酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『作者を探す六人の登場人物』

2017-11-03 19:35:56 | 演劇



「作者を探す六人の登場人物」   (於)KAAT神奈川芸術劇場<中スタジオ>

作:ルイージ・ピランデッロ
翻訳:白沢定雄
上演台本・演出:長塚圭史
出演:安藤輪子 碓井菜央 岡部たかし 香取直登 北川結 草刈民代
玉置孝匡 中嶋野々子 並川花連 美木マサオ 山崎一  ほか



入院する前から買ってあった芝居のチケット。一昨日がその日だった。 場所は神奈川芸術劇場。
一人で出かけられないから、誰も行くとは思っていなかったが、急に行きたくなった。
間違いなく「はた迷惑」もいいところ。

とうとう同行を頼んで行ってきた。

この芝居は芝居を通して見る演劇論という感じ。演出の長塚さんの共感した演劇論を体よく見せられたという感じがしなくもない。どうも最近の長塚作品は理屈っぽい。昔のしなやかな切れ味が懐かしい。知的になりすぎた長塚さんにそれを求めるのはもう無理かも。

作者を失い行き場を失なった登場人物たちが練習中の劇団に乱入するという発想は面白いが、子供の死の経緯が不透明なのに、かなり大きな意味合いを持たせているラストが不満。イタリアの作家でノーベル文学賞受賞者の作品らしいが、もうちょっと洒落た感じの雰囲気の舞台づくりの方が良かったのではないか。

役者では現実の座長役の岡部たかしが難しい役を中々上手く好演。
いつも応援している「ペンギンペイルパイルズ」の玉置孝匡さんは活躍の場が少なく残念だった。

同じ劇団の玉置さんが出演しているからだろう、小林高鹿(タカ鹿)さんが見に来ていた。ミーハーな私はつい声をかけてしまったが、舞台の雰囲気そのままに驚きもせず冷静にご対応いただいた(笑)。

『天の敵』

2017-06-04 00:08:48 | 演劇



なんかわからないすごいポスターです。

『天の敵』イキウメ公演  (於)東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:前川知大
出演:浜田信也、安井順平、盛隆二、森下創、大窪人衛、小野ゆり子、太田緑ロランス、松澤傑、有川マコト、村岡希美

体調が悪かったけれど、だいぶ前に買ってあった大事なチケット。頑張って出かけた。

イキウメにとって、伊勢佳世と岩本幸子の二人の女優が退団後はじめての公演。

難病で余命6ケ月のルポライターが菜食料理家に話を聞きにゆく。ところが聞いているうちに、料理家が現在122歳とわかる。そして長い生涯を話しはじめたのだが・・・・。
ベジタリアンなど食物の問題と吸血鬼ネタなどを上手く組み合わせて、若さと老い・生死の問題にまで至り、重厚な舞台に仕上げている。

ただ内容に病気ネタが多く私には気分的にシリアス過ぎ。
癌の薬止めたら余命何ヵ月とか、野菜で免疫力をあげるとか、最後に鰻食べたいとか、今の自分の現実にあまりに近すぎてちょっと退く。同じ内容でも、もう少し軽いタッチで表現して欲しかった。

イキウメの男性陣はあいかわらず安定した演技を見せ、今回参加の女優陣にも破綻はない。
ただ私の応援している大窪人衞くんにはそろそろ子供的な演技を卒業させてあげて欲しいし、太田緑ロランスさんはプロボウラー似合っていたけど、残念ながら色目を使う夫人役はぴったりはまっていなかった。

演出の前川知大は東洋大学つながりでずっと応援している。彼の原作でカンヌ映画祭に出品された『散歩する侵略者』(黒沢清監督)の日本上映も夏以降に控えており、芝居も『プレイヤー』『関数ドミノ』『散歩する侵略者』など目白押し。これからの活躍が益々楽しみ。

