読書三昧(28年3月)
割合穏やかな1ケ月を過ごすことが出来た。外出もほどほど出来た分、本はあまり読めなかった。今年も桜が見られたのがうれしい。
3月に読んだ本
中島みゆき『問う女』
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
尾崎士郎『睡眠薬と覚醒剤』
藤野千夜『D菩薩峠漫研夏合宿』
野田秀樹 戯曲『逆鱗』
tupera tupera『おばけだじょ』
☆中島みゆき『問う女』
仕事も恋も世間ともうまくいかない、今はラジオ局に勤める綾瀬まりあ。怪しい店に勤めるタイ人メャオと知り合い、過去に自分が傷ついたと思っていたことが、相手を傷つけていたことを知る。この小説は事故でメャオを失う劇的なラストを迎えるのだが、まりあの心の葛藤はまだつづく。ここで描かれている主人公の心の葛藤は、多分大歌手中島みゆきの一面なのだろう。「夜会 VOL.8 問う女」を私は見ていないが、それをノベライズしたもの。筋はかなり荒っぽいが、演劇のシナリオ的なものとして読めば納得できる。
☆カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
日本生れの英国人作家カズオ・イシグロの最高傑作と言われる作品。つい先日まで、綾瀬はるか主演で放映されていたTBSテレビドラマの原作でもある。
臓器提供だけのために生れた子供たち。その中の一人で今は提供者の介護人をしている主人公の回想で小説はすすむ。育ったへ―ルシャムの施設での生活は恵まれたものだったが、その裏には隠された事情があった。主人公たちは次第にその事実へと近づいていくのだが・・・。
テレビドラマでは小説にはないドラマチックなエピソードがいくつか織り込まれていたが、小説の方は淡々とした感じで語られる。それでいながらテレビドラマ以上の迫力と重量感を感じるのは作家の力であろう。読み応えのある小説としてお薦め。
☆尾崎士郎『睡眠薬と覚醒剤』
坂口安吾の小説『肝臓先生』のモデル佐藤清一(十雨)関連で読んだもの。この小説では『腎臓先生』医師森遠として登場。
☆藤野千夜『D菩薩峠』
主人公は中高一貫の男子高の生徒で15才。「少佐」とか「姫」とかのあだ名で呼ばれるちょっと少女っぽい男の子。漫画研究部の夏合宿の思い出が甘酸っぱく描かれる。それも35年前の思い出。こういうのをボーイズラブの小説というのだろうか。当時話題になった漫画がふんだんに出てくる。どちらにも興味のない私は唯一主人公に手紙を書いたのは誰かというのが知りたくて最後まで読んだ。
☆野田秀樹 戯曲『逆鱗』
3月に東京芸術劇場で上演されたNODA・MAP 第20回公演 『逆鱗』の脚本。NODA・MAPの芝居は殆ど見に行っているのだけれど、今回はスケジュールが合わず断念。
それで新潮3月号を買って読んだが、生の舞台と違って中々頭にすんなり入ってこない。前半の言葉遊びは面白いが、登場人物が混乱して内容についていけず。やっと後半、野田さんの意図が徐々に明確に。前に見た「エッグ」と似かよったところもあるのかなと。
芝居を見た人から、舞台美術がすごく美しく最後は泣けたと聞いた。やはり舞台を見たかった。
☆tupera tupera『おばけだじょ』
たまには童心にかえって絵本など。これがシンプルだけど中々面白い。「だじょ」なんて言葉が保育園で、はやっているかも。