「クリプトグラム」 於:シアタートラム
原作=デイヴィッド・マメット 翻訳・演出=小川絵梨子
出演: 谷原章介、安田成美/坂口湧久・山田瑛瑠(Wキャスト)
チラシには次のように書いてある。
『登場人物は、三人。ドニー、デル、そしてジョン。
三人の関係が、単純な言葉の応酬から、思わぬ展開をみせてゆく。
ミステリアスな展開で、見る者を引きつけてやまない
アメリカを代表する劇作家・映画脚本家デイヴィッド・マメット。
マメットが仕掛けた「暗号」とは……』
確かに短調のピアノ演奏や噛み合わない短いセリフの応酬は観客を不安にさせ、ミステリアスと言えなくもない。しかし作者マメットの仕掛けたという「暗号」は残念ながら私には見えてこない。
配役は妻ドニー役の安田成美、夫妻の友人デル役の谷原章介、そして夫妻の子供ジョンの子役。夫は重要な役割を果たすのだが舞台には登場しない。
それぞれが相手に質問を投げかけるのだが、殆どそれには答えないまま新たな質問を発する。どんな形で収斂するのかと思いきやそのまま流されてしまう。
小道具もナイフ・破れた毛布・古い写真など意味ありげに登場するのだが、ナイフがデルの嘘を暴く以外は、意味ありげだけで終わってしまう。
劇が終わった時、後ろのおばさんが「休憩なの?」と隣の人に聞いていたが、確かにこれから何が起こるのかと期待した者にはその終わり方も唐突であった。
翻訳劇のため意味合いが十分伝わってこないのかもしれないが、もやもやの残る舞台であった。
実はデイヴィッド・マメットの芝居は今回が二度目。『ライフ・イン・ザ・シアター』
という市村正親と藤原竜也の二人芝居を見たことがある。今回の芝居よりわかりやすかったが、正直余り面白くなかった記憶がある。
残念ながらマメットの期待する観客には永久になりえないかもしれない。
ちなみにデイヴィッド・マメットは「郵便配達は二度ベルを鳴らす」「アンタッチャブル」などの映画脚本を書いた作家である。
終わっていろいろ考えてみて、これは三人それぞれの、傷を抱えたままの自立の物語と私は解釈したのだが、的外れか。
(公演は明日11月24日で終了)