酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『ヴェニスの商人』

2007-09-23 20:28:26 | 演劇
天王洲 銀河劇場

お金を借りる担保は、自分の体の肉1ポンド。
子供の頃から知っている有名な話であるが、作者がシェイクスピアと聞くと、あれっと思ってしまう。
『ロミオとジュリエット』『マクベス』『ハムレット』などと、どこか印象が違うのだ。
ヴェニスの商人は、喜劇に分類されているらしい。そうだとすると『夏の夜の夢』『間違いの喜劇』などと同類らしいのだが、これらの底抜けの明るさともまた違う。

アル・パチーノがシャイロックをやった映画『ヴェニスの商人』がそうであったように、今回の演出でも、シャイロックの人種差別問題がかなり大きな部分をしめる。
その割にはキリスト教徒にいじめられたままユダヤ人のシャイロックは退場してしまう。

シェイクスピアがどういう視点でこの話を書いたのか、演出家はシャイロックをどう描きたかったのかが、芝居を見ただけでは分からないモヤモヤが残る。
どちらにしろ、シェイクスピア作品には珍しい現代性のある話しである。

その演出はイギリス人のグレゴリー・ドーラン。 出演はシャイロックが市村正親、バサーニオが藤原竜也、アントーニオが西岡徳馬。
前に市村と藤原の芝居『ライフ・イン・ザ・シアター 』は、二人の絡みが上手くいかなかった。皮肉なものだが、今回は絡みが少なかったことで、独自の個性を出すことができ二人とも成功した。対照的な人物をそれぞれ好演している。
ポーシャ役の寺島しのぶ、芸達者ぶりは相変わらずだが、ちょっと痩せ気味で元気がない。結婚疲れか?? 
またグラシアーノ役の小林正寛は騒ぎ過ぎ。もうちょっと抑えてほしい。
他の共演者達は欠点はないのだが、いま一つ情感に欠けるのが惜しい。

市村正親のユダヤ人としての悲しみの表現と、藤原竜也の求婚者の演じ分けの面白さが印象に残る芝居だった。


『ドラクル』

2007-09-13 23:54:25 | 演劇
シアターコクーンで、「ドラクル」見ました。私の好きなドラキュラもの。

題の「ドラクル」は、悪魔を意味する言葉です。『吸血鬼ドラキュラ』を書いたブラム・ストーカーがその着想を得たというワラキア地方(今のルーマニア)のヴラド4世(15世紀)が「ドラクル」という異名をもっていました。

主演は市川海老蔵で、相手役は昔、交際の噂があった宮沢りえ。あとは永作博美、勝村政信など。

(以下ネタばれありです)
前半、ドラクルが子供の内蔵を取り出すシーンや血の吹き出すシーンなど、今まで長塚芝居を見てない人はちょっと引いたかもしれません。まあ最後は純愛物語として終りましたが・・・。

ドラキュラの嫌がるものは、十字架と聖水とニンニクがお決まり。この芝居で、ニンニクは出て来ませんが、十字架と聖水は大きな役割をはたします。
聖水2杯でひっくり返ったり、檻に入れられたり、あまりにも弱いドラクルでドラキュラ好きには物足りなさもあります。しかし人間的に悩む吸血鬼を描くことで芝居に奥行きが出たかもしれません。

それから窓から突き落とされて死んだはずの医者のガミュギル役の渡辺哲さん、舞台の奥へ走って行くのが客席から丸見えでしたよ。あまりはっきり見えたので生き返った設定なのかと思いました。

それにしても舞台には難しいと思われる題材を上手く消化し、シアターコクーンという大舞台でもさらっとこなしてしまう、32歳の若い演出家長塚圭史の才能に改めて感嘆しました。

また出演者が重なっているせいもあるのでしょうが、「ロープ」(宮沢りえ・明星真由美出演)や「ひばり」(山崎一出演)を思い出すところもあり楽しい芝居でした。