酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『授業』   

2013-12-30 10:51:53 | 演劇


「授業」   DDDD第四回イベント(ペンギン プルペイル パイルズ)

 於:サラヴァ東京(渋谷区松濤)(29日の昼夜の2回公演のみ)
 原作:ウジェーヌ・イヨネスコ
 出演:小林高鹿、ぼくもとさきこ、近藤フク

早く着きすぎたが、ワンドリンク付きなので、ワインを飲みながら心地よい待ち時間。50~60人くらいの小さなスペースで、開演までは出演者も身近でぶらぶらと待機。

『授業』の前に、近藤フクと吉川純広の軽い二人芝居がある。
同窓会に集ったのはたった二人。いつまでもこない仲間を待つ間、ボール投げをしながら取り留めもない会話。いつか話は子供の頃死んだ同級生の話に。その死に二人は微妙に関わりが・・・。
最近ドラマなどで良く見るストーリーで、話に新鮮味はないが、とぼけた味わいの会話で見せる。もう一ひねり欲しいところ。

イヨネスコの『授業』は中村伸郎が、渋谷の「ジャンジャン」で永く上演をしていたのは知っていたが、舞台を見るのは初めて。中村伸郎の雰囲気から、穏やかな芝居だと思っていたが、以外にも衝撃的な作品。

『授業』の登場人物は初老の教授(小林高鹿)と若い女生徒(ぼくもとさきこ)、と召使(近藤フク)の三人。

教授の家を、若い女性が博士号試験合格のための個人教授を受けるために訪問する。授業は初歩の算数からはじまり、言語学の講義へと進むのだが、教授の指導は次第に熱を帯びて行く。それに対し最初は意欲的だった女生徒は次第に意欲をなくしていき、教授の話は上の空で、歯痛を訴える始末。激昂した教授は、女生徒をナイフで刺し殺してしまう。
しかし犠牲者はこの女生徒が初めてではなかった。

教授役の小林高鹿は安定した演技で厖大なセリフをこなす。女生徒役のぼくもとさきこは、独特の喋りがこの芝居に合っているのかどうか微妙。

教授のセリフが大半を占めるこの芝居は、言葉が重要な意味を持つ。翻訳のやり方で大きく印象が変わりそう。もう一度他の劇団での『授業』も見てみたいものだ。


読書三昧(25年11月)

2013-12-06 19:19:10 | BOOK


読書三昧(25年11月)
近藤誠医師の『抗がん剤だけはやめなさい』 (文春文庫)が出た。マスコミ露出度では、近藤理論が圧倒的。抗がん剤使用者にとってはますます迷い、悩みは深くなる。

11月に読んだ本
奥泉光『メフィストフェレスの定理―地獄シェイクスピア三部作―』
アリス・マンロー『ジャック・ランダ・ホテル』(村上春樹編訳『恋しくて』より)
村上春樹『恋するザムザ』(村上春樹編訳『恋しくて』より)
誉田哲也『ストロベリーナイト』
萬田緑平『穏やかな死に医療はいらない』
大沢在昌ほか『麺‘Sミステリー倶楽部』光文社文庫
川上未映子『ミス・アイスサンドイッチ』(新潮11月号)
野田秀樹 戯曲『MIWA』(新潮11月号)
玉城徹『芭蕉の狂』
島谷征良 句集『南箕北斗』


☆奥泉光『メフィストフェレスの定理―地獄シェイクスピア三部作―』
リア王、マクベス、ロミオとジュリエットの三作の後日談を書いた戯曲。地獄に落ちた主人公達と悪魔のやりとりが面白くて笑える。地獄でも張り合うリア王の娘ゴネリルとリーガン、地獄が苦痛でないマゾ的なマクベス、淫乱なジュリエットなどが登場。
この戯曲は作者奥泉光が夫人で演出家兼俳優でもある江戸馨のために書いた微笑ましい?作品である。

☆アリス・マンロー『ジャック・ランダ・ホテル』
今年のノーベル賞作家であるアリス・マンローの短編小説。
村上春樹の訳にまだるっこいところはあるが、中々洒落た作品である。
中年を過ぎた男女のラブ・ストーリー。と言っても夫婦が一度別れて、元のさやにもどるかどうかのお話。その結末は読者にゆだねられる。

☆萬田緑平『穏やかな死に医療はいらない』
「抗がん剤は治療の効果より苦痛が上回ったら、撤退したほうがいい。」私もこの言葉を意識しながら今後の治療を続けていきたいと思う。

『失踪者』

2013-12-04 16:08:00 | 演劇


「失踪者」   於:座・高円寺1  劇団:MODE 
原作:フランツ・カフカ、構成・演出:松本修、音楽:斎藤ネコ、振付:井手茂太
出演:笠木誠・小嶋尚樹・福士惠二・斎藤歩・大崎由利子・石井ひとみ・太田緑ロランス・山田美佳他

「MODEカフカ・プロジェクト2013の三部作連続上演」で「失踪者」「審判」「城」の順に上演されるのだが、今回は第一弾の「失踪者」を観劇。

初めて見た時程の衝撃はなかったが、俳優陣の確かな演技、印象的な音楽、ちょっと奇妙なダンスなど、見応え十分の芝居である。もちろんカフカの原作の面白さも大きく寄与しているが。あのカフカを三時間近くで内容を損なわないで見せる演出の松本修も凄い。

ただ今回違和感があったことが二点。
一つは太田緑ロランツの扱い。
前回と比べ、セリフにしろ衣装にしろ華やかさが際立っていた。太田緑ロランツは再演以降に、野田秀樹、中村勘三郎との三人芝居「表に出ろいっ!」で脚光を浴びた役者さんではあるが、この芝居ではグループの一員として、さりげなく演じた方が良かったのではないか。容姿といいスタイルといい、それでなくとも目立つのだから。
二つ目は最後の方のシーン。オクラホマ劇場の採用試験で面接員がかわいい悪魔の帽子をかぶっていたこと。確か前回はなかったと思うので新しい試みだと思う。ただ悪魔という一つの方向に限定しない方が、先が見えない恐怖感は増すのではないだろうか。

全体的には時間を短縮したこと、舞台が狭くなったこと(多分)で、光や天使のきらびやかさが減り、その分叙情性は薄れた気がする。

「失踪者」は今日で終了。あと同じカフカの「審判」と「城」の上演がある。