パルコ・プロデュース公演(PARCO劇場)
「三谷版 桜の園」
作:アントン・チェーホフ、翻案・演出:三谷幸喜、出演:浅丘ルリ子・、市川しんぺー・神野三鈴・大和田美帆・藤井隆・青木さやか・藤木孝
正直に言えば、今まで私の見た三谷幸喜の中では、多分最低水準の作品だと思う。
まず三谷作品に感じるいつもの切れ味がない。じんわり訴えてくる情感もない。
これが本当に三谷作品?と言うほど平凡である。はじめて取り組んだ翻訳劇。チェーホフという大作家の呪縛を打ち破れなかったというのが正直なところだろうか。
時代の大きな流れについてゆけず、没落するロシアの大地主階級の悲哀。自宅の屋敷も桜の園も競売にかけられ手放すこととなり、家族や従業員はそれぞれ新しい生活を求めて旅立っていく。悲しい中に少しの希望も感じさせる。
今まで悲劇的に扱われてきたこの作品を三谷は喜劇として演出したという。意図は面白いが、成功しているとは言えない。喜劇へのこだわりが、この作品が本来持つ情感までこわしてしまったように思える。
配役も浅丘ルリ子(ラネ-フスカヤ)、藤木孝(ガーエフ)、藤井隆(トロフィーモフ)など、いかにもという役者さんが割り当てられているのだが、喜劇という意識が邪魔をしたのか演技がどこかしっくりしない。
唯一この芝居を面白く見るには、三谷が原作をどう読み、どんな形で舞台に表現したかを緻密に検証して、マニアックな目で見るしか方法はなさそうだ。
ともかく三谷フアンとしては寂しい出来としか言いようがないのが残念。
東京公演は7月8日(日)まで