酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『怪談牡丹燈籠』

2007-10-23 16:35:54 | 演劇
歌舞伎座で『怪談牡丹燈籠』を見てきました。
噺家・三遊亭円朝作の怪談噺『牡丹燈籠』が芝居になったものだそうです。 

萩原新三郎(愛之助)と新三郎に焦がれ死にするお露(七之助)、亡霊と取引して金持ちになる伴蔵(仁左衛門)とお峰(玉三郎)、主人と女中を殺して逃げる宮野辺源次郎(錦之助)と主人の愛妾お国(吉弥)の三組の男女の物語。
お露は亡霊となり新三郎にとりつきます。大層な羽振りとなった伴蔵とお峰は伴蔵の浮気で夫婦関係が崩れ、源次郎とお国は物乞いと酌婦になっています。
三組が絡み合いながら破滅していく様子が描かれています。

玉三郎と仁左衛門、玉三郎と三津五郎の組み合わせ、すっかりゆとりも感じさせる七之助の女形など、一つ一つの幕にはそれぞれ見所があり、話もそれなりに面白いのです。
しかし残念なことに全体としてはまとまりがありません。暗転が多く、それも長いのが一つの原因だと思います。

もともと歌舞伎の持つ様式性に、いやに現代風の芝居がまじるのにも違和感があります。
加えてもとが円長の怪談噺であるのに怖くないのです。仁左衛門も玉三郎もインタビューで「怪談の怖さより人間の怖さを出したい」と言っています。しかしそれも怪談の怖さがあってこそ生きてくる話です。

なんとなくふに落ちないところもあります。
最初は火の玉が飛び、次には牡丹燈籠が飛び、最後は蛍が飛びと亡霊の登場を感じさせるものが、場面によって変わることが一つです。
二つ目は関係のない仲働のお六(歌女之丞)にお露の霊がとりつくこと。
三つ目は計画的に殺しておいて、伴蔵が未練がましくお峰の死骸にすがりつくラストシーンです。
演出の意図が今ひとつわかりずらいと思います。

まあ一緒に言った仲間のNは仁左衛門と玉三郎のからみで大笑い。それだけで十分満足のようでしたが・・・。

当日もう一つの出し物は三津五郎の踊り『奴道成寺』。
『京鹿子娘道成寺』を立役の踊りで見せようとしたものだそうですが、芝居の後だったのでちょっと他のこと考えてました。
大勢の小坊主役(所化と言うらしい)の若い役者達の顔がすごく小さいのです。歌舞伎役者はみんな顔が大きいと思っていたのですが。
次の世代の歌舞伎は印象が変わるかもしれませんね。

小説『俳風三麗花』

2007-10-11 00:24:39 | BOOK
小説『俳風三麗花』 著者三田完(文藝春秋)を読みました。

この小説は昭和7年7月の暮愁庵句会のシーンから始まります。俳句会に参加する若くて美しい三人の女性を主人公に、周りの人々との間におこる出来事を描いています。
ホトトギス高浜虚子も登場します。

そんなに刺激的な小説ではありませんが、当時の句会の様子や中にでてくる俳句の評価など興味深く読めます。俳句する人には、特に面白いと思います。
ゆるやかな時間の流れの中に、戦争への不安も感じさせます。

昭和31年生まれの作者ですが、当時の雰囲気を上手く出しているように思います。と言っても私がその時代を知っているわけではありませんが・・・。


浮世絵展

2007-10-08 19:48:20 | 美術館
渋谷区立松濤美術館の浮世絵展に行ってきました。
正式には「Great Ukiyo-e Mastersーミネアポリス美術館秘蔵コレクションよりー」といいます。
期間は前期10月28日(日)まで。後期は10月30日(火)から11月25日(日)まで

これが凄いんです。浮世絵初心者にとって、嬉しくて踊り出したくなるような展示。 
北斎・広重・歌麿・写楽から鈴木春信など有名どころが勢揃いしています。それも一点ずつといった、けちなものではありません。この中で一番少ない写楽でも3点あります。

一階では鈴木春信のやわらかい曲線に満足。特に『見立高砂』の掃き掃除をする女性二人が顔を見合す表情が魅力的です。

三階では北斎や広重のデフォルメの鮮やかさに感激。赤富士で親しまれる『富嶽三十六景 凱風快晴』や『名所江戸百景 両国花火』もあります。

作品全体に保存状態がいいのか色彩もきれいです。

十分堪能して、入場料は300円(60歳以上は無料) 。
あまりの満足にスキップして帰りたくなりました(ちょっと無理?)

「東洋大学能楽鑑賞教室」

2007-10-07 00:31:09 | 演劇
今日「東洋大学能楽鑑賞教室」に行って来ました。
主催は大学の文学部日本文学文化学科。うれしいことに無料です。

授業の出席カウントになることもあり、学生さんが中心。OBも大勢混じって、600人入る井上円了ホールは満席です。

演目は、狂言が「昆布売」・能が「敦盛」の後半部分。
それぞれ始まる前に、簡単な説明や学生をモデルに能装束の着付けなどもあります。
狂言は庶民の昆布売が武士をからかうという、面白いけれど見方を変えれば恐ろしい話。能は若くして討たれた敦盛が亡霊となり、討った熊谷次郎直実の前で舞を舞う話です。狂言はわかりやすいので素直に笑えますが、能の世界に入り込むのは中々大変です。舞を見て、敦盛や熊谷次郎直実の心境にまで思いを寄せるのは、感受性不足の私には苦しいところです。

私が見るのは、今回初めてですが、毎年開催されているとのこと。どのくらいの学生が興味を持ったかはわかりませんが、演者と主催者の熱意と温もりが伝わってくる、いい企画でした。