曜日のない暮らし

日々の暮らしにあるささやかで素晴らしい瞬間
暮らしと心を癒してくれる生き物たち
山本弘三の写真を中心にした日記帳

世にも恐ろしいお話

2011年09月02日 | 日記

今日の収穫

味覚の秋

フランスの名品 Noire de Carombe (ヌアールドカロン)   最高のイチジクと言われる品種です。夏果と秋果と二回とれます。美味しいですよ。


今夜は台風の嵐の音を聞きながら世にも恐ろしい虫の世界のお話です。

虫の世界は人間の歴史なんかに比べて遥かに古い歴史を持っています。進化の仕方も千差万別ですが何億年も生き抜いてきた彼らはとても巧妙な生き方をしています。私は蝶の飼育を通じて虫たちのすさまじい生き方を見せてもらいました。その一部を今日はご紹介します。

前もって仕組みを説明しておきます。寄生蜂とかヤドリバエの話は聞いたことがありますか? 蝶の世界でもいろんな天敵がいて卵から蝶になって無事に一生を送ることのできる蝶は本当にまれなのです。私はいろんな蝶の飼育を通じてその蝶の生き方を見つめていますが今回のアオスジアゲハは悲しいことになりました。これらの幼虫はヤドリバエに感染していたのです。初齢と2齢の幼虫を連れ帰って感染しないように家の中で丁寧に飼ったのですが蛹になった段階で全てが終わりました。蛹になった3日後にヤドリバエのウジが蛹の体を食い破って出てきました。特にアオスジアゲハBの体からは4匹のヤドリバエが出てきたのには驚きました。アオスジアゲハBは蛹になるのにものすごく難儀しました。今まで飼育した蝶の中であれほど蛹化が難しかった幼虫はいません。きっともう内臓をヤドリバチの幼虫に食われ始めていたのかもしれません。寄生蜂やヤドリバエは宿主の幼虫がまだあまり小さい時には中から食べませんしっかり大きくなってから食べ始めるようです。幼虫は葉っぱをモリモリ食べて脱皮を繰り返しながら大きくなってゆきますがある時点まで行くと体内のホルモンの分泌が変わって食べることを止めて蛹に変わって行くのですがそのホルモンの変化を寄生している幼虫が感じ取って成長を始めるらしいのです。蛹化と言うのは宿主の蝶などの幼虫もこれ以上成長しないのですからもう食べても良いわけです。

そのようなこととは知らず餌をとって来てはアオスジアゲハの幼虫の成長を楽しみに飼っていた私は結果的にヤドリバチを飼っていたことになります。2匹のアオスジアゲハの体から5匹のヤドリバエの幼虫が出てきてみんな蛹になりました。こうなったら仕方がないヤドリバエが成虫になって土の中から出てくるのを楽しみに待ちましょう。

今回の飼育の中で何処に失敗があったのか知りたくて、虫の専門家の所へ行ってきました。どこでどのようにしてヤドリバエに感染したか意見を聞いてきたのです。ヤドリバエにもいろいろな種類がいて今回のハチが何なのかまだ確定できていません。ヤドリバエは蝶や蛾の幼虫を見つけてその体に卵を付着させて感染させるものと蝶や蛾の食草に卵を産み付けて食べさせるタイプとがあるそうです。ヤドリバエが家の中まで入って来て飼育中の幼虫に卵をうみつけることはほとんど不可能なので多分食草の木の葉に卵がうみ付けられていたのではないかとの結論になりました。食草に産み付けられたヤドリバエの卵を写真で見ましたが肉眼で確認するのは難しいくらい小さなものでした。私が何度もとりに行った餌の中に産み付けられたヤドリバエの卵があったのでしょう。なんとも巧妙です。

虫の専門家にその時聞いた話ですが、カギバラバチと言う蜂の一種がいるそうです。これも寄生蜂ですがその寄生の仕方がなんとも巧妙で何でそんなことをするのだろうと不思議でなりませんでした。詳しく書くと長くなるので簡単な説明をしますが、この蜂は蝶や蛾の食草にたくさんの卵をうみつけます。蝶や蛾の幼虫が食草と一所に蛾バラ蜂の卵を食べます。その幼虫をスズメバチが肉団子にして巣に持ち帰り子供に餌として与えます。するとカギバラバチの子供は肉団子といっしょにスズメバチの幼虫の中に入り成長を始めます。つまり、カギバラバチの宿主はスズメバチなのに蝶や蛾の幼虫を経由して入り込むことになります。面倒な手順だし運良くスズメバチの幼虫の所にたどり着けるか確率はとても低いのに何でこんなことを何万年もやっているのでしょう。不思議です。詳しく知りたい人はカギバラバチで検索して詳しいページに行ってみてください。まだ不思議はあるのです。成虫にまで育ったカギバラバチはどうやってスズメバチの巣から抜け出すのでしょう。昆虫世界の頂点に立つスズメバチを食い物にするとはいい度胸をしてますね。

 

ウジ虫を見ると気持ちの悪い人はここでお帰りください。


アオスジアゲハの蛹とヤドリバエの幼虫

AもBも前蛹の時は黒い点は見えずきれいだったのですがね。

アオスジアゲハBはあばれて固定糸から外れてしまいました。この頃から苦しかったのかもしれません。

逆さにぶら下がったままではまずいので葉を切り取って下におろしました。

 

蛹化したその日から黒い斑点が見えていました。

 

AもBももう死んでいます。

 

蛹の体から出てきた所

 

土に潜って行きます

 

ヤドリバエの蛹  脱皮はしませんそのまま体が硬くなってゆきます。

アオスジアゲハB

ヤドリバエのウジが4っつ出てきました。(糸を引いたようになった所から)

 

アオスジアゲハA

少し後ろの方に出てきた穴が開いています。

 

何かの映画に人間の体を体内から食い破って出て来るような虫のことがあったように思いますが何だったかよく覚えていません。こんなことがモデルでしょうか。あな恐ろしや !