酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

読書三昧(29年1月)

2017-01-31 20:03:34 | BOOK



読書三昧(29年1月)

寒い日が続いたので本がよく読めた。ただ歯が抜けたり、欠けたりぼろぼろになってきて不安。抗がん剤の影響か、単なる虫歯のせいかわからないが、これが現実。悲しい。

1月に読んだ本
河合莞爾『800年後に会いにいく』
蓮實重彦『伯爵夫人』
西尾維新『掟上今日子の旅行記』
森見登美彦『夜行』
原田マハ『デトロイト美術館の奇跡』
西脇順三郎『芭蕉・シェイクスピア・エリオット』(芭蕉関連部分のみ)
富山奏『伊賀蕉門の研究と資料』(第一章・第二章)
七種年男句集『輪中の空』

☆河合莞爾『800年後に会いにいく』
原発テロというぶっそうな話も出てくるが基本的にはSFファンタジーと言っていい作品。
800年後の未来に住む少女メイから、助けを求めるとともにすずらんの花を届けてほしいとのメッセージが送られてくる。
誰も信じない中、青年飛田旅人はメイを助けようと決意するのだが・・・。
中々の書き手である。主要登場人物である3人は魅力的で、みんな心優しい。
また文系には難しい科学的な説明も入るが、文章の流れが停滞することはない。
なんと言ってもこの小説のいいところは、読んだあと幸せな気分になれること。お薦め。

☆蓮實重彦『伯爵夫人』
第29回三島由紀夫賞受賞作品。エロ表現満載である。ここまで明け透けに書かれると、独特の文体と相まって意外に心地よい。最近見ないこういう小説が、本当の文学作品なのではないかと思わせる。
考えてみれば、元大学総長で80歳のじいさんがよくこんなものを書いたものだ。かえって爽快な感じがするは私だけか。
回転扉が「ぱふりぱふりと回る」というフレーズが印象的。

☆西尾維新『掟上今日子の旅行記』
またまたまたまた8冊目の掟上今日子。もうすっかり取り込まれている。最初はなんてじれったい小説だと思ったのだが、今は次にどういう言葉が出てくるかまでわかるのですいすい読める。今回の相手役は前にも登場した隠舘厄介。今日子と厄介がパリで遭遇する前半が面白い。エッフェル塔を盗むという奇想天外な話だが、いろいろ事件が起こるわけでないので、中盤はちょっと退屈。最後の種明かしで何となく納得する感じ。
全体の感想はまあまあというところなのだが、近々出るという、今日子、厄介のロンドン編が出たらまた読んでしまいそう。

☆森見登美彦『夜行』
英会話スクールの六人の仲間の内の一人が鞍馬の火祭りの途中失踪してしまう。それから10年、もやもやした気持ちを抱えた残りの五人が鞍馬で再会するのだが・・・。
話はいつか虚か実かわからぬ世界に入り込んでゆく。銅版画をキーワードにした、ホラーっぽい話の流れは面白い。ただ登場人物の描き分けが十分でなく名前だけではイメージできないのが少し不満。本屋大賞・直木賞の候補作。

☆原田マハ『デトロイト美術館の奇跡』
気持ちのいい心温まるお話である。
市の財政破綻でセザンヌの絵「マダム・セザンヌ」の展示されているデトロイト美術館が存続の危機に。一枚の絵を愛する一人の市民の気持ちがその危機を救う。
キュレーターの経験をもつという作者得意の美術もの。淡々とした語り口ながら心をうつ。お薦め。

☆西脇順三郎『芭蕉・シェイクスピア・エリオット』
読んだ部分は「芭蕉の精神」「はせをの芸術」「芭蕉雑記」

☆七種年男句集『輪中の空』
蟻の列銀座住まひの小部隊
老人と蛍の里になりにけり
蔭を売るやうに日傘の売られをり
滝壺に滝の溺れてゐたりけり
茶の花や島の半分日が暮れて

『西脇順三郎と芭蕉』

2017-01-29 20:13:23 | 講演




迷っていた講演会、天気もいいし、体調も良さそうなので思いきって出かけた。
慶應大学三田キャンパスでの 西脇順三郎生誕記念 アムバルワリア祭Ⅵ 『西脇順三郎と芭蕉』

