酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『モーリス・ユトリロ展』

2010-06-12 00:07:10 | 美術館
「モーリス・ユトリロ展」  損保ジャパン東郷青児美術館(新宿駅西口より徒歩5分)

ユトリロの絵92点。それも全部日本初公開のものばかり。これだけまとめて見られるのは凄~い。
ユトリロと言えばその悲しい生い立ちとからめて、白くさびしい町並みの絵が思い浮かぶ。しかし今回の展示を見るとそれがユトリロの一面でしかないことがわかる。
ファッション雑誌にあるようなカラフルでオシャレな絵が結構あるのだ。さすがパリの画家だと思ってしまう。
アルコール依存症であまり幸せな時期は無かったようだが、絵だけを見ているとそれを感じさせない明るい絵がまじる。

ほとんどがモンマルトル近くで描かれた絵で、有名なサクレ=クール寺院やラパン・アジルやムーラン・ド・ラ・ギャレットなどを描いたものは、何枚もある。比べて見るのも楽しい。

この美術館は最後に常設のゴッホの「ひまわり」が見られるので満足度は高い。
ユトリロの展示は7月4日(日)まで。おすすめー!!


『UNDER GROUND』

2010-06-07 17:59:05 | 演劇
「UNDER GROUND」 庭劇団ペニノ  三軒茶屋のシアタートラムで初日を見た。

作・演出:タニノクロウ  出演:五十嵐操・島田桃依・瀬口タエコほか
ネタバレ少し有り。

相変わらずタニノクロウは変だ。前回のパンチラに続き、今回は手術の一部始終を見せるという。
冒頭に手術の指揮者役のマメ山田から「これから手術ショーをやります」という前説がある。(取り出す内臓を元に戻さないから、人間の解体ショーと言った方が正しいかも)

患者役の男性の胸を切り開き内臓を取り出してゆく。もちろん内臓に似せた作り物であるが。
女性の医師や看護師のメスの扱いや縫合の手付きは慣れたもので訓練の成果が見える。しかしその分手術のシーンが長く、セリフのやりとりもほとんどないため退屈。
作・演出のタニノはそれも承知の上。普通見ることが出来ない手術シーンを演じることに目的があったのだから。
取り出される内臓の一つ一つにも、結構こだわっている。加えて生演奏と医療器具の音のアンサンブルまで考えたようだが、そのマニアックさについて行けた人がどれだけいたか。

前半はシリアスに、後半になるとファンタジー的要素が加わる。
取り出した胃から次々一回り小さな胃が出てきて、それぞれ音の違う楽器に変わるシーンなどは楽しい。

タニノの芝居の魅力は突飛なこだわりと底流に流れるやさしさにある。不満は持ちながらも、私が欠かさず見てきたのは、後者のやさしさに魅かれるからだろう。

「UNDER GROUND」は再演で、今回の公演は6月13日(日)まで

『甘え』

2010-06-05 23:39:49 | 演劇
「甘え」 劇団、本谷有希子公演 青山円形劇場
作・演出:本谷有希子、出演:小池栄子、水橋研二、安藤玉恵、広岡由里子、大河内浩

今回は脚本がいまひとつか。

昼は威張りちらす父親(大河内浩)が、夜眠るとめそめそ泣き出す。心に不安をかかえる父親に娘(小池栄子)も心を乱され、次第に憎しみを抱くようになる。そしてついに殺意が・・・。

誰かに頼らないと生きていけない父親、父親の呪縛から抜けられない娘、その二人の関係が今一つすっきり伝わってこない。描かれる世界も、ちまちましていて、本谷の魅力であるパンチ力に欠ける。
また娘が価値観を変え違う自分になるための手段が、セックスに行き着くというのも安易。先週見たポツドールの「裏切りの街」にも同じような不満を感じたが。

主演の小池栄子は熱演で、主人公として一つの世界を作り上げている。ただ私の思い描く不器用にしか生きられない主人公像とは多少のずれがあった。「夜這い」をキーワードにするには、小池が洗練されすぎているのかもしれない。

芸達者な女性共演陣(安藤玉恵・広岡由里子)のブラックな笑いが健在なのが救い。