酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

読書三昧(28年5月)

2016-05-31 18:27:20 | BOOK


読書三昧(28年5月)

抗がん剤のせいだと思うが、相変わらずお腹の具合が悪い。外出しても落ち着かない。でも外へ出られるだけでも喜ぶことなのかもしれない。散歩でいろいろな花を見られるのがうれしい。


5月に読んだ本

西尾維新『掟上今日子の遺言書』
小川洋子『いつも彼らはどこかに』
ストリンドベリ『夢の扉』
柳広司『象は忘れない』
相場英雄『ガラパゴス』
滝口悠生『死んでいない者』
大輪靖宏『なぜ芭蕉は至高の俳人なのか』
片山壹晴 随想句集『嘴野記』


☆西尾維新『掟上今日子の遺言書』
退屈だ、まだるっこいと言いながらまた読んでいる「掟上今日子シリーズ」。これで3作目。すっかり作者に取り込まれてしまったようだ。

☆小川洋子『いつも彼らはどこかに』
文庫本で短篇8篇からなる。題の「彼らは」はそれぞれの作品に登場する小動物などを指しているようだ。
どの作品も西洋のおとぎ話を読んでいるような感覚がある。終わってもまだまだ続いていくような不思議な読後感もあり、からっとしているが、死の匂いもある。ともかく他にない個性を持った作者で、こういうのを珠玉の短編というのかもしれない。
私はこの作者の有名な『博士の数式』も『ことり』も読んだことがないので、普段どんな小説を書いているか知らないのだが、実力ある作家であることは私でもわかる。

☆ストリンドベリ『夢の扉』
先月KAAT神奈川芸術劇場で見た芝居『夢の劇-ドリーム・プレイ』の原作脚本。芝居が今一つ理解できないので読んでみた。神の娘が人間界に降りて知る、悲しみと嫉妬に満ちた貧しい世界。この辺まではわかるのだが、作者の観客への意図をどう受け取ったらいいのか、すべてが夢だとすると誰の夢なのかなど本を読んでも今一つ不明。宗教への乏しい理解、翻訳劇であることなどでの限界か。

☆柳広司『象は忘れない』
福島の原発事故後に著者の目にした様々な出来事を、能楽のシチュエーションを借りて書いた短編小説五篇からなる。今の病んでいる日本の怖さが浮かんでくる注目すべき作品。日本人でいるのが、いやになりそうだ。

☆相場英雄『ガラパゴス』
単行本で上下二巻。かなりの長編であるが面白くて一気に読んだ。経済小説と警察小説がミックスされた感じ。自動車・家電・携帯業界の日本でのガラパゴス化や派遣労働者の劣悪な雇用条件問題に、宮古島出身の正義感の強い青年の殺人事件がからまる。捜査に関わる主人公二人の刑事より、はみだし刑事の鳥居と派遣会社女性秘書高見沢のキャラが面白い。

☆滝口悠生『死んでいない者』
第154回芥川賞受賞作品。祖父の死に集った子や孫などの縁者たち。通夜と葬式の間のそれぞれの行動や心情が描かれる。そこには日常とは違った世界があり、それが独特の文体で表現されている。ゆったりした文体が雰囲気をだすのに効果をあげており、上手な小説だとは思うが、私には引き込まれるほどの魅力は感じなかった。

☆大輪靖宏『なぜ芭蕉は至高の俳人なのか』
芭蕉を中心に、発生から蕪村の時代まで、俳諧の歴史を解き明かす。こうした形の本は単調で面白くないのが普通だが、この本はわかりやすく楽しい。筆者の芭蕉に対する考え方にブレがないこと、例句の解説が明快であることなどがその理由だろう。俳句をやっている人にはどなたにもおすすめできる好著。題名がもうすこしやわらかいといいのに。

☆片山壹晴 随想句集『嘴野記』
ページの上段に俳句、下段に随筆を載せた随想句集。示唆に富んだ随想に読み応えあり。
叱責し気まずきままに新茶飲む
自転車に乗れたと自慢の柏餅
片付けは死後の重荷の彼岸かな





『太陽』

2016-05-29 15:40:35 | 演劇



『太陽』  劇団 イキウメ   (於)シアタートラム

【作・演出】前川知大
【出演】浜田信也・安井順平・伊勢佳世・盛隆二・岩本幸子・森下創・大窪人衛・清水葉月・中村まこと

イキウメの『太陽』を見た。2011年の再演であるが、私は今回が初めて。

夜しか生きられないが肉体はいつまでも若く国を支配している進化した人類「ノクス」と、太陽の下でも生きられるが支配されている旧人類「キュリオ」の物語。
「キュリオ」の選ばれた者は、注射と血で「ノクス」へと転換することも可能である。「キュリオ」の若者は「ノクス」になりたいもの、躊躇するものいろいろであるがそれぞれ深い悩みを抱えている。生きる上で何が本当に幸せなのか。

SFであるとともに現代への警鐘ともとれる内容になっている。

「イキウメ」にしてはこの作品はシリアス。私はもう少し軽い作品の方が好みだが、といっても前川作品には心に響く何かがある。

俳優陣では清水葉月に注目。キュリオからノクスへの転換が見事。また浜田信也がノクスの見張り番としていい味を見せている。いつもは目立っている安井順平だが今回は役が真面目な医師役で魅力が十分出ているとは言い難い。


