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転勤内示始まる

2008年01月14日 | 蕪勢
 裁判官の4月異動が動き出した。最高裁から転勤先が告げられるのである。転勤内示と呼ばれている。もちろん,裁判官に拒否する権利はある。しかし,現実は,ほとんどの裁判官がこれを受け入れる。この時期,全国の裁判所には,悲喜こもごものさざ波が立つ。

 裁判官には,任官してから20年目くらいまで,概ね3年ごとに全国を股にかける転勤がある。私の場合も,任官してから,大阪,松山,岐阜,宮崎・日南,大阪,鹿児島と異動してきた。20年目くらいを境に,一定の地域内の小さい転勤にとどまる。私も,20年目以降は,兵庫県と大阪だけの小範囲ですんでいる。

 裁判官は,転勤先について希望地を提出する。しかし,なかなかその通りにはならない。近い場所を希望したのに遠隔地に,大都市を希望したのに小都市に,新幹線沿線を希望したのに大きくずれた土地になったりする。他方,すんなり希望の叶えられる人もいる。自分の希望が容れられない理由はなぜなのか,ちょっとした戸惑いは誰でも持つ。あれこれと考えてしまう。考えないではいられない。転勤先を決める合理的な法則のようなものがあればいいが,それはないに等しい。最高裁人事局の裁量,腹ひとつで決まってしまうのだ。

 転勤を覚悟しているとはいえ,裁判官も,家族を持ち,配偶者の職場や子どもの教育,親の介護などその個人的事情は,世間と全く同じである。転勤の希望が容れられるために,絶対的な裁量権を持つ人事権者に好感をもたれたい,誰しもそう考える。人事権者は最高裁であり,それに連なる長官,所長である。その人達の自分に対する評価をどうして気にしないでいられよう。お釈迦様の手の平で遊ぶ孫悟空であるうちは問題ない。しかし,その手の平から一歩でも外に出ようものなら,何が待ち受けているか分からない。

 何年か前に,最高裁長官が「ヒラメ判事はいらない」と発言して話題をまいた。上ばかりを見て,右顧左眄する裁判官はダメ,裁判官は毅然として独立の気概を持つべきだ,という趣旨である。内外の喝采を受けた。そのとおりである。しかし,わが裁判所の転勤制度は,まさに,ヒラメ判事を作る元凶そのものではないのか。

 司法改革により,裁判所は一歩前進しようとしている。しかし,この転勤制度など裁判官人事については,まだまだ大きな宿題を残している。(蕪勢)

1 コメント

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教えていただけますか (しずか)
2016-02-26 13:25:15
裁判官の異動内示は、だいたいいつ頃にでるのでしょうか。一月の記事でしたので、そんなに早くわかるものなのかと気になりました。
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