東京公演残念ながら明日4日まで。

ミュージカル 『紳士のための愛と殺人の手引き』

2017-04-25 19:59:07 | 演劇



ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』  (於)日生劇場

出演:市村正親・ 柿澤勇人・シルビア・グラブ・宮澤エマ・春風ひとみ他

熱烈な柿澤勇人ファンに連れられて、日生劇場でミュージカルを見た。

貧しい生活の中で母にも死なれて落ち込むモンティ(柿澤勇人)のところに、母の古い友人であったミス・シングル(春風ひとみ)が訪ねてくる。彼女の話ではモンティは大富豪の血を引いていて8番目の爵位継承権があるとのこと。ただし優先権のあるものが死ななくては継承権はまわってこない。モンティは順番に殺していくことを決意し、うまくいくかにみえたが・・・。

殺され役8役を演じ分ける市村正親が好演。熱演するとくどくなりすぎるきらいがある市村であるが、今回は肩の力を抜いた演技がうまくはまっている。
柿澤勇人は余裕の舞台を見せ、シルビアグラフ、宮澤エマの女優陣も華やか。特に宮澤エマの歌声には惚れ惚れする。

軽い話しであるが、内容も演技も音楽もうまくまとまっていてミュージカルの楽しさを十分味わえる舞台になっている。
お勧めだが、東京公演は今月中。

『死の舞踏』

2017-03-18 20:07:18 | 演劇



シス・カンパニー公演 「死の舞踏」   (於)シアターコクーン

作:アウグスト・ストリンドベリ・翻訳・演出:小川絵梨子・翻案:コナー・マクファーソン
出演:池田成志・神野三鈴・音尾琢真

久しぶりの芝居らしい芝居。体調がすぐれずちょっときつかったが、見始めたら忘れた。

ストリンドベリの中々面白い戯曲である。銀婚式を近々迎える夫婦エドガー(池田成志)とアリス(神野美鈴)。お互いを傷つけ合いながら生きている。そこへ妻の従兄弟でかつ二人の関係を取り持ったクルト(音尾琢真)が訪ねてくる。夫婦の間の微妙なバランスが崩れ・・・。

人生、結婚、子育て、友情、病気、死など詰め込まれたテーマは中々奥深く、セリフのひとつひとつにも味わいがある。ミステリアスな部分もあって、ひき込まれる。

役者では神野のどっしりした演技が光り、出入りで開け閉めするガラス扉の舞台装置が演出効果を高めている。
舞台の端に空の鳥籠があったが、何の象徴か。原作を探して是非読んでみたい。

公演は4月1日(土)まで(「令嬢ジュリー」と本作が、交互に上演)

『ビッグ・フイッシュ』

2017-02-27 12:24:39 | 演劇



「ビッグ・フイッシュ」   日生劇場

演出:白井晃
出演:川平慈英・浦井健治・りょうた・霧矢大夢・赤根那奈・藤井隆・鈴木蘭々・ROLLY他

ティム・バートンの映画にもなった『ビッグ・フィッシュ』と同じ脚本をミュージカル化したもの。
古い良き時代のアメリカの父と息子の愛情物語。本当の愛が父の死ではじめて息子に伝わるのが悲しいが、全体のトーンは前向きで明るい。

演出の白井晃の好きな祝祭的の場面が随所に出てくる。ただ背景となる美術や映像が水仙の咲く場面を除き、モノトーンで寂しげなのは意図的なものか。もっと大胆な明るさのある方が雰囲気を盛り上げそうに思うのだが。

川平慈英が年齢(50歳だそう)を感じさせないパワーで舞台を引っ張り、脇役たちの歌や踊りも魅力的。生演奏であるのも大きなプラスになっている。
ただ息子役の浦井健治は意外に出番が少なくフアンには物足りないかもしれない。

