酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『地獄でなぜ悪い』

2013-09-29 10:55:22 | 映画


「地獄でなぜ悪い」   園子温監督

文句なく面白い。久しぶりにすかっとした映画を見た。

やくざの抗争で、切られた首や腕が飛び、画面は全編血だらけと言ってよい。それは実際の抗争であり、また若者たちの撮る映画の一こまでもある。そんな設定が気持ち悪さを全く消してしまう。刀や銃の殺しあいでみんないなくなった後に残るのは、主人公である青年平田鈍(長谷川博己)の、映画への熱い情熱だけ。
見事なラストシーンである。

『セカンドバージン』や『家政婦のミタ』では見せなかった、長谷川博己のはじけっぷりが面白い。
強いのか弱いのかわからない池上組組長役の堤真一、武藤組組長役の國村隼、その妻役の友近など個性的な役者も揃っている。
武藤の娘役二階堂ふみのはつらつさも心地よい。

初日の昼に見に行ったが、じぇじぇじぇ、観客はたった50人いるかいないか。
トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門の観客賞を受賞し、こんなに面白いのに可哀相。

文句なくおすすめです。うじうじと気持ちの晴れない方には、特にお薦め!


『next to normal(ネクスト・トゥ・ノーマル)』  

2013-09-25 16:43:00 | 演劇


「next to normal(ネクスト・トゥ・ノーマル)」  於:日比谷シアタークリエ

脚本・歌詞:ブライアン・ヨーキー 音楽:トム・キット 演出:マイケル・グライフ
出演:安蘭けい、辛源、岸祐二、村川絵梨、松下洸平、新納慎也

オフブロードウェイから進出し、ブロードウェイ公演も大ヒットしたミュージカル「next to normal」の日本版を見た。

アメリカの一般的な家庭で、精神を病んだ母親ダイアナ(安蘭けい)を家族がどのように支えていくかというお話。両親と子供の関係、医療問題、薬物使用など現代的な問題も織り込みながら進む。

カラフルな舞台装置とのびやかな音楽で楽しむことは出来るが、ピューリッツアー賞を取ったというにしては、内容に深みがない。

途中で何か違和感があると思ったのは、娘ナタリー役の村川絵梨。アメリカ家庭に日本の少女がいる風に見えた。非常に日本的な雰囲気を持つ役者さんだけに、髪の毛を少し染めるとか工夫があっても良かったかも。この日は息子のゲイブをハーフの辛源が演じていたせいもあるかもしれない。

他の出演者では安蘭けいの安定した歌唱と演技、新納慎也の個性的な演技に魅かれた。

セリフの聞き間違いかもしれないが、ラストシーンで家を出た母親と、訣別したはずの医者とがまだつながっているようなのも、すっきりしない原因となった。


『ジャンヌ』

2013-09-18 15:28:23 | 演劇


『ジャンヌ』(原題は『聖ジョウン』)  於:世田谷パブリックシアター

作:ジョージ・バーナード・ショー、 演出:鵜山仁
出演:笹本玲奈、今井朋彦、新井康弘、小林勝也、中嶋しゅう、村井國夫他

チラシには「ノーベル賞作家が暴く聖女ジャンヌ・ダルクの真実」とある。
ジャンヌ・ダルクものでは、過去にジャン・アヌイ作・蜷川幸雄演出・松たか子主演の『ひばり』を見て退屈したことがあり、ちょっと不安な気持ちで出かける。
今回の原作は『ピグマリオン』(『マイ・フェア・レディ』の原作)の作者として有名なイギリスの劇作家でノーベル賞もとったバーナード・ショー。

フランスの救世主として戦い、魔女として火あぶりの刑に処せられるジャンヌダルクを描いたお話。

パンフレットで、世田谷パブリックシアター芸術監督の野村萬斎は、「ジャンヌを、救世主という側面だけでなく、社会と葛藤する一人の人間として描いた」というが、舞台見た限りではただ純粋に聖人の啓示を信じる少女として描かれているようにしかみえない。かえってそれがジャンヌを演じる笹本玲奈の個性に合って成功したのではないかと私は思っている。

その笹本玲奈はミュージカルでは押しも押されぬスターである。今回は慣れないストレートプレイへの挑戦。多少セリフに深みがないのが気になるが、動きの切れや美しい姿勢にはほれぼれする。膨大なセリフを無難にこなしたことを考えると大成功と言えるだろう。

