酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『マシーン日記』

2013-03-28 23:19:38 | 演劇


『マシーン日記』於:東京芸術劇場シアターイースト

作・演出=松尾スズキ
出演=鈴木杏/少路勇介/オクイシュージ/峯村リエ

キャッチフレーズは「あたし、あんたのマシーンになる。愛がベルトコンベアを動かし、憎しみがスイッチを入れる。松尾スズキが描く、恋愛カタストロフィの決定版」

登場人物は4人。脳天気だが暴力的な町工場の社長のアキトシ(オクイシュージ)、兄嫁に手を出し社長から部屋に鎖で繋がれている弟・ミチオ(少路勇介)、二人の間でおどおど生きる兄嫁のサチコ(鈴木杏)。そこへパートとして一人の女・ケイコ(峯村リエ)が入って来る。その女は兄嫁の中学校の体育教師であった。今までの三人の関係は崩れて、新たな関係が生まれようとするのだが・・・。

殺人、傷害、放火、恋愛など場面それぞれは非常に明確であるのだが、人物の心情をはじめ根底に流れるものは非常にあいまいである。
物事を理屈で割り切ろうとしない、作・演出の松尾スズキの独自性で面白いところである。

俳優では、最後は弟の言う通り動くマシーンになるケイコの峯村リエが痛快。
鈴木杏、少路勇介も好演。ただアキトシ役のオクイシュージが笑いの部分で、観客とのずれが気になった。

東京公演は3月31日まで。あと新潟と北九州で公演し、パリに行くとのこと。場所はパリ日本文化会館というから日本人が中心かもしれないが、パリの人たちに松尾スズキの感覚がうまく伝わるかちょっと心配。


ドラマ『ビブリア古書堂の事件手帖 』・『夜行観覧車』

2013-03-26 22:53:57 | テレビ


見ていた連ドラ「ビブリア古書堂の事件手帖(三上延原作)」、「夜行観覧車(湊かなえ原作)」の二本が終りました。

「夜行観覧車」は湊かなえ小説の特徴である不安感が、根底にずっと流れ飽きさせませんでした。最後の甘い終わり方はテレビドラマとしてはやむをえないのでしょう。

「ビブリア古書堂の事件手帖」はどろどろした最近の風潮と離れた別次元の物語で、気持ちよく見られました。
最終回はフジの月9としては最低の視聴率8.1%で、平均でも11・3%と一般的な評価は低いようですが、私には凄くいいドラマでした。
びっくりしたのは古書店主篠川栞子役を演じた剛力彩芽の感情表現の多様さ。カメラワークのうまさも手伝って特筆ものでした。これから期待の女優さんです。脇のAKIRAや高橋克実も安定感がありました。
毎週楽しみにしていたので、終わったのは残念ですが、是非続編を期待したいドラマです。

『城』

2013-03-18 23:21:45 | 演劇


「城」  於:池袋 あうるすぽっと
原作:フランツ・カフカ、構成・演出:松本修
出演:笠木誠、小嶋尚樹、宮島健、藤井びん、金井良信、榎本純朗、佐藤亮介、石井ひとみ、山田美佳、西田薫他

MODEの「城」を見た。席は最前列のセンターでラッキーと思ったが、机やベッドなどの小道具で舞台奥の演技が見えないし、カフカの言葉を表示するボードが隠れるなど見にくかったのが残念。

測量士としてして仕事を頼まれたK(笠木誠)は、長い道のりを歩き、夜おそく雪深く霧に覆われた村に着いたのだが、村はKを素直には受け入れてくれなかった。
村人達に聞いても訪ねるべき「城」の所在はあいまいで、いつまでたっても辿り着けない。正しい情報を求めているうちに・・・。

松本修演出のカフカ作の芝居を見るのは、「失踪者」「審判」「変身」に次ぎ4本目だが今回の芝居が一番わかりにくかった。
ボードに出るカフカの言葉も芝居とうまく結びつかず頭の中は???。原作を先に読んだほうが良かったかもしれない。


城の人間と村人とそして村から疎外されている一家との狭間で、苦闘するK。
カフカは体制批判を意図しているようだが、それがストレートには伝わってこない。
またMODE独特の振り付けのダンスは非常に面白いのだが、芝居の流れからは、もう少し短い方がいいのではないか。

2005年の初演で第13回読売演劇大賞優秀作品賞、同優秀演出家賞を受賞した作品で期待したが、過去に見たカフカ芝居の方が良かった気がする。ただ最後の評価は原作を読んでからにしたい。  公演は3月20日(水)まで

『あの女』 

2013-03-04 23:39:15 | 演劇


「あの女」  猫のホテル公演  於:スズナリ
作:千葉雅子  演出:ノゾエ征爾  出演:中村まこと・森田ガンツ・市川しんぺー

最終日の昼に見た。

結婚詐欺で連続殺人をはたらいた「あかぎたまえ」という女をめぐる3人の男の物語。女は刑が確定し10年以上前に死刑になっているのだが、女にかかわった告訴人(殺されなかった被害者・中村まこと)、検事(市川しんぺー)、弁護人(森田ガンツ)はまだそれぞれに女の影をひきずっている。

被害者の男は女に殺されそうになったのに、なお女への思いが捨てられず、検事は女の太ももにフォークを刺してしまったことがトラウマで、痴ほう症になっている。弁護人は女の事件にまだ見えてない部分があるのを嗅ぎつけ、二人から当時の状況を聞き出し、本を書いて出版社に売り込もうとしている。

三人のセリフから女の実像が浮かぶというのが原作者の狙いだと思うのだが、「真心」という言葉が印象に残る以外は今一つ見えてこない。
どたばた喜劇なのか、推理小説風なのか、シリアス芝居なのかが、あいまいなまま進行している印象。

中村まことのよく通る声と目の演技が印象的。影をつかった背景の舞台装置も美しい。

読書三昧(25年2月)

2013-03-02 12:37:47 | BOOK


読書三昧(25年2月)

病気になってから一番の楽しみは、ベッドに寝転がって好きな本を読むこと。読み疲れてのうたたねも気持ちいい。もっと大切なことがありそうな気もするが、今のところはこのままで・・・。

2月に読んだ本

シェイクスピア 『オセロ』
東川篤哉 『放課後はミステリーとともに』
三上延 『ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~』
榎本まみ 『督促OL修業日記』
横関 大 『再会』
曹 達 『外道』

東川篤哉『放課後はミステリーとともに』
この作者の作品は、前に2011年に本屋大賞を受賞した大ベストセラー『謎解きはディナーのあとで』を読んだ。お嬢様警官と執事の会話は面白いのだが、謎解きの内容には今一つのれずに不満が残った。ところがこの『放課後はミステリーとともに』は男の子みたいな名前を持つ女子高生「霧ヶ峰涼」の活躍がのびのびしていて楽しい。推理自体は納得できるのも出来ないのもあるものの、小説としての痛快さは『謎解きはディナーのあとで』を間違いなく上回っている。

他に江戸川乱歩賞受賞の横関大の『再会』。推理小説としての面白さはもちろんだが、登場人物の男3人、女1人の幼友達の信頼関係が、お互い疑心暗鬼の状況になっても最後まで崩れず、読後感が爽やかであるのが良い。