公演は明日2月28日「火」まで

『足跡姫 時代錯誤冬幽霊』

2017-02-23 19:58:05 | 演劇



NODA・MAP第21回公演 『足跡姫 時代錯誤冬幽霊』 (於)東京芸術劇場 プレイハウス

作・演出:野田秀樹 、出演:宮沢りえ・妻夫木聡・古田新太・佐藤隆太・鈴木杏・池谷のぶえ・中村扇雀・野田秀樹

私が芝居で過去最高に笑ったのは、野田秀樹と中村勘三郎が出た『表に出ろいっ!』。もう7年位前の舞台である。
二人の本当に楽しそうなセリフのやりとりが今でも心に残る。今回の舞台は死んでしまった勘三郎へのオマージュの意味合いもあるという。

間違いなく野田さんの芝居ではあるのだけれど、残念なことに得意の言葉遊びにいつもの切れ味がない。筋も由井正雪を登場させたり苦労のあとも見えるのだが、全体にどこか二番煎じ。理が勝ち過ぎていて、見ていてくたびれる。宮沢りえや妻夫木聡や鈴木杏など役者も揃っているだけに、不満は大きい。
カテコがスタンディングにならなかったのも、またいつもの溢れるような熱気ある客の入りにならなかったのもその証しかもしれない。

ただ中村勘三郎のオマージュとして見ていた人も多く、客席からの拍手の雰囲気はあたたかかったが。

芝居を見たあと野田秀樹の脚本『足跡姫』を読んだ。舞台ではマイペースでひょうひょうと演じていたかのように見えた古田新太が、脚本の人物を一番ぴったりと捉えているように感じられた。
堀尾幸夫の舞台美術が美しい。

公演は3月12日(日)まで。

『わたしは真悟』

2017-01-25 22:32:08 | 演劇



『わたしは真悟』
体調がいいので急きょチケットを買って、初台の新国立劇場でのミュージカル『わたしは真悟』を見に行った。

原作:楳図かずお・脚本:谷賢一・音楽:トクマルシューゴ・阿部海太郎
演出・振付:フィリップ・ドゥクフレ・演出協力:白井晃
出演:高畑充希・ 門脇 麦・ 小関裕太・ 大原櫻子・ 成河・奥村佳恵ほか

ロボットが人間の意識と名前を持ったことでおこる、悲しいけれどかわいいお話。
いろいろ意欲的な試みがあり、ドラマ・映画で活躍中の高畑充希・ 門脇 麦も出るのだが、話がシンプルなせいか盛り上がりには欠ける。
歌、ダンス、音楽、映像、照明、セリフなどあまりにバランスよく配分されていることも中途半端な印象を与えてしまうのかも。
切れのあるダンスやテープレコーダーを使う珍しい音楽、ブランコのラストシーンなど魅力的な部分もあるのだが・・・。

演出のフィリップ・ドゥクフレは、アルベールビル冬季五輪の開・閉会式の演出をした人だそう。
公演は明日が千秋楽。

『新春浅草歌舞伎』

2017-01-07 19:26:45 | 演劇



「新春浅草歌舞伎」  会場:浅草公会堂

出演:尾上松也、坂東巳之助、中村壱太郎、中村隼人、中村梅丸ほか 

 第1部(昼)の演目は中村壱太郎の年始挨拶で始まり、近松門左衛門作の「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)土佐将監閑居の場」と 舞踊「義経千本桜 吉野山(よしのやま)」

『傾城反魂香』はしゃべるのが不自由な絵師・浮世又平(坂東巳之助)が師の名前を継ぎたいと、女房おとく(中村壱太郎)と懸命の努力をするのだが、弟弟子に先を越されてしまう。又平は世を儚んで死のうとするが、おとくの最後の願いで描いた絵が・・・。
夫婦の情愛が奇跡を起こす物語。

注目したのは又平を演じた坂東巳之助。過去に踊りでは目立っていたが、今回は演技で際立っていた。動作、セリフ、表情すべてに素晴らしいと私は思った。一緒に行った相方は又平のボケっぷりが過ぎると不満のようだったが・・・。

