酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『レミング ~世界の涯までつれてって~』

2013-04-29 10:05:39 | 演劇



「レミング 〜世界の涯までつれてって〜」 於:パルコ劇場

作:寺山修司  演出:松本雄吉(維新派)  出演:八嶋智人・片桐仁・常盤貴子・松重豊 他

今回の「レミング」は今までの寺山修司の芝居とは明らかに趣を異にする。
そこには淫靡でカラフルな寺山の世界はなく、モノトーンで乾いた感じになっている。すべて松本雄吉(維新派)の世界なのである。だから郷愁や母恋いも情感は淡くなる。筋立てがきれぎれな上、虚構と現実があいまいな(原作も多分曖昧なのだろうとは思うが)ため内容もわかりにくい。

ただ寺山の言葉については、維新派独特の表現がプラスに働き新しい言葉の世界を生み出している。
すべて松本雄吉の挑戦とも言えるのだが、今までの寺山芝居を期待すると肩すかしを食うことになる。

俳優は主演の4人のうち、松重豊がほとんど床から覗く顔だけの演技で面白い味を出しているが、他はオーディションで選ばれたという俳優たちに迫力で負けているというのが正直な感想。

維新派の魅力と寺山修司の魅力がうまくコラボレーションしていない芝居だと私は思うのだが・・・。(公演は5月16日まで)

『城』

2013-04-11 11:39:01 | BOOK


先日見たMODEの芝居の原作であるカフカの「城」を読んだ。
中々不思議な小説である。

測量士Kは城からの依頼でとりあえず麓の村に辿り着く。村の人々は彼に心を開いてくれないし、目標の城へはどうしても辿り着けない。村人達の中から城との繋がりのありそうな人間を探し城の情報を得ようとするのだが・・・。

異端者として村に入りこんだKを主人公としたこの小説は、人間の存在を問うものらしいのだが、カフカの意図を理解するのは中々難しい。登場人物の誰に共感していいのかわからず、読者の私は右往左往するだけ。と言いながらもどこか面白くて最後まで読んでしまう。カフカの不思議なところである。

芝居の感想では「わかりにくかった」と書いたが、原作を読んでもこの状態だからしかたがないかもしれない。はっきりしたのは松本修演出のMODEの芝居が原作の雰囲気をしっかり表現していたことである。

12月に「城」は再々演されると聞く。もう一度芝居を見て、カフカの不思議な世界を体感したいと思っている。

読書三昧(25年3月)

2013-04-02 22:44:38 | BOOK


読書三昧(25年3月)

今日は病院の点滴の日だった。家を出て帰るまで約11時間。
病人にも体力がいる不思議な世界。

3月に読んだ本
奥田英朗『噂の女』
三上延『ビブリア古書堂の事件手帖3~栞子さんと消えない絆~』
綿矢りさ 『ひらいて』
伊藤計劃・円城塔『屍者の帝国』文体に馴染めず、半分でギブアップ
熊谷國男 句集『秋燕高し』
誉田哲也『ブルーマーダー』

綿矢りさ 『ひらいて』
高校生活を描いているが、屈折した心情などに大人の綿矢りさが見える。相変わらず文章のうまさに引き込まれる。
綿矢が出た京都市立紫野高校の古い卒業生に聞くと、非常にのびのびとした雰囲気で、先生との関係もうまくいっていた学校だと言う。芥川賞をとって10年近い。彼女が今でも高校生活を描くのは、その時代がすごく充実していたからかもしれない。