「背水の孤島」下北沢本多劇場 演劇ユニット「トラッシュマスターズ」第17回公演
作・演出:中津留章仁 出演者: カゴシマジロー・ひわだこういち・吹上タツヒロ・龍坐・阿部薫・星野卓誠 他
昨年9月公演の再演。紀伊國屋演劇賞個人賞、読売演劇大賞特別賞などを受賞した作品と聞いて出かけた。予備知識が無く行ったので、「3時間20分休憩無し」と聞いたときは愕然。体力はもつか、トイレは大丈夫かなど心配したが、なんとか無事終了。
ともかく東日本大震災というテーマで3時間20分退屈させないのがすごい。
舞台は、プロローグ・前篇『蝿』・後篇『背水の孤島』の三部構成
前篇『蝿』では震災後の被災者の生活が描かれるのだが、被災者・ボランティア・役所・マスコミなどそれぞれの視点から問題点が浮き彫りにされる。被災者の娘・息子の抱える悩みも加えて奥行きを広げている。
後篇『背水の孤島』は一転して震災後10年以上経過した永田町が舞台。被災地にいた人々がそれぞれキャリアを積み政治家の近辺で活躍している。そこに放射能テロの危険が発生し混乱が・・・。後篇は政治問題、財政問題、原発を含むエネルギー問題など生の話題を取りこんでいるが、あまり現実感はない。
この舞台の最大の魅力は、前篇のシリアスの部分と、後篇の虚の部分の落差にあると私は思う。
原発に対する作者の立つ位置は「反対」なのだろうと推測するが、セリフの上では、建設容認派の方の理論が整然としていたような気がする。理論よりも放射能テロに見せかけて原発推進を止めさせるのは、「反対」を標榜するには逆効果の気がするが、芝居としては面白い。
公演は9月2日(日)まで