『義経千本桜』の「吉野山」は、静御前(中村壱太郎)と忠臣・佐藤忠信(尾上松也) との道行を描いた歌舞伎舞踊。正月らしく美しく楽しい。

遅い昼食は浅草寺に近い「麻鳥」で五目釜飯。値段は安くないが、具沢山で満足。

『シブヤから遠く離れて』

2016-12-23 18:09:37 | 演劇



『シブヤから遠く離れて』 (於)Bunkamuraシアターコクーン

作・演出:岩松了、出演:村上虹郎、小泉今日子、鈴木勝大、南乃彩希、駒木根隆介、小林竜樹、高橋映美子、たかお鷹、岩松了、豊原功補、橋本じゅん

劇評家である徳永京子さんが、朝日新聞でこの芝居を誉めていたのを見て急遽チケ取り。二階の端の最後尾の席がやっと一枚取れて出かけていった。

虚と実のあわいを描き、見る側の感受性がためされている芝居なので、評価は分かれるだろう。ただ私は期待ほどには入り込めなかった。
ポイントであるセリフで、なるほどと思わせる部分もあるが、作者が自分の作ったセリフに酔っていて、芝居の上滑りを感じてしまう。また公演のオフィシャルサイトで訴える「暗い記憶の狭間を浮遊する青年ナオヤ(村上虹郎)と、全てから逃れようとする不思議な女マリー(小泉今日子)との静かな、しかし力強い愛」もあまり感じられない。「青春性や色気」なども中途半端。

11年前に岩松了の原作で蜷川幸雄が舞台化したものの再演。出演者は小泉今日子を除き交替している。
青年ナオヤ役は前公演の二宮和也に代わり村上虹郎。私の見た回では、出だしは良かったのだが山場でのセリフの滑舌が不安定になったのが残念。
マリー役の小泉今日子は美しい声が魅力的。ただ多少情感不足を感じたが、これは作・演出の岩松了の好みで抑えたのかもしれない。
橋本じゅん、豊原功補、たかお鷹などベテランが脇を支える中で、アパートの管理人役の高橋映美子がさりげなくうまい。

他では①建物の間取りや構造(本玄関は何処?二階へは外階段しか行けないの?)、②登場人物の年齢設定(父と子の年齢が開きすぎ?ナオヤが事件を起こしたのは何歳?)、③「小鳥のいる鳥かご」「ゼラニウム」「孔雀の絵」「コンパクト」で何かを象徴させようとしている演出家の意図など、考えることが多くて今一つ芝居に夢中になれなかった。

公演は12/25(日)まで。

『キネマと恋人』 

2016-11-29 19:58:04 | 演劇


『キネマと恋人』  (於)シアタートラム

【台本・演出】 ケラリーノ・サンドロヴィッチ、 【出演】妻夫木聡・ 緒川たまき・ともさかりえ・三上市朗・佐藤誓・橋本淳・尾方宣久 廣川三憲 村岡希美 他

昨日芝居『キネマと恋人』見てきました。何人かの役者さんがインフルエンザにかかりしばらく休演していたのですが、たまたま昨日から再開。ラッキーでした。

ウディ・アレン監督の映画「カイロの紫のバラ」を翻案した作品で、舞台はとある日本の港町。主役は映画が大好きな女性(緒川たまき)で、映画の脇役に出ている俳優と彼が演じる侍の両方に恋してしまうというファンタジックなお話。

映画の登場人物が画面から飛び出すなどドタバタの面白さもありますが、究極はほのぼのとした姉妹の愛情あふれる物語。

舞台転換はダンスを交えながらスムーズに進み、映像も役者との掛け合いまでこなす見事なもの。3時間全く飽きさせないケラリーノ・サンドロヴィッチはさすがに凄い。

文句なしに楽しいのですが、ひねりや風刺が少ないので印象はちょっと薄いかもしれません。

役者では姉(森口ハルコ)役の緒川たまきがおっとりしたいい味を見せ、妹役のともさかりえといいコンビ。妻夫木聡は俳優(高木高助)と映画の登場人物(間坂寅蔵)を軽やかに演じ笑わせてくれます。

東京公演は12月4日(日)まで