講師は三人で、
1、吉増剛造(詩人)「雑神と雑草」
2、高柳克弘(俳人)「芭蕉と西脇ー旅人ふたり」
3、杉本徹(詩人)「超『名利栄達』主義詩論」
一人の持ち時間が少なく物足りない部分があったが、講師の話ぶりに詩人と俳人の雰囲気の違いも感じられ面白かった。

詩人の西脇順三郎についてはなにも知らなかったが、年を経るにしたがい芭蕉に心酔し、芭蕉の目指したところを西脇も詩の世界で実現しようとしていたことを知った。250年後の、それも違う分野の人をこれほど魅了するのだから、やっぱり芭蕉はすごい人なのかも。

西脇が芭蕉のことを書いた文章には「芭蕉の精神」「はせをの芸術」(西脇順三郎著『芭蕉・シェイクスピア・エリオット』所収)がある。

『わたしは真悟』

2017-01-25 22:32:08 | 演劇



『わたしは真悟』
体調がいいので急きょチケットを買って、初台の新国立劇場でのミュージカル『わたしは真悟』を見に行った。

原作:楳図かずお・脚本:谷賢一・音楽:トクマルシューゴ・阿部海太郎
演出・振付:フィリップ・ドゥクフレ・演出協力:白井晃
出演:高畑充希・ 門脇 麦・ 小関裕太・ 大原櫻子・ 成河・奥村佳恵ほか

ロボットが人間の意識と名前を持ったことでおこる、悲しいけれどかわいいお話。
いろいろ意欲的な試みがあり、ドラマ・映画で活躍中の高畑充希・ 門脇 麦も出るのだが、話がシンプルなせいか盛り上がりには欠ける。
歌、ダンス、音楽、映像、照明、セリフなどあまりにバランスよく配分されていることも中途半端な印象を与えてしまうのかも。
切れのあるダンスやテープレコーダーを使う珍しい音楽、ブランコのラストシーンなど魅力的な部分もあるのだが・・・。

演出のフィリップ・ドゥクフレは、アルベールビル冬季五輪の開・閉会式の演出をした人だそう。
公演は明日が千秋楽。

『裸木』

2017-01-24 16:38:14 | 風景



いい天気です。今日も散歩に出ました。
青空に裸木も気持ち良さそう。




昼食は菊名駅西口まで足をのばして、そば処『ほてい家』へ。
「みそ煮込みうどん」を食べました。大根、人参、れんこん、こんにゃくに、お餅が一個入ってました。
あたたまって満足・満足。

『寒椿』

2017-01-23 18:26:28 | お花
新しい薬の副作用が軽くて喜んでいたら、NHKの健康番組で大腸がんの薬は副作用の高い人ほど効果があるとのこと。
グラフの比較で説明まであり、ガックリ。




少しあたたかくなったので、気を取り直して昨日はお散歩。途中で見つけた「寒椿」一輪。

椿と思ったけど「山茶花」???

『金柑』

2017-01-18 22:21:25 | 食べ物
前の薬が効かなくなって、今週から抗がん剤が変わりました。
薬剤師さんが副作用をいろいろ説明してくれましたが、どれが出るかは人によって違うとのこと。
とりあえず効いてくれればいいのですが、しばらくは様子見です。
薬の選択肢が少なくなってきて、ちょっと不安。





近くのスーパーで買ってきた金柑。すこし酸っぱいけど、季節のものだからうれしい。
これから出回るはずだけど、歳時記では「秋」なんですね。

『さくら草』

2017-01-11 22:44:46 | お花
いい天気なので散歩に出ました。

本来なら点滴の予定が、CTの結果がおもわしくなく投薬中止になったのです。
幸か不幸かおかげで今日はフリーに。




小さな小さな「さくら草」が、ブルーな心を癒してくれました。

『新春浅草歌舞伎』

2017-01-07 19:26:45 | 演劇



「新春浅草歌舞伎」  会場:浅草公会堂

出演:尾上松也、坂東巳之助、中村壱太郎、中村隼人、中村梅丸ほか 

 第1部(昼)の演目は中村壱太郎の年始挨拶で始まり、近松門左衛門作の「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)土佐将監閑居の場」と 舞踊「義経千本桜 吉野山(よしのやま)」

