酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『中国の不思議な役人』

2009-09-23 22:25:23 | 演劇
「中国の不思議な役人」パルコ劇場(渋谷)
作:寺山修司、演出:白井晃、出演:平幹二朗・秋山菜津子・岩松了ほか
   
寺山修司と言えば、アングラ・小劇場とすぐ結びつけてしまう。しかしこの「中国の不思議な役人」は、1977年にパルコ(当時は西武劇場)で演じるために書かれたものだそうだ。
メジャーな舞台を意識した寺山脚本に加えて、心やさしい(私が勝手に思っているのだが)白井晃の演出となればソフトな雰囲気になるのは当然か。白井自身もアフタートークの中で、エロ、暴力などを含む過激さに、お客が退いてしまわないように心がけたと話していたが・・。

1920年代の上海の裏街で道に迷った兄妹。その妹花姚(夏未エレナ)は誘拐され、娼館に売られてしまう。少女をみそめたのが、何百年も生きてきた主人公の中国の不思議な役人(平幹二朗)。少女の純粋な愛を得てはじめて死の時を迎える。少女から娼婦となった花姚は純粋さに加え、役人が死ぬことがわかっていながら愛の言葉を語り続ける残酷さも合わせ持つ。

主演の平幹二朗は圧倒的な存在感を見せ、女将校役の秋山菜津子もメリハリの効いたセリフで舞台を引き締める。初舞台という夏未エレナは純粋さとしたたかさをもつ少女を好演。
それに反しいつもの精彩がなかったのが、西瓜男役の岩松了。初演の若松武のキャラクターと違うとぼけた味わいで、寺山の過激さを和らげる緩衝剤として期待されていたはずなのに元気がなかった。
またパントマイム、舞踏家、ソプラノ歌手などのスペシャリストが出ていたが、集団の演技としては物足りない部分もあった。音楽も芝居を生かすにはもう少し音量を下げてもよかったのではないか。

不満な点もあるが、寺山のアウトロー的な刺激と商業演劇とが、ほど良く折り合った作品と言えるだろう。その分幻想的なおとぎ話風の舞台になったことはいなめないが。

『ザ・ダイバー』

2009-09-11 11:48:45 | 演劇
「ザ・ダイバー」 東京芸術劇場(池袋)小ホール1 

「ザ・ダイバー」は元々野田秀樹がイギリスで上演のために書いた作品。その英語版は昨年日本でも上演された。
今回はその日本バージョン。出演は野田秀樹、大竹しのぶ、渡辺いっけい、北村有起哉。

大竹が元カレの野田とどんな演技を見せるか、ミーハー的興味もある舞台。

不倫相手の子供二人を放火で殺してしまう女ユミ(大竹)。精神科医(野田)は多重人格の症状を示す女から、事件の真相を聞きだそうとするのだが・・。
陰の女が正妻へ怨みを抱く話自体は珍しくないが、能の「海人」や「源氏物語」を絡めるところが、野田の卓越したところ。

英語版ではその色づけが上手くいったとは思えないが、日本版では見事にはまっている。例えば「源氏物語」から引用されるセリフの数々が耳に心地よいのだ。

大竹しのぶは多重人格を無理なく演じ分け、英語版のストイックなキャサリン・ハンターとは違うユミを演じる。野田秀樹も押さえた演技で存在感をしめし、北村有起哉の源氏の演技もはまっている。渡辺いっけいはもう少し力を抜いて演じた方が笑いをとれたのではないだろうか。

ともかく英語版では言葉の壁でわかりにくかった部分もすんなり入れ、面白く見ることができた。