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戒め

 人間の不幸なんていつどこに転がっているのか全く分からない。

 昨日の午前中書店に行った。注文してあった本や問題集を一抱えして車に乗り込み、さあ帰ろうとバックさせたら、突然ゴン!とかなりの衝撃を受けた。
「何だ?」と訳が分からず後ろを向いたら、何故かすぐ後ろに車が見える。
「ぶつかった?」状況が飲み込めないまま車を元の位置に戻して降りてみた。すると後ろに停車してあった車のフロントバンパーの左側がへこんでいる。私の車を見るとリアバンパーの右がへこみ、赤い反射板が割れて破片が散乱している。
「あ~~あァ・・」
車から降りてきた妻と顔を見合わせて溜息をついたが、もうどうしようもない。
 停まっていた車には誰も乗っていない。とりあえず人にケガをさせなかったようなので一安心したが、車の持ち主に謝らなければならない。書店に戻って行って、大声で車のナンバーを告げ車の持ち主を探した。すると一人のスーツを着た男性が近寄ってきて、自分の車だと言った。
「すみません。今バックしたらぶつかってしまって・・」
私はかなりしどろもどろしていたと思うが、相手の男性は落ち着いて車のところまで行き、少し調べてから、
「これは会社の車なので、会社に電話してどうしたらいいか訊いてみます」
と、携帯電話を出して話し始めた。私は、”なんてバカなんだろう。左に首を回して後ろを確認した覚えはあるけど、右側を注意してなかったのかなあ”などと次第に気が重くなってきた。電話を終えた男性が、
「じゃあ、免許証を控えさせてください。それと電話番号も教えてもらえますか」
と、冷静に接してくれる。それはかなり有難いことだった。私の名前・住所・電話番号をメモした上で、自分の名刺を渡してくれた。
「後で会社の方から連絡するそうなので、ひとまずこれで」
「はい。どうもご迷惑をおかけしました。すみませんでした」
私は平身低頭、謝りながらその場を離れた。

 ここ数年、塾の運転手が接触事故を起こしたことは何度かあるが、私自身が他人の車にぶつけたのは実に久しぶりのことだ。確か雪の日に娘を保育園に送って行った時にスリップして、他の父兄の車にぶつかったのが最後だから、16・7年ぶりだ。
 それにしても、いったい何をボーッとしてたんだろう、情けない。帰りの車内では私の気持ちを察した妻が慰めの言葉をかけてくれた。
「でも、よかったじゃない。誰にもケガさせなかったんだから。運がよかったわよ」
その通りだ。まさしく不幸中の幸いだ、そう思わなければいけない。
 家に帰って、まず保険代理店に電話した。状況を話したところ、警察に届けなくても処理できることや、相手の車の修理代はもちろん、私の車の修理代も車両保険でまかなえることなどを説明してくれた。さらに、全て保険で処理するから代理店から相手の会社に電話して話してくれると言ってくれた。実に頼りになる。
「色々世話かけて申し訳ないです」と私が言うと、
「そのための保険ですから。でも、人身事故にならなくてよかったですね」
と言ってくれた。本当にそう思う。
 その後で、車のディーラーに電話して修理を頼んだ。すると2時間ほどで担当の人が代車に乗って車を引き取りに来てくれた。私の車を見て、
「痛々しいですね」
と顔を曇らせたが、彼も
「人を巻き込まなくてよかったですね」
と言った。車など修理すれば元に戻るが、人間の体はそんなわけには行かない。今回はたまたま運がよかっただけだ、油断してはいけない。もっと安全運転に心がけなければいけない、と心に誓った。

 あまりに周りが迅速に動いてくれたので、私の犯した大きなミスが何もなかったかのようになってしまう。それではいけないと思い、これからの自分に戒めとなるようにと、車のバンパーの損傷箇所を写真に収めた。



二度とこんな事を起こさないよう、気を引き締めなおさねばならない。
 
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