「炎の人」 東京・天王洲 銀河劇場 作:三好十郎 演出:栗山民也
出演:市村正親・益岡徹・富田靖子・中嶋しゅう・大鷹明良・今井朋彦・銀粉蝶
三好十郎作の芝居を見て演劇人の熱さをあらためて感じた。国を憂い、日本人を憂い、そして悩み傷つきながら生きたゴッホを「炎の人」として敬う。とても戦後の苦しい時代に書かれたとは思えない情熱である。
その思いはゴッホ役の市村正親の演技やセリフで十分伝わってきた。
ただ残念なことに、教訓臭のあるこのての芝居を私が苦手なこと。ずっと敬遠してきたのだが、市村正親が前回公演で第17回読売演劇大賞最優秀男優賞・紀伊国屋演劇賞個人賞など取ったため見る気になったのだが。
原作の生まれた頃とは違い現在はゴッホの情報があり余るほど普及している。
演出では絵画の映像を使うなど工夫はされているのだが、筋はゴッホのエピソードを追う形で進むので意外性はない。
また市村正親は熱演だが、その熱演が見え過ぎてしまう。前に見た「ヴェニスの商人」のシャイロック役の方が陰影があって私には良かった。
演劇の面白さをどこに見い出すかにより、評価は分かれると思うが、私の苦手意識は覆らなかった。