酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『東京月光魔曲』

2009-12-30 14:53:40 | 演劇
今年最後の芝居は渋谷シアターコクーンでの「東京月光魔曲」。

作・演出はケラリーノ・サンドロヴィッチ。
出演は「のだめ」の峰竜太郎役の瑛太に、元キャンディーズの伊藤蘭、白鳥麗子が懐かしい松雪泰子。それにユースケ・サンタマリアや橋本さとしなどにぎやか。

昭和初期の混沌とした時代の東京。田舎から出て来た兄弟、戦争の傷を抱える双子の兄弟、同じ戦争で父を亡くした姉弟、そして影をもつ金持ち夫婦。探偵と女助手と売れない作家の三人も狂言回し的役割で登場。その他にもカフェの経営者やその息子たち。たくさんの人物が、回転の早い回り舞台で交錯する。

内容も、戦争や震災の後遺症、怪しい宗教、2組の近親相姦、アブノーマルセックス、兄弟愛、片思い、多数の猟奇的殺人などの話が次々展開していく。加えて殺人事件にはそれぞれ伏線がひいてあるのだが、ごたごたの展開で筋を追うだけで精一杯。
軽いタッチでいろいろな話を並行して進めるというのがケラさんの特徴なのだろうが、今回は多くを詰めこみ過ぎた感じがする。

中では探偵(橋本さとし)と助手(犬山イヌコ)と作家(大倉孝二)の微妙な関係、特に犬山と大倉の掛け合いが自然で面白い。それぞれの片思いのせつなさも上手く感じさせる。

明るいがどこか儚さを感じさせる「東京ラプソディ」のダンスが舞台を盛り上げ、最後はどんでん返しも用意されているのだが、ぴたりと着地が決まったとはいいがたい。
(2010年1月10日まで)

「ベートーヴェンの第九」

2009-12-25 00:31:00 | Weblog
年末と言えばやっぱり「第九」でしょう~というわけで、昨日(もう一昨日か)新宿文化センターに行って来ました。

クリスマスフレンドリーコンサートと題して、ベートーヴェンの「交響曲 第九番 二短調 合唱付き」他一曲が演奏されました。
演奏は「西東京フィルハーモニーオーケストラ」、合唱は「東京オラトリア研究会」が中心。指揮は時任康文氏。
飲み仲間のI さんが、ビオラを弾いているので応援です。

1800人入る大ホールがほぼ満席。「第九」の人気恐るべし。

たしかに「第九」を聞いていると、次第に盛り上がってきて、合唱あたりになると、来年がいい年になりそうな気がして来ますよね。


「浮世絵百華・平木コレクションのすべて(後期)」

2009-12-22 19:36:11 | 美術館
「浮世絵百華・平木コレクションのすべて(後期)」を見た。渋谷の「たばこと塩の博物館」

平木浮世絵美術館の所蔵品が中心。この美術館はたしか前に横浜そごうにあったような記憶が・・・。
忘年会までのつなぎという軽い気持で入ったが、中々充実した展示だった。特に絵に添えられた解説が面白く、予定の一時間はあっというまに経過。もっと時間をとるべきだったと後悔。ともかく展示の意図(浮世絵の果たした役割)がはっきりしているのが良い。解説を読みながら作品を見れば、浮世絵の通になれそう。

気に入ったのは歌川国貞の「亀戸のきばの図」。
亀戸天神の茶店で寛ぐ三人の歌舞伎役者。六代目岩井半四郎、五代目市川海老蔵、三代目尾上菊五郎。海老蔵の顔の長さと目力は今の海老蔵に通じるものがあり面白い。
もう一つは同じ歌川国貞の「雪・月・花」。
三枚の団扇絵であるが、それぞれの女性の表情が惚れ惚れする美しさだ。

これだけの展示で入場料300円は安い。絶対おすすめ。
後期は1月11日(月・祝日)まで


『太陽と下着の見える町』

2009-12-12 22:40:54 | 演劇
「ANJINイングリッシュサムライ」の二日後に見たのがこれ。
庭劇団ペニノの「太陽と下着の見える町」(会場:にしすがも創造舎)。このギャップはなんだ~!

タイトルだけでも怪しいのだが、内容も結構怪しい。だが作・演出の精神科医でもあるタニノクロウ氏はただものではない。今年の10月には「苛々する大人の絵本」でベルリン公演までやってきたのだ。
向こうでの評判を知りたいのだがどこにも載っていない。本当にやったの?

タニノクロウの芝居は性的な妄想と、メルヘンとを共存させるところに不思議な魅力がある。筋は正直わからない。もともと筋があるのかどうかも不明。

今回も、ベースは精神病棟にいる患者と医者・看護婦の話のようである。ただ患者達のいろいろな妄想に、医者らしき人物の下着フェチが入りまじり、話は観客の思考が追いつけないまま進んでいく。タニノクロウの頭に浮かんだものが次々投げ出される感じ。
例えばセリフに毛沢東やカストロが出てきて、あれっ思想的な話に行くかと思えば、後に続くのがシナトラ??? はぐらかされてしまうのだ。
タニノクロウが何かメッセージを発していると考えると、それはタニノの術中にはまることになる。ただただ、見とれてあっけに取られているのが一番だろう。

ブログを見ている限りでは評判はいい。私も分からないけど面白いと思う。ただ今日の客に限っては笑いもほとんどなく、芝居が終わっても拍手なし。ドン引きの雰囲気だったけど大丈夫かな?
でも明日はめでたく千秋楽。

『ANJINイングリッシュサムライ』

2009-12-11 10:36:12 | 演劇
「ANJINイングリッシュサムライ」の初日を見た。ホリプロの最高顧問や社長、蜷川幸雄、松岡和子、イギリス人招待客らもいて、天王洲銀河劇場は初日独特の華やかな雰囲気。
演出:グレゴリー・ドーラン  

偉人伝といった趣きの芝居はもともとあまり好きではない。すでに出来上がった人物像があって、その枠を大きくは、はみだせないから。特に大作にはその傾向が強い。
本作の三浦按針が偉人かどうかは知らないが、この芝居にもそのもどかしさがある。

船が難破して日本へたどり着いたウィリアムアダムズ・日本名は三浦按針(オーウェン・ティール)の物語。時の為政者徳川家康(市村正親)と、カトリック系の修道士ドメニコ(藤原竜也)がからむ。
三人はそれぞれの苦悩を抱える。故郷イギリスと日本の選択を迫られる按針、権力者としての孤独に耐える家康、武士の心を捨て切れず人を救えないと苦悩するドメニコ。他にも家康に認められないと悩む長男秀忠、淀殿の戦を止められない息子秀頼の苦悩、いくつもの苦悩が錯綜しながら、大阪冬の陣、夏の陣の時代を背景に描かれる。
ただそれぞれの苦悩が類型的で、観客の心を打つまでには至っていない。場面転換の多さや、戦闘シーンの軽さも、その妨げになっている。
舞台装置の故障らしき表示が出ていたので、完璧ではなかったのだろうが、家康居城の華やかさも今一つだった。

オーウェン・ティールは落ち着いた演技が光る。藤原竜也は修道士の服装が異常に似合っていたが、後半の武士になってからの人物像が曖昧。市村正親は前半の権力者としての家康の部分が弱い。

とりあえず初日が終わったところ。今後の深まりに期待したい。
東京公演は2010年1月18日まで。