『傾城反魂香』はしゃべるのが不自由な絵師・浮世又平(坂東巳之助)が師の名前を継ぎたいと、女房おとく(中村壱太郎)と懸命の努力をするのだが、弟弟子に先を越されてしまう。又平は世を儚んで死のうとするが、おとくの最後の願いで描いた絵が・・・。
夫婦の情愛が奇跡を起こす物語。

注目したのは又平を演じた坂東巳之助。過去に踊りでは目立っていたが、今回は演技で際立っていた。動作、セリフ、表情すべてに素晴らしいと私は思った。一緒に行った相方は又平のボケっぷりが過ぎると不満のようだったが・・・。

『義経千本桜』の「吉野山」は、静御前(中村壱太郎)と忠臣・佐藤忠信(尾上松也) との道行を描いた歌舞伎舞踊。正月らしく美しく楽しい。

遅い昼食は浅草寺に近い「麻鳥」で五目釜飯。値段は安くないが、具沢山で満足。

読書三昧(28年12月)

2017-01-01 18:30:03 | BOOK



読書三昧(28年12月)

明けましておめでとうございます。
初詣はドラマ「逃げ恥」の撮影場所となった新横浜近くの「篠原八幡神社」へ。
結構混んでいてお参りまで一時間近くかかりましたが、舞台でお神楽が演じられていて、退屈しませんでした。
天気も良く気持ちのいい新年を迎えることが出来ました。

12月に読んだ本
村田沙耶香『コンビニ人間』
逸木裕『虹を待つ彼女』
辻村深月『東京會舘とわたし』(上)旧館・(下)新館
桐野夏生『猿の見る夢』
白倉敬彦監修・編『浮世絵を知りたい』
栗原公子句集『銀の笛』

☆村田沙耶香『コンビニ人間』
第155回芥川賞受賞作品。
主人公は36歳でコンビニに勤める独身女性の古倉恵子。世間からはちょっと変わっていると思われている。そんな時こちらも世間に同化できない男性白羽と同居することになる。
世間はそれの方が普通だとし仲間として認めてくれるようになるのだが、彼女の最後の選択は・・・。
ともかく面白い。持って回ったところがなく、文章は読みやすく軽やか。
変にべたべたしていなくて、爽快な読後感もある。芥川賞にも納得。文句なくおすすめ。

☆逸木裕『虹を待つ彼女』
第36回横溝正史ミステリー大賞受賞作
横溝正史の賞と言うと、どんなおどろおどろしい小説かと思うが、全くちがうIT社会の小説。
人工知能を研究するオタク青年が主人公。過去にドローンを使って自殺した美貌の女性を人工知能化で復活させようとするのだが・・・。
主人公の人物像が上手く浮かばないし、感情移入しにくい難点はあるが、発想がユニークで一気読み出来る面白い小説である。これもおすすめ。

☆辻村深月『東京會舘とわたし』
東京會舘の紆余曲折の歴史が時代を追って書かれた小説。それぞれの時代に東京會舘で働いていた人物や会館の顧客に焦点を当て感動的な物語がつづられる。主人公はバーテンダーであったり、ボーイであったり、挙式する花嫁だったりする。ただ話があまりに感動的で上手く出来すぎていて、読んでいるものがくすぐったく感じてしまうほど。東京會舘讃歌と言ってもいい。

☆桐野夏生『猿の見る夢』
面白いというより、なんか変な小説である。小心者で会社役員の主人公がいろいろ策を弄して世渡りしようとするのだが、結局はまわりの女性に翻弄されてしまう話。登場人物はほとんど中高年で、下世話な話がいろいろ巻き起こる。夢で占う高齢女性の長峰という謎の人物が登場して俄然面白くなる。
どうも全体的に男は馬鹿にされている感じで、男性より女性が読んだ方が爽快感を得られるかも。

☆白倉敬彦監修・編『浮世絵を知りたい』
小冊子であるが、カラーの浮世絵がふんだんにでて来るのがうれしい。それも「お江戸のアイドル」「旅への憧れ」「江戸っ子のヒーロー」など上手く分類されていて、楽しく読める。少し古い本(2012年刊)だが、浮世絵入門書としておすすめ!

☆栗原公子句集『銀の笛』
てふてふはひらひらみどりごよちよちと
本気とは他見えぬこと潮干狩
あぢさゐが好き音たてぬ雨が好き
小春日やけふは大人をひと休み
冬うらら色鉛筆を背の順に