酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

読書三昧(26年9月)

2014-09-30 09:52:19 | BOOK



読書三昧(26年9月)

検査数値が悪くて抗がん剤が延期になったら、皮肉なことに体調がよくなり、映画など外出も何度か出来た。心配もあるが気分は良い。

9月に読んだ本
東野圭吾『どちらかが彼女を殺した』
村上春樹『女のいない男たち』 短編集
井上純一 漫画『中国嫁日記(一)』
奥泉光『東京自叙伝』
柴崎友香『春の庭』(2014年芥川賞受賞作)
倉狩聡『かにみそ』

☆東野圭吾『どちらかが彼女を殺した』
主な登場人物は、妹が殺された愛知県警豊橋署勤務の和泉康正、容疑者と見られる妹の親友と元恋人。そして捜査担当の練馬署加賀刑事の4人。妹の復讐のため犯人を独自で探そうとする和泉に加賀刑事が係わりいろいろな駆け引きが行われる。最後に犯人が特定されると思っていたら、読者に考えろという小説だった。容疑者は二人のどちらかなのだが私にはこれがわからない。後ろに「推理の手引き」がついているのだが、それでもまだわからず、とほほ状態。私にはミステリーを読む資格がないのかもしれない。まだもやもやは続いているが、読み物としては凄く面白かった。

☆奥泉光『東京自叙伝』
突拍子もない話なのだが、これがなかなかイケる。ただし長くてなかなか読み切れない
のでちょっとくたびれた。
私がいる。縄文時代頃の昔から存在する。人間であることもあれば、ネズミや猫であることも、その他の動物であることもある。もちろん人間も一人ではない。生まれ変わるのでなく、何か起こった時、入れ変わるのである。
小説では6人の、人間であった時代を中心に描いてある。一貫しているのは、東京が凄く好きだということと、火を見ると気持ちが異常に高ぶることだけ。他は昭和の大事件のほとんどや原発など大きなプロジェクトは私がやったとか、しっちゃかめっちゃか。最後は東京にいるすべての人間が「私」であるなど・・・。
意味不明、支離滅裂の洪水の中に、作者の意図がなんとなく心に残る不思議な小説である。

☆倉狩聡『かにみそ』
2013年日本ホラー小説大賞の優秀賞受賞作品。
人を食べる蟹と私の奇妙な交流を描くユニークな発想の小説。日本ホラー小説大賞の選評で、宮部みゆきは「意外にもドライで涼やかな読み心地」と言っているが、私は逆にこの作品のウエットさがどうも好きになれなかった。怖いお話が好きな人にお薦め。

『市川雅彦日本画作品展』

2014-09-25 19:23:43 | 美術


「市川雅彦日本画作品展」  於:銀座8丁目  Gallery 美庵

知人のお兄さんが日本画の個展を開かれるというので、銀座まで出かけた。

画家は市川雅彦氏。
略歴は
1957年 高知県中土佐町生まれ。
1981年 京都市立芸術大学日本画科卒業。
川端龍子賞展・第20回安田火災美術財団選抜奨励展・前田青邨記念大賞展・松伯美術館花鳥画展・雪舟の里墨彩画公募展等に出品。
現在:中土佐町立美術館館長・高知県展理事・日本画部無鑑査・画遊会日本画教室主宰

トルコのカッパドキアをモチーフに描かれた十数点が展示されている。
心がゆったりしてあたたかくなる絵である。色合いにも独特の雰囲気があり引き込まれる。
作品の中で私は「見晴らしのいい家」が一番好き。

会期は9月28日(日)16時まで


『舞妓はレディ』

2014-09-19 14:40:49 | 映画


「舞妓はレディ」

一瞬、周防正行監督が鈴木清順監督の境地に達してしまったかと思った。
始まったとたん鈴木清順の映画でチャン・ツィイー、オダギリジョー主演の『オペレッタ狸御殿』を思い出してしまったのである。『オペレッタ狸御殿』は夢がどんどん広がり収集がつかなくなっていた(記憶が間違っていたらごめんなさい)が、さすがに周防監督作品はうまくまとまっている。

