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読書三昧(27年5月)
俳句でお世話になった先輩が亡くなった。同じ時期に大腸癌が見つかり、手術も殆ど同じ頃だった。抗がん剤治療の情報交換をしていたが、お互い病状が落ち着いたので安心していたのに、突然の訃報だった。
しばらく落ち込みそう・・・。
5月に読んだ本
井上ひさし『言語小説集』
岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿4― ブレイクは五種類のフレーバーで』
桐野夏生『奴隷小説』
伊坂幸太郎『火星に住むつもりかい?』
小室善弘『俳句入門 芭蕉に聴く―「去来抄」に学ぶ作句法』
☆井上ひさし『言語小説集』
言葉やその使い方にこだわりが凄い井上ひさしの、言語を題材にした短篇が7作。それぞれのアイディアには感心するのだが、あまりに理詰めでくるのがちょっと息苦しい。うまいなあと感心はするのだが、もう少しふんわりした余韻のある小説の方が私は好きだ。
7作の中では「極刑」が面白い。
☆岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿4― ブレイクは五種類のフレーバーで』
主人公の「切間美星(きりまみほし)」という名前にはいまだになじめないけれど、小説が巻を重ねるごとに好きになってきた。今回は短篇5編とショートショート1編の寄せ集めとわかり、がっかりしたのだが、読んでみると結構充実している。読者に勘違いさせておいて、最後に謎を解き明かすという手法がうまくはまっている「午後三時までの退屈な風景」や「パリェッタの恋」。
他の作品も登場人物に対する作者の目がやさしくて心地よい。お薦めの文庫本。
☆桐野夏生『奴隷小説』
奴隷らしき立場にいる人物が描かれる短篇7編が収められている。娘がアイドルになった母親の話の「神様男」だけ少し異色であるが。
主人公達は絶望の中に希望を見いだすのだが、結局その希望は現実にはならない。ただその結末をどう考えるかは読者次第で、最後の余白を埋められる感性があるかどうかが試される。
☆伊坂幸太郎『火星に住むつもりかい?』
ストーリーは荒唐無稽とも言えるが、内容には現実社会の流れへの危機感や個人の心の闇みたいなものが散りばめられているので緊迫感がある。特にラストの処刑のシーンなどはハラハラさせられ盛り上がる。相変わらずつかみのうまい伊坂光太郎である。
☆小室善弘『俳句入門 芭蕉に聴く―「去来抄」に学ぶ作句法』
単なる評釈ではなく、著者自身の言葉でわかりやすく解説されているのがありがたい。読み終えると芭蕉の教えが身についたような気分になる。