読書三昧(27年8月)
薬を変えるか変えないか判断するためCT検査をした。癌は少し大きくなっていた。抗がん剤が一時、癌細胞に攻め込み優勢だったのだが、癌が反撃し今は押されている。一度押され始めると、もう抗がん剤には押し返す力はない。あとはどれだけ耐えられるか・・・。まだ少しは頑張っているので、薬は同じものを続けることになった。
8月に読んだ本
中山可穂『男役』
太宰治『女生徒』
芥川龍之介『舞踏会』『或阿呆の一生』
馳星周 『アンタッチャブル』
小手鞠るい『思春期』
加藤シゲアキ『ピンクとグレー』
岩瀬江美子句集『大合唱』
☆中山可穂『男役』
宝塚の「男役」を描いた美しい小説である。美しさが魅力であり、また物足りない部分でもある。宝塚フアンならメロメロになりそうかと思ったが、意外にもフアンからは辛口の評が目立つ。
あとがきで作者は宝塚一筋ではなく、小劇場演劇にのめりこんでいた時期があると書いている。作者は美しい世界を意図的にもっと美しく描くことで、男役の魅力と苦悩を際立たせようとしたのかもしれない。
☆太宰治『女生徒』
☆芥川龍之介『舞踏会』『或阿呆の一生』
これらは先月読んだ北村薫の『太宰治の辞書』に出てきた小説。読み合わせてみると楽しい。
☆馳星周 『アンタッチャブル』
最近はやりのパターンであるが、警察組織からはみ出した公安部所属の警視と巡査部長のコンビが主人公の小説。
本筋を追っていると、どこかで梯子をはずされるのではないかと絶えず不安がつきまとう。結局梯子をはずされたような、予想通りであったような不思議な感覚のまま終る。ただ文章の切れ味や登場人物のキャラクターが秀逸で、時間を忘れるほど面白いことは保証する。
☆小手鞠るい『思春期』
主人公の女の子が中学1年生から3年生まで成長していく過程のお話。毎日の生活の中でのとまどいや悩みが9章に分けて書かれている。難しい漢字に振り仮名が付けられているということは、同世代の女の子への生きる指針として書かれたものなのだろう。普通の小説だと思って読んだのだが、違ったみたい。娘でもいればもう少し近いものとして感じられたかも。
☆加藤シゲアキ『ピンクとグレー』
作者がジャニーズ事務所のアイドルであるNEWSのメンバーと聞いて、余り期待せずに読んだけどなかなか面白い。時期を前後させるわりには、表現が滑らかでない前半は多少まだるっこく感じたが、後半はテンポよく読める。作者がアイドルとして日常感じていることがうまく織り込まれているためか、デビュー作でも内容に無理がない。単なる友情小説に終わらせず、耽美的な匂いも感じさせるのが最大の魅力。芥川賞の又吉直樹の『火花』より好きかも。映画化も決定とのこと。
☆岩瀬江美子句集『大合唱』
風薫る若先生の診察日
飛行機雲春の山より立ち上る
モノクロに収めし八月十五日