日本裁判官ネットワークブログ
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 中東に有利な判定があったとして国際ハンドボール連盟が北京五輪アジア予選を東京でやり直す異例の決定をした。「中東の笛」といわれる偏頗な審判がなされたと指摘されている。
ハンドボールだけでなく、サッカー、バスケットボール等多くのスポーツ競技においては、審判が反則をとるかどうかで試合の流れが変わり、たちまち勝敗に影響する上、不服申立もできないから、審判は絶対者である。
 柔道でも、国際試合において、日本選手が一本勝ちしたはずなのに逆に負けの判定をされてしまったと思われる場面を一度ならず見た。
 
 不服申立の点では、国技である相撲において、行司の判定に対し、「物言い」という不服申立により審判役が合議して判断するのが興味深い。
 
 審判に対し誤審をしないための訓練や研鑽がなされているようであるが、一瞬の場面では、見る角度等によって判定を誤ってしまうこともあるだろう。
 先回のワールドカップでは、多くの中から選ばれて日本人の審判が出場した。檜舞台の審判に選出されるまでの過程を収録した報道番組を見たが、選手以上の過酷なトレーニングを積まなければ一流の審判にはなれないことを知った。
試合の流れをつかみ、選手以上に走りまわって、たえずボールを中心とする現場に自己を位置させ、選手の動きを正確に把握できる角度に目線をおいておかねばならない。

 テニスの試合では、セルフジャッジが主流になってきた。
 自己のコート側のボールについての判定は自らがすることになるが、スポーツマンシップに則り、疑わしきは自らに不利益に判定することになる。第三者審判の方が自己に有利になる場合もある。
 
 裁判の場合、我が国においては廉潔性に信頼をおくことができ、手続保障があって、原則として不服申立ができ誤審が是正される途が確保されている点で、前記のスポーツ審判の場合とは似て非なるものがある。
 廉潔性の伝統を揺るがすことなく、自らも汗を出して正しい位置に目線を保ち、健全な裁判官シップに則った仕事をして行きたいものと思う。
 (あすなろ)
 

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コメント
 
 
 
スポーツの審判と医療裁判... (Level3)
2008-01-14 11:16:47
>先回のワールドカップでは、多くの中から選ばれて日本人の審判が出場した。檜舞台の審判に選出されるまでの過程を収録した報道番組を見たが、選手以上の過酷なトレーニングを積まなければ一流の審判にはなれないことを知った。
>試合の流れをつかみ、選手以上に走りまわって、たえずボールを中心とする現場に自己を位置させ、選手の動きを正確に把握できる角度に目線をおいておかねばならない。

スポーツの審判の多くはそのスポーツに精通した人間がさらに訓練を受けて行なわれるため,今回のハンドボールのような疑惑のある判断がされることはほとんどない.
これを医療裁判で考えると,審判(裁判官)は全く医療の素人であり,特別に訓練を受けているわけでもない.
選手(医療者)が納得する判定(判決)が下せる訳も無いことはすぐに解るだろう.
どうして医師が医療裁判を全く信用していないか,こういった例を考えればすぐに納得して頂けるものと思う.

>廉潔性の伝統を揺るがすことなく、自らも汗を出して正しい位置に目線を保ち、健全な裁判官シップに則った仕事をして行きたいものと思う。

是非医療裁判でも「自ら汗を出して」頂きたい.1週間でも,1ヶ月でも医師に密着して行動を共にして頂ければ少しは医療というものを解って頂けるかと思う.
 
 
 
Unknown (一般人。)
2008-01-14 16:06:43
>1週間でも,1ヶ月でも医師に密着して行動を共にして頂ければ少しは医療というものを解って頂けるかと思う.

それが出来るぐらいなら、今のような混乱はないんじゃないでしょうか。「1週間でも,1ヶ月でも患者に密着して行動を共にして頂ければ少しは患者というものを解って頂けるかと思う」と医者が言われても、そんな時間も余裕もないというのが現状ではありませんか?こんなに一生懸命自分を犠牲にしているのに、なんで患者はわかってくれないんだ、と思いませんか?
目の前の仕事だけに振り回されて満足できる仕事が出来ていないのは裁判官も同じです。司法も医療も大事なことは現場をなおざりにして上のほうが決めているものです。残念ですが、世の中そんなものです。

お互いを責めても人間というのは動きませんよ。人は大人になっても意外と感情で動く生き物です。世の中を良くしていこうと思っているのは誰しも変わらないでしょうから、歩み寄るほうがよいのではないですか?現場の裁判官と医療関係者が実際に交流を持って話していくのが一番早いような気がします。裁判官は意外とツテがありませんし、特定の政治団体に属することを禁止されているために、政治色がなくても様々な団体に接触することを避ける傾向にあります。医療関係者の方から接触してみてはいかがでしょうか。この裁判官ネットワークは良い間口になると思いますよ。

今回のブログの趣旨とずれました、申し訳ございません。
 
 
 
我妻栄の言 (核心者)
2008-01-20 22:11:32
昭和40年ころ発行の岩波新書「日本の裁判制度」からの御紹介です(当時の臨司がらみです)。
色々ある審判の中で、当事者の経験がないのに裁いているのは、相撲の行司と裁判官ぐらいなもんですと揶揄されておりました(強調でしょうけど分かりやすい)。

もちろん、実際の経験ができないのはどの世界でも同じで、それを免罪符にするのではなく、できるだけ知ろうという姿勢は必要だと思います。

このブログで「行司」に触れていたので思い出しました。
 
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