酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『黴菌(ばいきん)』 

2010-12-29 20:36:29 | 演劇
今年もあと三日になりました。あわただしいですね。

もう千秋楽も終わってしまったけど、22日に見た芝居の感想をちょこっと。

「黴菌」  シアターコクーン
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:北村一輝・仲村トオル・ともさかりえ・長谷川博己・緒川たまき・山崎一・生瀬勝久・高橋恵子など

時は昭和20年。資産家の五斜池家の大きな洋館が舞台。
住人たちは戦争にも行かず、食べ物もふんだんにあるという世間とかけ離れた生活を送っている。
それぞれは手前勝手に生きているのだが、何か秘密を抱えている。お互いが交錯しあったり、新たな人物の登場で、秘密は少しずつ明るみに出る。

ケラ作品はストーリーが面白いので、自然に引き込まれてしまう。
今回は第一部の「東京月光魔曲」のミステリー路線とは趣向が大きく違う。
特にラストは兄弟愛が語られ、私的には肩透かしの感じなのだが、役者の演技力で十分満足させてくれた。

北村一輝が抜群の存在感で舞台を引き締め、山崎一が独特の陰影をつける。仲村トオルはこんなキャラクターも出来るのかというほどぶっ飛んだ役。
生瀬勝久がいつもの軽さに欠けたこと、長谷川博己に力みを感じた(「セカンドバージン」後遺症??)が、全体には水準の高い演技だった。

今回は昭和三部作の第二部。次の最終章の展開に期待したい。

『美しきものの伝説』

2010-12-20 17:27:58 | 演劇

「美しきものの伝説」 彩の国さいたま芸術劇場
作:宮本研、演出:蜷川幸雄

「美しきものの伝説」は何十年も前に文学座の舞台を見たことがある。冒頭で、たしか売り子に扮していた太地喜和子の迫力が印象に残っている一方、あまりの長さに途中で寝てしまった苦い記憶もある。

今回は蜷川幸雄が指導するネクストシアターによる若手俳優中心の舞台。
社会主義革命に燃える若者の熱気、演劇はいかにあるべきか、新時代に目覚めた女性たちの恋、内容は盛りだくさんである。
ただ革命を目指しているにしては、全体のトーンが明るくて、命をかけるという切実さが希薄に感じられる。女性たちの恋もさらっと通り過ぎる。
演劇と社会性の問題がセリフに一番説得力があったと思うが、全体に中途半端な感じは否めない。

大杉栄・伊藤野枝と聞いただけで、血がたぎる世代ならともかく、若い人には人間関係を把握するだけでも時間がかかったに違いない。パンフレットに丁寧な説明があるのはその辺も意識してのことだろう。

さいたまネクスト・シアターは今回が第二回目の公演。演技面では「真田風雲録」に比べて格段の進歩であることは間違いないのだが、その分荒削りの魅力は消えた。

今回三方に席がある形だったが、逆の一番上の席に太田緑・ロランスに似た人がいた。「審判」「失踪者AMERICA」「「表に出ろいっ!」など最近つづけさまに舞台を見ているので本人かどうかちょっと気になった。

公演は12月26日まで


『歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎』

2010-12-17 23:38:33 | 美術館

「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展を、東京ミッドタウンのサントリー美術館へ見に行ってきた。

浮世絵師ではなく、蔦屋重三郎という版元に焦点を当てた面白い企画。
浮世絵作者や戯作者達のプロデューサーとしての蔦屋重三郎の才能を余すところなく伝えている。
「吉原細見」から始まり、寛政の改革による挫折まで、生き生きとした活躍の様子を見ることが出来る。

歌麿や写楽の作品が多数ある浮世絵の展示は、白枠の台紙に統一されている。
普段どんな形で展示されているか思い出せないけど、白だと浮世絵が伸びやかに見えて好印象。

またいつもは見飛ばしてしまう、黄表紙や狂歌本なども、解説が詳しいため一つ一つ楽しく見られる。

作品保存のため照明が暗く、一生懸命見ると目が疲れるのが唯一の難点。
おすすめだが残念なことに、会期は12月19日(日)まで