酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『現代能楽集V〈春独丸〉〈俊寛さん〉〈愛の鼓動〉』

2010-11-20 09:59:39 | 演劇
   

「現代能楽集V〈春独丸〉〈俊寛さん〉〈愛の鼓動〉」会場:シアタートラム

作:川村毅  演出:倉持裕  出演:久世星佳・岡本健一・ベンガル・西田尚美など

舞台は三話で構成。それぞれ能の謡曲〈弱法師〉〈俊寛〉〈綾の鼓〉から、想を起こして川村毅が創作したもの。

第一話は〈春独丸〉。育ての母に盲にされ捨てられた春独丸。人の心を読む能力で政治家にまで成り上がるが、結局、思いが断ちきれない母の元へ。母子の情愛のせつなさは伝わってくるのだが、春独丸の岡本健一が年齢不詳の雰囲気なのと、春独丸の最後のセリフ「母さんはここにいるんだね」がぴんとこないことが私には引っかかった。

二番目の〈俊寛さん〉は狂言の味付け。三人の流人が落ちこぼれのサラリーマンであったりするのが面白い。元々は俊寛一人が島に残される悲劇なのだが軽い喜劇仕立てになっている。

三番目の〈愛の鼓動〉は死刑執行人である男の物語。交通事故で意識の戻らない娘の父親でもある。女死刑囚との心の交流でつかの間のやすらぎを得るのだが・・・。ちょっと悲しく情感豊かな作品になっている。
女囚に娘の面影を見る父親をベンガルが好演。(でも東京乾電池時代の面白いベンガルも見てみたかったなぁ~)

演出の倉持裕は、独特の軽いタッチとホラーっぽさのまざりあった個性を存分に発揮、いい舞台になっている。

11月28日までだが、席は空いている様子。お勧め!


『タンゴ』

2010-11-17 18:54:09 | 演劇

「タンゴ」  シアターコクーン
演出:長塚圭史  原作:スワボミール・ムロジェック  出演:森山未来、秋山菜津子、吉田鋼太郎、奥村佳恵など

原作を読んだわけではないが、原作を十分消化出来てない感じがする。
元々は一つの家族を描きながら、権力闘争や革命など政治的社会的要素を色濃く持った作品のようである。だが芝居ではわがままな若者が、大騒ぎして自滅してゆくだけにしか見えない。ポーランド作家の作品で、論理的会話に翻訳がついていかないこともあるのかもしれない。

奔放な生活を送る両親(吉田鋼太郎・秋山菜津子)と祖母(片桐はいり)と伯父(辻萬長)そして母の愛人らしい小作人の男(橋本さとし)との共同生活。息子アルトゥル(森山未来)はその怠惰な生活を改めさせるため秩序を作ろうとする。手始めに従姉妹アラ(奥村佳恵)との結婚式を形式にしたがってとり行うことにするのだが・・・。

形式へのこだわりがいつか権力第一になっていく。ただこのあたりの主人公の心の動きがすっきり伝わってこない。酒を飲んで考えが急変するのもついていけないし、敵と味方の移り変わりもわかりにくい。

喜劇的な部分もあるのだが、吉田鋼太郎が裸でうろうろするのや、片桐はいりの誇張した動きが中心で笑いの質は低い。

演出の長塚が舞台をずっと見守る位置にいるのは、権力をあやつるフィクサー的なものを暗示しているのだろうか。
またラストシーンで、出演者が舞台を消えてから不協和音のタンゴ音楽が流れ続けるのは、心の不安感をあおる意図があったとしても長すぎた。

ともかくロンドン帰りの長塚の挑戦的な意図が、見事に空回りしたとしかいいようがない舞台である。

東京は11月24日(水)まで


『おじいちゃんは25歳』

2010-11-14 09:27:37 | 演劇
「おじいちゃんは25歳」

今日はTBSのテレビドラマ「おじいちゃんは25歳」の試写会に、有楽町の朝日ホールに行って来ました。

試写の前に主題歌「愛は勝つ」を歌った杏、監督の田中誠や出演者の藤原竜也・倉科カナ・入江甚儀・高橋克実が舞台に登場。
藤原は「くだらないシーンもいっぱいあるけど、面白いドラマに仕上がった」とPR。

