酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『かもめ』

2010-10-30 00:02:53 | 演劇
「かもめ」  池袋あうるすぽっと

 原作:アントン・チェーホフ  構成・演出:松本修  
出演大崎由利子・中田春介・小嶋尚樹・山田美佳・藤井びん・石井ひとみ他

松本修は印象に残るシーンを作り出せる人だ。一連のカフカ作品では、その手腕を存分に見せてくれた。

しかし今回のチェーホフの「かもめ」については刺激的とはいいがたい。
ただそれは意図的だったのかもしれない。
松本はチラシにチェーホフ劇の演出について、「これまでの多くの試みはすべて
チェーホフの戯曲の本質に肉薄するためのレッスンであったとも言えるのだが、
果たしてちゃんと戯曲に向き合っていたのかと自問すると、ずいぶん逃げを打って
いたようにも思う。いつかチェーホフの戯曲に何も足さず、何も引かずに演出をしてみ
たい。(いつか?)」と言っているので、その「いつか」が今回なのかもしれない。

役者さん達が退場しないで舞台を見ていることや冒頭とラストシーンで多少の変化を
つけているが、それ以外は非常にオーソドックスな印象である。
それだけに物足りなさもある。

俳優ではニーナ役の山田美佳が好演。特に劇中劇のセリフは絶品。
一方中田春介のトレープレフはしっくりこない。前回のカフカの「変身」でのザムザに
遠く及ばない。淡々と演じすぎて、トレープレフの若さゆえの心の揺れが感じら
れず、最後の銃声のシーンへうまくつなげられていないのが残念。
あとは松本修が医師ドールン役で落ち着いた演技を見せ、まだ大学生だという料理人役の
山本あさみと小間使役の有岡みなみがベテランにおくせず活躍しているのが目についた。


公演は10月31日(日)まで

『ウフィツィ美術館 自画像コレクション』

2010-10-22 17:23:26 | 美術館

ウフィツィ美術館 自画像コレクション 巨匠たちの「秘めた素顔」1664-2010   (於)損保ジャパン東郷青児美術館。

フィレンツェのウフィツィ美術館の自画像コレクション1700を超える所蔵品の内から、16世紀以降現代までの約70点を展示。

自画像にはレンブラントや藤田嗣治やシャガールなどの有名画家も混じるが、私にとっては聞いたことのない人がほとんど。興味を持って見る為には、自画像本人への知識が必要かも。
ただ女性画家が随分活躍していること、女性が自分をすごく美しく描いている(本当に美しかったかもしれないが)のが印象に残った。

今回ウフィツィの自画像コレクションに草間彌生、横尾忠則、杉本博司の画も加わるとかで、その個性的な三点も展示されていた。

最後の一室でセザンヌとゴーギャンの絵に挟まれたゴッホの「ひまわり」をいつものとおりゆっくり見て帰ってきた。

『窓』

2010-10-22 17:18:29 | 演劇
「窓」下北沢本多劇場

先月掲載洩れになった芝居。

主人公(高橋一生)は医学生だが今は休学中。シナリオ作家を目指そうと、従兄妹(ぼくもとさきこ)の祖父の持つ別荘へ。そこには女優を中心に人の意味ありげな男達がいる。

主人公はいつかそのグループに取り込まれてしまうのだが・・。
ミステリー仕立てで、筋の予測が出来ないため引き込まれる面白さはある。ただ女優とそれぞれの男との関係、男同士の関係が、その心情までは明瞭に語られない。推測する面白さの一方でモヤモヤした部分も残る。

また幕切れ近くの暗転で、主人公のモノローグが入る。「別荘での生活は、それぞれが戻る場所を持った上で、刺激を求めあっていた」というような感じだと思うのだが、当てはまるのは医学生に戻った本人だけ。
契約を切られた女優とその付け人のような男優、ヒットマンを殺してしまったヤクザとその手下、家庭崩壊している河原など、どれも戻る場所がないようで矛盾するように見えるのだが・・これは私の勘違いか。

もう一度見ないと作者の意図は読み取れない