相国寺承天閣美術館』(地下鉄烏丸線「今出川駅」下車徒歩8分)の「伊藤若冲と琳派の世界」展へ。
屏風や壁画などが中心で全体に地味な雰囲気のせいか、今はやりの若冲・琳派ですが客足は閑散。おかげでゆっくり見られました。
有名なところでは、俵屋宗達の『蔦の細道図屏風』や本阿弥光悦の『赤楽茶碗』などがありますが、やはり見て一番楽しいのは伊藤若冲です。『釈迦三尊像』の色合いや、『群鶏蔬菜図押絵貼屏風』や『中鶏左右梅図』のダイナミック動きのある鶏など見飽きません。
京都散策に合わせ是非お薦めです。

会期は平成27年9月23日まで