この芝居を見ながら私は昔読んだ小説でアン・ライスの何冊かのヴァンパイアシリーズのことを思い出した。内容は殆ど忘れているのだが、どこかに似たような雰囲気があったような・・・。

公演は2016/05/29(日)まで。
同じ原作の映画『太陽』が神木隆之介・門脇麦主演で現在上映中。

『かわいい花』

2016-05-20 18:59:30 | 風景
やっと午後から体調少し回復。散歩に出かけました。
道端に紅がかわいい小さな花が・・・何の花でしよう。
ちょっとピンぼけ写真ですが。



帰りにスーパーで「さくらんぼ」を。
今年初めて食べました。やはり花より・・・。
 

演出家の死

2016-05-14 10:11:18 | 演劇
蜷川幸雄さんが亡くなった。

私は小劇場派だったので、蜷川芝居を見はじめたのは、ずっと後のこと。たぶん日生劇場の藤原竜也・鈴木杏の『ロミオとジュリエット』か。

それからいろいろ見たけど、一番面白かったのは井上ひさし作、蜷川演出、宇崎竜童音楽で、演技陣もそろっていた『天保十二年のシェイクスピア』かな。

ご冥福お祈りします

『国宝 燕子花図屏風―歌をまとう絵の系譜―』

2016-05-06 00:01:31 | 美術



『国宝 燕子花図屏風―歌をまとう絵の系譜―』

昨日は5月5日・こどもの日。地下鉄表参道駅下車徒歩8分の根津美術館に行って来ました。
メインは尾形光琳筆の国宝『燕子花図屏風』。

混雑を覚悟していたのですが、お昼過ぎの到着時には待ち時間なしで入れてラッキー。
展示もゆっくり見ることができました。
テレビで何度もやっていた『若冲展』の方に人気を取られたのかも。

『燕子花図屏風』以外にも線と色のきれいな『源氏物語画帖』、解説がさばさばして面白い『伊勢物語絵巻』など興味深いものがあります。
また別室展示で、個人から寄贈されたという白磁の小品など「藤崎コレクションのやきもの」も魅力的でした。

美術館の中にはお庭もあり、写真のように燕子花も満開。




天気も良く、美術が見られ、燕子花の最盛期とこれだけそろえば贅沢なもの。またとない優雅な一日でした。

展示は5月15日(日)まで。ただお庭の燕子花の見頃はもうしばらくの間かも。お急ぎ下さい。

読書三昧(28年4月)

2016-05-01 17:35:49 | BOOK



読書三昧(28年4月)

先日の診察は代診の若い先生だった。パソコンの私のデータを見たとたん、えっ!こんなに何回も抗がん剤やっているのですか・・・とびっくりされてしまった。
怖くて聞けなかったけれど、どういう意味なんだろう???

4月に読んだ本

黒名ひろみ『温泉妖精』
本谷有希子『異類婚姻譚』
西尾維新『掟上今日子の備忘録』
黒川博行『勁草』
ジャンボール・絹子『俳諧師園女の生涯』

☆黒名ひろみ『温泉妖精』
2015年すばる文学賞受賞作。
「細かいことはどうでもいいや」と思わせてくれる小説。整形を続け今は外人を粧う20代の主人公、つぶれかけた旅館のおかみ、お金持ちでマニアックな中年男の三人が東北の旅館で出会う。登場人物の関係はちぐはぐだけれど、どこかで許し合っているのが、読後感のいい理由だろう。好みは分かれるかもしれないがお薦め。

☆本谷有希子『異類婚姻譚』
今年の芥川賞受賞作品。面白いといえば面白いが、そうでないと言えばそうでない。この感性に合う人は、はまるだろうが。
私はこの著者を10年ぐらい前「劇団、本谷有希子」の方でまず知った。作・演出の芝居はエネルギーにあふれ、毒があり面白かった。今回の小説にも怖さはあるのだが、どこかソフト。心の内面に向かっているような内容は、一女をもうけた作者の生活の変化と関係あるのかもしれない。単行本では他に短篇3編を収録。

☆西尾維新『掟上今日子の備忘録』
2月に読んだ『掟上今日子の推薦文』より前の作品で、これが「忘却探偵シリーズ」の最初の作品のようだ。なんとなくくどい文体、もう一つすっきりしない推理。読みながらもやもや状態が続く。しかし前回もそうだったが、このもやもやは、ラストの3行ぐらいの微笑ましさで解消させられてしまう。不思議な作家である。

☆黒川博行『勁草』
2年位前に読んだ『破門』ほどではないが、この作者はやはり面白い。
オレオレ詐欺に関わっていた橋岡と矢代の二人、ある時殺人まで犯して多額の預金通帳を手に入れたのだが、いつか刑事達に追われる身に・・・。
オレオレ詐欺の内幕や預金の払出に苦戦する銀行とのやりとりに切迫感があり、大阪弁もいいアクセントになっていて飽きさせない。

☆ジャンボール・絹子『俳諧師園女の生涯』
園女亭で詠まれた芭蕉の「白菊の目にたてゝみる塵もなし」という発句は有名であるが、俳人園女の生涯は余り知られていなかった。幅広い資料を丹念に読み解きそれを解明しようとするもの。はっきりとした結論までには至っていないが、園女研究のためには貴重な一書である。