酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『藪原検校』

2007-05-26 12:58:48 | 演劇
5月23日(水)シアターコクーン。
作 井上ひさし 演出 蜷川幸雄 音楽 宇崎竜童

盲の杉の市(古田新太)が悪辣な手段で金を手に入れ、その金で座頭から検校(盲人社会で一番えらい階級)にのしあがってゆく一代記。

井上ひさし作らしいエロ満載の舞台である。性のおおらかさは江戸庶民のエネルギーでもあったのだろう。
同じ井上ひさし作・蜷川幸雄演出・宇崎竜童音楽『天保12年のシェークスピア』よりは小粒の感じ。ただ軽い分、肩を張らずに楽しめる。

杉の市の悪も主演の古田新太の雰囲気から、どこか憎めない。悪事を重ね、実力者に取り入り、とうとう二代目藪原検校になるところまでいく。しかし寸前に、悪事がバレて処刑されてしまう。

最後の処刑のシーンが見所なのだが、事前に流れが予想が出来るため、これが上手くいくかどうかはらはら。見事に成功で、ほっ~!
ただこの処刑、盲目の塙保己市(段田安則)が視覚に訴える残酷な刑を進言することに違和感を感じたのだが、この原案は下敷きの講談本「藪原検校」にあるのかも。

主演の古田新太のくるくる変わる顔の表情は本当に面白い。好感度も急上昇。
早物語でもう少し声がとおれば最高だったのに。
田中裕子はセリフのハギレもよく、存在感抜群。
少し痩せた感じの段田安則は手堅い演技、梅沢昌代は余裕の舞台で弾けている。

時代を追って語り手役盲太夫(壌晴彦)が解説をしながらの舞台なので、ぶつぎりの感じはあったが、あっというまに時間の過ぎたのは面白かったことの証明である。

席の数列前に堤真一がいた。みんなからの視線を浴びて落ち着かない雰囲気だった。


「血の婚礼」

2007-05-12 21:09:49 | 演劇
「血の婚礼」東京グローブ座 
 演出 白井 晃  出演 森山未來・ソニン・浅見レイナ・江波杏子 

焼けつくようなスペインアンダルシア地方。土地の因習の中に生きる人々。結婚を決めたのに、元の恋人(レオナルド)が忘れられない花嫁。レオナルドは花婿の父と兄を殺した一族の人間であった。

スペインの作家ロルカの描く骨太な世界を、演出家白井晃は、ギターの生演奏や激しいフラメンコで演出してみせる。

最後は殺し合うしか能のない男達。残された女はそれでもたくましく生きる。
女性たちをどれだけたくましく描けるかがこの芝居のポイントだと思うが、多少ゆるい。

例えば山場のレオナルド(森山未來)と花嫁(ソニン)の逃避行のシーン。なんどもはげしく抱き合うのだが、逃げ道のない切迫感が伝わってこない。
ソニンがもつ可愛らしい雰囲気や森山未來の世をすねたような演技がここではマイナスに働いた。

血の色で終る最後のシーンも今ひとつインパクト不足。
愛するものすべてを失った花嫁(ソニン)がどう生きようとしているかを、はっきり示せば、もっと印象の強い舞台になったのではないか。

花嫁の父親役の陰山泰や花嫁の女中役の池谷のぶえの演技には安定感があり、好感が持てた。黒い男役の新納慎也の踊りが印象的。


『團菊祭五月大歌舞伎 』

2007-05-11 01:06:54 | 演劇
歌舞伎座 昼の部

「泥棒と若殿」
最近小泉元首相が見て、泣いたと新聞に出ていた作品。
荒れ御殿に幽閉の身の若殿(松平成信)が、忍んできた泥棒(伝九郎)と一緒に暮らすようになる。気心が知れ離れがたくなった時、若殿は城に戻ることに。
二人の出会いの笑いと、別れの悲しみ。
山本周五郎らしいしみじみした作品で、若殿役三津五郎も押さえた演技で好演。
良くできた作品だが、いかにもという泣かせどころは、私の好みではない。

「勧進帳」
パリでも演じたばかりの市川団十郎が弁慶役。大病をした人とは思えない熱演である。ただパリオペラ座の観客がどう見たのかばかりが気になって、集中できなかったのが残念。

「与話情浮名横櫛」
新しい恋人発覚で話題の市川海老蔵が主役で、切られ与三郎を演じている。
前半、お富さん(菊之助)との出会いの場面の若旦那与三郎はすごく楽しそうに演じて良かったが、悪になってからはちょっとセリフを軽く扱いすぎか。
パリ帰りの海老蔵なりの新しい与三郎への挑戦なのだろうが、空回りの感じがした。
ただ芝居としては面白かった。