取り巻きの連中には無条件にジャンヌを信じるもの、全面的に信じてはいないがジャンヌに賭けようとするもの、全く信じていないがジャンヌを都合よく利用しようとするものなど、芸達者な脇役の演技力によってうまく描かれているのも好感を持った。

エピローグでは、火あぶりから25年後(ジャンヌの処刑裁判が無効とされた年)が描かれ、死んだジャンヌをはじめ関係人物が登場する。この部分は賛否はあるだろうが、最後にジャンヌが一人残されるシーンに、バーナード・ショーのシニカルな目が感じられ面白いと思った。


『ロミオ&ジュリエット』

2013-09-06 15:19:35 | スポーツ


ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」於:東急シアターオーブ

演出 小池修一郎、原作 シェイクスピア、 作 ジェラール・プレスギュルヴィック
出演(9月5日)ロミオ:柿澤勇人、ティボルト:城田優、 ジュリエット:フランク莉奈、
ベンヴォーリオ:尾上松也、 マーキューシオ:東山光明、パリス:岡田亮輔、
死のダンサー:宮尾俊太郎

昨日「ロミオ&ジュリエット」を見た。久しぶりの観劇。
悲劇のはずなのに、ロックっぽい音楽に、舞台はあくまで賑やかで明るくて楽しい。
携帯や自販機も出てきて現代的なアレンジもある。(ちょっと違和感はあるが)

ヴェローナで永年争いを続けている二つの名家。モンタギュー家の息子ロミオ(柿澤勇人)とキャピュレット家の娘ジュリエット(フランク莉奈)が恋に落ちる。二人を愛する人たちの力を借りて恋は成就すると思われたのだが・・・。

この日のロミオ役は「スリル・ミー」「海辺のカフカ」「スウイーニ―・トッド」など活躍の範囲を広げている柿澤勇人。今回のロミオはトリプルキャストで彼にとっては、5日が初日。東急シアターオーブという大劇場ですごいプレッシャーではなかっただろうか。出だしは多少不安を感じさせたが、死のダンサーと一緒のシーンで歌う「僕は怖い」あたりから本調子になり、まずは無難にこなしていた。ただ気になったのは、時々姿勢が悪く見えること。主役の華やかさを保つためにも、美しい立ち姿でいてほしい。
ジュリエット役のフランク莉奈は歌唱には波があるように感じたが、華やかさで十分カバー。
あとは群舞の部分、乱闘シーンに迫力がなく、ダンスにもいまいち統一性と切れが感じられなかったのは惜しい。
とはいえ若い人が舞台ではじけているのは、見ているだけで楽しい。


読書三昧(25年8月)

2013-09-01 09:38:22 | BOOK
読書三昧(25年8月)

ベッドにいる時間が長くなった。睡眠時間もだんだん長くなっているし、本もベットで寝転がっている読んでいる。このまま進むと「寝たきり」・・・。それはちょっとまずい。

8月に読んだ本
山田悠介『Aコース』
吉田修一『静かな爆弾』
谷川直子『おしかくさま』
東野圭吾『ガリレオの苦悩』
東野圭吾『マスカレード・ホテル』
太宰治『ヴィヨンの妻』
米澤穂信『インシテミル』
大久保真理子 句集『古雛』

吉田修一『静かな爆弾』
主人公(早川俊平)はテレビ局につとめ、バーミヤンの大仏爆破のドキュメンタリー製作に夢中の仕事人間。その彼が耳の不自由な女性(響子)と恋愛関係になる。付き合っている内に主人公にも何となく違う感覚が目覚め始め・・・。
主人公の恋愛と仕事が、読者になんとなく不安な気持ちを感じさせながら進行する。
響子が途中で音信普通になる理由がわからない。
小説の中で主人公がナイタ―見る無数の観客が、どの一人をとっても違うことに不気味さを感じるという部分があった。私はいつも全部同じ顔に見えて不気味に思うだが・・・。

谷川直子『おしかくさま』
異色で突拍子もなく面白い小説。「おしかくさま」とういうお金の神様を信じるか信じないか。ウツ病で拒食症で不眠症であった、49歳のおねえちゃんミナミが、「おしかくさま」騒動の渦中で、したたかなおねえちゃんに変って行くのが爽快。