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原作:アントン・チェーホフ 構成・演出:松本修
出演大崎由利子・中田春介・小嶋尚樹・山田美佳・藤井びん・石井ひとみ他
松本修は印象に残るシーンを作り出せる人だ。一連のカフカ作品では、その手腕を存分に見せてくれた。
しかし今回のチェーホフの「かもめ」については刺激的とはいいがたい。
ただそれは意図的だったのかもしれない。
松本はチラシにチェーホフ劇の演出について、「これまでの多くの試みはすべて
チェーホフの戯曲の本質に肉薄するためのレッスンであったとも言えるのだが、
果たしてちゃんと戯曲に向き合っていたのかと自問すると、ずいぶん逃げを打って
いたようにも思う。いつかチェーホフの戯曲に何も足さず、何も引かずに演出をしてみ
たい。(いつか?)」と言っているので、その「いつか」が今回なのかもしれない。
役者さん達が退場しないで舞台を見ていることや冒頭とラストシーンで多少の変化を
つけているが、それ以外は非常にオーソドックスな印象である。
それだけに物足りなさもある。
俳優ではニーナ役の山田美佳が好演。特に劇中劇のセリフは絶品。
一方中田春介のトレープレフはしっくりこない。前回のカフカの「変身」でのザムザに
遠く及ばない。淡々と演じすぎて、トレープレフの若さゆえの心の揺れが感じら
れず、最後の銃声のシーンへうまくつなげられていないのが残念。
あとは松本修が医師ドールン役で落ち着いた演技を見せ、まだ大学生だという料理人役の
山本あさみと小間使役の有岡みなみがベテランにおくせず活躍しているのが目についた。
公演は10月31日(日)まで