酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『少女とガソリン』

2007-06-23 18:52:18 | 演劇
二十何年ぶりかで、下北沢の「ザ・スズナリ」に来た。
私の芝居見物のスタートになった劇場である。
北村想・作 流山児祥・演出 「演劇団」の舞台『碧い彗星の一夜』は今でも鮮烈な記憶として残っている。

看板はきれいになっていたが、「ザ・スズナリ」は変わっていなかった。細い階段を二階にあがり、狭い席に大きな若者の間に座る。

今日の舞台は、最近の若手演出家の中で、ナンバーワンの評判の高い長塚圭史の舞台『少女とガソリン』
作・演出  長塚圭史
キャスト 中村まこと・松村 武・池田鉄洋・中山祐一朗・伊達 暁・長塚圭史・
富岡晃一郎・大林 勝・下宮里穂子・犬山イヌコ

とある田舎の酒場。都会から来た旅の若者二人が議論しながらお酒を飲んでいる。そこへ正体不明の一人の男が入ってきて、客にも店主にもからみだす。
徐々に酒場の内情がわかってくるにつれ、事態は過激な方向へ・・・。

この舞台は正直言って、いろんなことを詰め込み過ぎた。
親子愛・夫婦愛・ゲイの愛・郷土愛などの人間関係が様々に絡みあう。チェーンソーで腕を切り落とすホラーまがいのシーンやアイドルの舞台、はては差別や無差別開発など社会問題まで加えている。
あまりに盛りだくさんで、パンフレットで言う長塚圭史の「‘差別’っていうものの先」が見えてこないのである。
本音と建前の間に埋没する個の人間の弱さは十分感じられたのだが。

笑い、涙、恐怖など舞台は様々に展開するが、私には加えてファンタジーが欲しい。
荒っぽい舞台だったが、『青い彗星の一夜』にはそれがあった。私のいま一番好きな野田秀樹の舞台にはいつもそれがある。
長塚圭史の前回演出の舞台『アジアの女』では感じられたので、この「暴走する男たち」のシリーズでは意識的に排除しているのかもしれない。

あと長塚圭史の大事にしているらしい、「間」が今一つ私にはしっくりこない。だれるのである。全体にスピードアップして、その中での「間」を生かせるともっとよかっただろう。

今回、途中ではずいぶん笑いが起きて盛り上がっていた。ところが最後の全員の歌唱シーンでイマイチ反応が鈍かったのは、客が芝居に乗り切れなかったことの証明ではないだろうか。

長塚さ~ん!次の『ドラクル』期待してますよ。