12月に読んだ本
三谷幸喜『清須会議』
アーサー・ミラー 戯曲『るつぼ』
湊かなえ『贖罪』
宮内悠介『盤上の夜』
モーリス・ルブラン『ルパン、最後の恋』
鈴木鷹夫句集『カチカチ山』
◎三谷幸喜『清須会議』
文句なく面白い。信長亡きあとの織田家の後継者と領土の再配分を決めるため、清須城で清須会議が開かれることになった。小説は会議に出るメンバーとそれを取り巻く人たちのモノローグで構成されている。信長の死から会議の終了後まで、順を追って関係の人物が次々自分の正直な胸のうちを語っていく。その中心をなすのが、羽柴秀吉・柴田勝家・丹羽長秀である。主導権を取るための駆け引きが、モノローグでうまく表現されている。
最近の三谷幸喜については、舞台の「桜の園」映画の「ステキな金縛り」など私には出来がいまいちに見え、そろそろ限界かと思っていたのだが、この小説により三谷の凄さをあらためて認識させられることになった。
構成もユニークで、内容も本当に楽しく面白い小説である。
◎モーリス・ルブラン『ルパン、最後の恋』
もう一つ懐かしかったのが、アルセーヌ・ルパンもの。モーリス・ルブランの『ルパン、最後の恋』 著者の幻の遺作だそうである。ルパンの小説も昔、我を忘れて読んだはずだが、ほとんど内容は覚えていない。今回の内容は、高貴な血をひく娘が巻き込まれた陰謀から、ルパンを中心にした4人の貴族の男性が助けるはずだったのだが・・・。まあ他愛のない活劇ものといった感じ。
面白かったのは、その中にルパンの言葉で「正しい方法で精神を鍛えあげるには何十年もかかる。そこがフランスの教育の愚かなところさ。鋼のように冷徹で、斧のように切れ味のいい強靭な精神の持ち主を作らねばならないのに、感受性ばかりを養っているのだから」と語らせているのだが、多分著者が1937年当時抱いていた教育への考え方なのだろう。フランス人を見ていると今も同じような教育が行われているように感じるのだが、間違いだろうか。
このハヤカワ・ミステリの本には巻末に付録として、ルパン第一作『アルセーヌ・ルパンの逮捕』の初出版の文章(1905年)が載っている。これがお洒落で中々面白い。当時大評判になったのもよくわかる。
いろいろ興味深い本だった。