酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『グッドナイトスリープタイト』

2008-12-26 19:39:13 | 演劇
『グッドナイトスリープタイト』 パルコ・プロデュース公演
 作・演出:三谷幸喜  出演:中井貴一・戸田恵子

私はどんな喜劇でも、ほとんど笑わない方だが、三谷幸喜にだけは笑わされてしまう。誰にでもある身近なネタで、一度笑わせておいて、波状攻撃のように次の笑いをかぶせてくる。二度目は不意をつかれて三谷の術中にはまってしまうというわけだ。

今回の二人芝居『グッドナイトスリープタイト』はこの笑いに、ほろにがさも加わった上質の喜劇に仕上がっている。
仲良くしているのだが、お互い手前勝手で相手としっかり向き合っていない夫婦(中井貴一と戸田恵子)。
この夫婦の新婚から離婚までを、時を行き来させてしんみりかつ楽しく描いている。
二つのベッドの距離を変えることで、その時の親密度が、観客にもわかるようになっている。
最後はお互いを思いつつ別れていくが、観客も自分のことのように感情移入してしまう。

前回の『コンフィダント・絆』ほどのインパクトはないが、三谷幸喜の変わらないうまさをあらためて感じさせる舞台に仕上がった。
おすすめだが、東京は12月28日(日)が千秋楽。

『舞台は夢』

2008-12-17 19:34:40 | 演劇
『舞台は夢 イリュージョン・コミック』新国立劇場 中劇場
 演出:鵜山仁 出演:堤真一、秋山菜津子、段田安則、高田聖子他

読んだことも見たこともないのに、受験勉強で覚えただけのフランス三大劇作家、ラシーヌ・モリエール・コルネイユ。そのうちのコルネイユの芝居を、新国立劇場で見て来ました。

恋について、死について、父と娘の関係について、果ては本妻と愛人についてまで、コルネイユは含蓄ある言葉をセリフに散りばめています。
鵜山仁の演出も歯切れよく、洒落た感じの仕上がりです。

身分の低い主人公の「禍福はあざなえる縄の如し」を地でいくような、波乱万丈の人生。最後のどんでん返しまで、なかなか楽しい芝居でした。

俳優では劇団☆新感線の高田聖子が自在な演技で笑わせ、秋山菜津子も風格を感じさせる出来。堤真一がちょっと元気がないかなと感じましたが、段田安則のパワーがそれを補っています。

まだ席は空いているみたい。おすすめですよ。12月23日まで


「夜会」VOL-15~「夜物語~元祖・今晩屋」

2008-12-15 20:11:16 | 演劇
中島みゆきの「夜会」VOL-15~「夜物語~元祖・今晩屋」 赤坂ACTシアター

中島みゆきの舞台は、今回が初めて。抽選が当たったのでという軽い気持ちで見に行ったのだったが・・・。

ともかく一人の歌手の力が、これほど圧倒的なものかと気づかされることとなった。
一応芝居仕立てになっているが、なんか学芸会みたいだし、筋も中島みゆきの頭に浮かんだイメージをそのまま脚本にした感じで、しっかりした筋があるわけでもない。それでも中島みゆきの歌が入ると一転する。
表現の言葉を失うほどすごいのである。気持ちよくなって、ずっとずっとこの歌を聞き続けていたいという気分になってくる。
とにかく参ったとしか言いようがない。


『ハッピー・フライト』

2008-12-12 22:07:55 | 映画
監督は「ウォーターボーイズ」や「スウイングガールズ」の矢口史靖。
出演は田辺誠一・時任三郎・綾瀬はるか・吹石一恵・寺島しのぶ他
 
この映画の『ハッピー・フライト』というタイトルになんか違和感あるんだけど・・・。
ハワイに行くつもりで出発したのに、故障で羽田(成田ではない)へUターンしてくる話。客からみれば、墜落しなくて、無事に戻っただけ。これ「ハッピー・フライト」なの??
まあ、まともに考える方が頭が硬いのかも(笑)

飛行機の運航に関わる人々の喜怒哀楽を、軽いタッチでうまく描いている。本当に飛行機に乗っている気分で、ハラハラさせられる。
ただ、飛行機のメカや運航システムを正確に描くことに力を注いだ分、人間ドラマの印象が薄れたのは否めない。
同じ監督の「スイングガールズ」ほど楽しくないのはその辺だろう。

テレビなどでの宣伝では大活躍の綾瀬はるか(新人キャビンアテンダント役)の出番は、期待ほど大きくない。かえって地上職役の田畑智子や平岩紙がとぼけた役どころをうまく演じている。
他ではベテラン機長の時任三郎がかっこよくきめている。

『黒猫』

2008-12-09 13:46:14 | 演劇
『黒猫』  作・演出:奥秀太郎。
初台の新国立劇場の小劇場で、千秋楽を見た。

舞台の上はテーブルと四脚の椅子だけ。机の上には眼鏡が一つ。他の電灯や本箱、窓、時計それに二階の窓のところに黒猫がいるが、すべて映像による。
野田秀樹の「THE BEE」で映像を担当した奥秀太郎の演出らしいスタート。
映像は舞台の進展にともない街や工場などにどんどん変化。列車も走る。

エドガー・アラン・ポー原作『黒猫』をアレンジし、日本に舞台を置き換えたもの。工業都市の廃虚ともみえる団地に住む真知子を中心に話は進む。

真知子役は藤谷文子。生き生きした時の表情は目が輝いてすごく魅力的なのだが、けだるい時の演技が素人っぽく見え落差が激しい。本人はその時々の気分の変化をつけているつもりだろうが、うまくいっていない。男出入りが多く、同僚の子供を殺してしまうような女にしては、妖しさや激しさが不足で、行動がいま一つ説得力に欠ける。

手塚とおるは廃虚の写真家で死体が塗り込められた壁のことを証言するのだが、それまでの登場理由があいまい。個性的な役者さんなので、真知子を愛する六という刑事(戸田昌宏)ともっとからませば面白かったのでは。

話の筋に物足りなさはあるが、映像や音楽が効果的に使われ刺激的な舞台には仕上がっている。

奥は「残酷で絶望的、悲惨で救いようのない物語を作りたい」と言うが、何度も登場する宅急便の配達は、最近の殺人事件が思われて違う意味で不気味だ。


「セザンヌ主義」

2008-12-01 19:19:28 | 美術館
「横浜美術館」に出かけた。ランドマークをはじめ近代的な高いビルに囲まれたところだが、隣の空き地に芒がいっぱい生えていたりして、そのギャップが面白い。

美術館は「セザンヌ主義」と題した企画展示。セザンヌの作品を中心に、セザンヌから影響を受けた画家達の作品を集めている。半分くらい日本の有名画家たちの作品も混じる。
「横浜美術館」の展示には、今まで何度か建物の立派さに比べ物足りなさを感じてきたが、今回は充実している。
私の好きな作品はガルダンヌの村を描いたセザンヌの風景画「ガルダンヌ」。他にセザンヌの「オーヴェール」、モディリアーニの「少女の肖像」などにひかれた。

帰りに同館の「片岡球子の特別展示」を覗いたが、浮世絵師を描いたダイナミックな人物像や風景画の色彩に圧倒された。セザンヌを上回る迫力でこちらもお勧め。

「セザンヌ主義」は来年1月25日まで