読書三昧(25年7月)
7月に読んだ本
伊坂幸太郎『バイバイ、ブラックバード』
太宰治『グッド・バイ』
三上延『ビブリア古書堂の事件手帖④~栞子さんと二つの顔~』
佐久間由子 句集『岬日和』
梅村すみを 句集『欠伸』
デイヴィッド・ゴードン『二流小説家』
☆伊坂幸太郎『バイバイ、ブラックバード』
主人公は借金が返せなくなり、〈あのバス〉に乗せられ未知の地に連れて行かれるような状況になる。同時に付き合っていた五人の女性に別れだけはしたいと願い出ると、繭美という馬鹿でかい女を監視役に付けることで許される。順々に女性を回る内に・・・。
展開がたやすくよめないこと、登場人物の会話が面白いこと、ほのぼのした読後感のあることなど伊坂幸太郎らしい楽しい作品である。
この小説は太宰治の未完小説『グッド・バイ』へのオマージュだという。早速ブック・オフで『グッド・バイ』の文庫本を買ってきた。これがまためちゃ面白い。こんな小説を書く人が自殺するなんて信じられない。未完小説だがお薦め。太宰治のイメージが変わるだろう。
☆三上延『ビブリア古書堂の事件手帖④~栞子さんと二つの顔~』
1巻から4巻までで、栞子さんが石段の上から突き落とされる以外は、殺伐としたシーンがなく、心穏やかに読める小説で楽しい。
4巻はテレビドラマを見てから読んだのだが、新しい発見があった。本で読む栞子とドラマの剛力彩芽は全く結び付かない。一方の五浦大輔役のAKIRAはぴったりで小説をよんでいてもAKIRAの顔が浮かんで来る。あて書きと言っていうぐらいの一致である。
だからと言ってドラマの剛力彩芽が悪かったわけでない。あの若さで剛力彩芽なりの栞子像を作り上げたのは見事という他はない。ドラマの続編期待。
☆デイヴィッド・ゴードン『二流小説家』
訳がこなれていて、翻訳小説としては類を見ない面白さ。邦題を『二流小説家』と名付けたのも見事。
猟奇殺人の犯人から小説を書くよう依頼された売れない作家。将来犯人の告白本を出してベストセラー作家になることを夢見るのだが・・・。
猟奇事件の犯人探し、小説の中に挿入されるSF・ヴァンパイア小説などの面白さ、散りばめられている作者の文学論。
読み手の好みによりいろんなテイストもありお薦めの一冊である。
「このミステリーがすごい! 」(宝島社)、「ミステリが読みたい! 」(早川書房)、「週刊文春ミステリーベスト10」(文藝春秋)で1位にランクインしている。