悩ましい来年度予算に向けた攻防が続く。
社会保障費の増額について、財務省と厚生労働省の間で未だに調整がついていない。
それもそのはずで、厚生労働省から8月に出された概算要求額は6,000億円である。
例年に比べると少し減額されている。
しかし、その例年は2016年から18年までの増額として1.5兆円に抑えられてきた。
しかも高齢者の伸びは3年間の平均が3.3%である。
2018年度の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」では「高齢者の伸びの見込みを踏まえた増加分」としている。
そこで2019年度の高齢者の増加分の伸びが気になるが、3%を下回るレベルとなっている。
3.3%で5,000億円とすると3%を割るレベルは明らかに5,000億円未満となる。
どこで調整がついていないかと言うと、言わずと知れた10月の消費増税に伴う薬価改定の時期である。
財務省は当初から来年4月から薬価引き下げを要求している。
ところが薬価に係る製薬メーカーや医薬品卸などは、薬価に引き下げがもろに売り上げダウンにつながる。
簡単に4月からなど了承できない。
診療報酬をつかさどる中医協も10月からの薬価引き下げで調整がついている。
これらを束ねている厚生労働省としても10月からと言わざるを得ない。
薬価は既に今年9月に薬価調査が終わっている。
その結果は明らかになっていないが、もし10月から薬価を引き下げるとすると社会保障費の増額を400億円抑える事が出来るらしい。
先ほどの概算要求額6,000億円を5,000億円未満にする命題からすると、1,000億円以上の調整が必要になる。
薬価の他にも介護保険における保険料を、高額所得者から多く徴収できる総報酬割が導入になる。
これによって約350億円、生活保護の給付を削減して50億円で、合わせて400億円のめどが立っている。
ただ、これらを合わせても800億円で1,000億円にはほど遠い。
財務省と厚生労働省との調整はまさに薬価をいつの段階で引き下げるかである。
仮に来年4月から薬価引き下げを実施すると400億円に400億円が加わり、全体として1,200億円となる。
そうなると6,000億円から1,200億円なので4,800億円となり、5,000億円未満が出来上がる。
さて、そんな難しい調整は勝手にやって欲しいが、10月から薬価引き下げが400億円で、4月からだと800億円になることに注目したい。
2018年度の薬価改定では約7.1%に引き下げで約1,400億円の国費引き下げに貢献している。
この事から単純に計算すると約4%の薬価引き下げとなる。
因みに、国費の約4倍は医療費につながる。
となると400億円は1,600億円に、800億円だとしたら3,200億円の削減となるようだ。
どちらにしても調剤報酬の約7割は薬価で占めている。
4月からでも10月からでも処方箋単価は薬価引き下げの影響で約3%はダウンしそうだ。
処方箋単価はアリ地獄のように沈みつつあることを意識の底に据えて欲しい。