酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『トイレット』

2010-09-13 23:07:56 | 映画
「トイレット」荻上直子監督

もたいまさこを劇団3○○の舞台で、初めて見たのはもう何年前のことだろう。主婦の井戸端会議でのかけあいのおしゃべりが絶妙だった記憶がある。

その もたいまさこ が、外人の孫三人を相手に全編でセリフが二つしかない「ばーちゃん」を演じる。

母親が死んだ。残されたのは三人の子供と、ばーちゃん。そしてセンセイという名前の猫。
長男はプラモデルオタク、次男はパニック症候群、わがままな妹。ばーちゃんは、英語がわからないようで一言もしゃべらない。
ばらばらな家族が、ちょっとした出来事をきっかけに少しずつ心を開いていく様子を淡いタッチで描く。

映像も美しい。ミシン・餃子つくり・エアギター・ピアノなど織り込まれるエピソードもそつなく入っている。「おち」もちゃんとある。

ただ孫達に対する、ばーちゃんの心の動きが今一つ伝わってこない。口がきけるにもかかわらず一言も話さないのは、最後のセリフを生かすために必要だとはわかるのだが、やっぱり不自然さを感じてしまうのだ。

心穏やかになる映画ではあるのだが、感動するまでには何かが足りない。


『表に出ろいっ!』

2010-09-07 23:58:25 | 演劇

野田秀樹が東京芸術劇場の芸術監督になってから、池袋へ来る回数が増えています。
今日は野田マップ・番外公演の「表に出ろいっ!」を観劇。  作・演出:野田秀樹

中村勘三郎(父)と野田秀樹(母)の共演。二人は夫婦。
その娘役はオーディションで選ばれた二人でダブルキャスト。嬉しいことに今日の出演は、太田緑ロランス。私の一押しの芝居、松本修の「失踪者」と「審判」で活躍していた女優さんです。

筋は、遊園地オタクの父、アイドルに夢中の母、キャラクターグッズに目の無い娘の三人が、それぞれ外出することになりますが、丁度犬のお産日。そのため留守番を押し付け合うことになります。

自分だけ上手く外出しようとする三人の駆け引きに場内大爆笑。拍手と笑いが続けさまにおこる芝居は久しぶりです。

ところが笑っていた状況はいつか全員が家を出られないという悲劇的な状態に。
切羽詰まった中で、信じるということや救われるということについて、家族三人に語らせます。例えば宗教に夢中になることと、ジャニーズやディズニーランドに夢中になることが、どう違うのかとか。

死を覚悟せざるを得ない状況ですが、芝居自体はそう深刻さを見せずに終ります。
娘の信仰する宗教の教祖が書道教室の先生で、前作「ザ・キャラクター」とのつながりも遊び心程度に感じさせます。

野田と勘三郎は他の芝居で見せる厭味がなく、二人の前半のかけあいは本当に気持ちよく笑えます。 一時間二十分と短いのですが、すべてに良くできた芝居です。