続いて第一話と第二話の上映がありました。
46年前に山で遭難した栗原稔(藤原竜也)が、冷凍状態で発見され、25歳の若さのままで生き返る。その子の紀彦(高橋克実)はもう52歳で、手に負えない息子(大東俊介)と娘(倉科カナ)をかかえています。
若いおじいちゃんの存在にとまどいながらも、いつの間にか心をかよわせていく家族が描かれるようです。二話を見ただけですが、結構笑えて心も優しくなれそうなドラマです。

上映後藤原竜也が先に帰り、大阪で仕事だったという大東俊介が遅れて登場。主演の藤原竜也以上に若い女性の歓声と拍手を受けていました。


『図書館的人生VOL3食べもの連鎖~“食”についての短編集~』

2010-11-07 14:43:23 | 演劇
今日は東洋大学関連の話題。

全日本大学駅伝は途中まで優勝かと期待したが、後半じり貧で3位。楽しみは箱根まで待つことにしよう。



東洋大学出身の前川知大の主宰する「イキウメ」の舞台を見た。

「図書館的人生VOL3食べもの連鎖~“食”についての短編集~」 於:シアタートラム(三軒茶屋)
作・演出:前川知大  出演:浜田信也・伊勢佳世・板垣雄亮・安井順平等

四つの物語からなる。それぞれに長い題がついているが、前菜・魚料理・肉料理・デザートをイメージしている。
それぞれ独立した話ながら「食」というテーマと共通の登場人物を錯綜させることにより一つの物語を構成している。

中では魚料理に当たる第二話の万引のプロの話が面白い。万引にそれなりの理屈をつけて、万引仲間や懸賞マニアの同居の女を自分の枠に引き込もうとする畑山のセリフが傑作。演じる安井順平の巧みなセリフまわしによるところが大きい。

肉料理に当たる第三話は一番長い部分。人間の血を飲んで長生きする医師の話で、血を調達することや長生きすることの苦悩などを面白く描いているのだが、自称ドラキュラマニアから見ると常套的で、話に飛躍が足りない。

第四話のデザートの部分は、悲しいことにどういうオチなのか理解できなかった。テレビの料理番組で、料理研究家(血を飲んで生きている)がにんにく臭を嫌がっていること、出来上がった料理を試食するゲストがどんなものにでも結局はマヨネーズをかけてしまうマヨラーであることなどは理解できたのだが・・・・。

『おそるべき親たち』

2010-11-03 10:22:09 | 演劇

「おそるべき親たち」  東京芸術劇場小ホール(池袋)
原作:ジャン・コクトー  台本:木内宏昌  演出:熊林弘高   
出演:佐藤オリエ、中嶋しゅう、麻実れい、満島真之介、中嶋朋子
 
この戯曲の一番のポイントがどこにあるのか、見極めが難しい。復讐?家族崩壊?女主人の孤独?純愛?不倫?裏切り?それとも近親相姦?
少人数で狭い範囲の芝居だが、内容は盛りだくさん。

でもヨーロッパの芝居って、近親相姦多くない?ギリシャ演劇からの伝統かな。

今は没落した上流階級の女主人イヴォンヌ(麻実れい)は、夫ジョルジュ(中嶋しゅう)、すべての面で家族を支えている姉のレオ(佐藤オリエ)、そして息子ミシェル(満島真之介)、の四人暮らし。
イヴォンヌはミシェルを溺愛しているが、彼に少し年上のマドレーヌ(中嶋朋子)という恋人が出来たから大変。それも彼女がなんと父親ジョルジュの愛人であることがわかる。
息子を別れさすため両親とレオが一計を案じ、それが成功したように見えたのだが・・・。

レオには、妹イヴォンヌに許婚であったジョルジュを奪われた暗い過去がある。レオがイヴォンヌから息子も夫も奪い取る終盤の展開は、レオの復讐劇が成功したように見える。
だがイヴォンヌと息子との関係が単なる溺愛ではなかったことが明るみに出て・・・幕となる。

佐藤オリエと言えば、いまでも映画「若者たち」を思い出してしまう世代であることがちょっと悲しい。一見いい人に見えて何を考えているかわからない、怖~い姉を好演。
また麻実れいも没落してはいるが華やかさを残した女主人役で存在感を示す。
一人一人が個性をもった俳優たちだけに、重量感ある舞台に仕上がっている。

今日11月3日が千秋楽。