三編からなる山岳ミステリー。
……………………………………………………………
「黒部の羆(ヒグマ)」
ライバル同士の醜い意地の張り合いが
引き起こす過酷な試練。
見せかけの信頼。
二人の道化が繰り成す、死の危険をはらむ踏破。
心理状態の変化していく様子が面白い。
受け継がれていく、山を愛する志がさわやか。
表題作「灰色の北壁」
標高7000mの北壁
1人のクライマーに対する疑惑。
濃い霧に包まれた登攀の真実。
ゆきえという女性を巡る話。
意外な展開のおもしろさ。
「雪の慰霊碑」
亡き息子の眺めた景色を追って
尾根をたどる父親。
残された婚約者、彼女を見守る男。
いかにして正直な自分を取り戻すのか。
三者三様の心の動きが興味深い。
しっかり読んでいなかったのか、
最後は??でしたが…
同じく雪山が舞台の【ホワイトアウト】のような
スケールの大きさはなくても、
険しい冬山を背景に人間の弱さ、
小ささがあぶり出され、
人間味のある深い物語の様に思います。
短編なのが惜しい位。。。。
三作品とも、丁寧に描かれていて
読み応えのあるストーリーです。
登場人物の心理状態も細微で、
性格描写などもうまく描写され、
【ホワイトアウト】の後は、あまり印象に残る様な
作品に出会えなかったのだが、
(自分が読んでいなかっただけかも知れませんが)
やっと巡り会えた感じです。