ただ京都の花街のしきたりなどに珍しい部分はあるが、筋は田舎から出てきた少女が苦労をして一人前の舞妓になる話で、題名のとおり『マイ・フェア・レディ』のパロディ的なこともありそう新鮮味はない。どちらかと言えば、出演俳優達の味わいで見せる作品か。

素朴な顔立ちのわりには器用な演技を見せる新人の上白石萌音は、孫のように見られるのか年齢層の高い観客のハートはしっかりつかんでいたようだった。

最後の全員の歌とダンスは盛り上がった。これも記憶が曖昧だが、雰囲気は深作欣二監督の『蒲田行進曲』」のラストに似ているような(ダンスはなかったかも・・・)。

感情移入しやすい中高年におすすめ!


『聖女』

2014-09-17 12:54:24 | テレビ


「聖女」

橋本愛、高良 健吾主演の『ハードナッツ! 〜数学girlの恋する事件簿〜』以来NHKのドラマにはまっている。
いまは火曜日10時放送の広末涼子と永山絢斗が主演の「聖女」が抜群に面白い。
本当は聖女なのか悪女なのか、それとも両方?原作者のペースにすっかりのせられてしまっている。

「MajiでKoiする5秒前」の少女もいつのまにか演技派女優になっていた。


『君となら』

2014-09-07 16:02:24 | 演劇


「君となら」

作・演出:三谷幸喜  於:パルコ劇場
出演: 竹内結子・草刈正雄 ・イモトアヤコ ・長野里美 ・長谷川朝晴
木津誠之・小林勝也 


伊東四朗が夕刊フジに自伝を書いていますが、その中にこんな話がありました。三谷幸喜さんに芝居を依頼する時、「芝居が終わって、お客さまが駅まで行く間に、筋なんか忘れてしまうような面白い芝居にしてくれ」と言ったら三谷さんも納得したそうです。「君となら」もまさにそういう芝居です。
この芝居の感想はこれで十分でしょう。その時が楽しければ・・・・・。

東京公演は
2014年9月15日(月・祝)まで

読書三昧(26年8月)

2014-09-03 11:59:02 | BOOK



読書三昧(26年8月)

腫瘍マーカーの悪化だけでなく、肝機能も落ちてきたみたいでヤバイ。様子見のため抗がん剤の点滴が延期になったので、逆に体調は少し良い。

8月に読んだ本
坂東眞砂子『眠る魚』
乾くるみ『イニシエーション・ラブ』
湊かなえ『豆の上で眠る』
原田マハ『太陽の棘』
桐野夏生『顔に降りかかる雨』


☆坂東眞砂子『眠る魚』
主人公である彩実は住んでいるバヌアツから父親の葬儀のため、原発事故後の日本に帰ってくる。故郷の村は放射線量が高い地域であったはずなのに、原発事故など何もなかったような、今までと変わらない日常が流れていた。彩実はそんな現実に違和感を覚えるが、父の相続問題などに追われるようになる。身辺がやっと一段落しバヌアツへ戻ろうとした時、舌がんが見つかってしまう。その後手術を待つ主人公の様子が描かれているのだが、作者坂東眞砂子が死去し、この小説は未完に終わる。
編集者によれば作品の終盤は「癌細胞が増殖していくように、物語も崩壊に向かっていく」イメージを作者は持っていたとのこと。
昔読んだ『山姥』のような圧倒的な迫力はないが、福島原発事故のまえになすすべもない一庶民としての苦悩や洩れている汚染水が世界の海を汚していることへのいら立ちなど、淡淡と描きながら、厳しく現状への警鐘を鳴らしている。
また日本人の危機的事態への「思考停止状態」にも疑問を投げかける。
作者の早逝が惜しまれる。

☆乾くるみ『イニシエーション・ラブ』
単なる青春小説としてしか読めなかったバカな私です。具体的には書けませんが、本当はトリックがいろいろ散りばめられ、衝激的な結末の小説だったのです。読み返しているのですが、悲しいことにまだ理解できているとは言えません。さすが作者が理学部数学科卒と思わせる作品です。

☆湊かなえ『豆の上で眠る』
一応面白く読めるけれど、筋自体に強引さが目立ち無理がある。湊かなえ作品の中ではちょっと落ちるかな。